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201609 晴れ渡った秋空の下、富士山五合目でキノコ狩り

 一昨年の9月末、山仲間が集まり、富士山へキノコ狩りに出かけた。須走(すばしり)のかつての富士講の宿、扇屋のご主人に案内役をお願いした。

 混雑する五合目駐車場に車を置いていざ出発。目の覚めるような青空を背景に富士山頂がくっきり間近に見える。これほどきれいに山頂が見えることは珍しいそうだ。幸先がいい。

 登山道脇には、フジアザミやトリカブトなど紫色の秋の花がにぎやかに咲いている。古御嶽神社近くから登山道を離れ、森の中へ分け入る。案内役は目ざとく、ほらここ、とキノコを教えてくれる。目が慣れると自分たちでも見つけられるようになった。

 イグチ、アシナガ、カヤタケ、アミタケ、カベンダケなど。案内役に聞いても名前が不明なものもある。見つけたキノコはとにかく何でもいいからビニール袋に放り込んでいく。選別は後でプロがやってくれる。毒キノコの代表、美しいベニテングダケも生えていた。小さな黒いキノコは、ブラックトランペットマッシュルーム。通称、黒ラッパと言って食用可。

 森の中をどうやって歩いているのか方角も定かではない。案内役についていくだけ。やがて森を抜け出し、小富士へ。視界が広がり、山中湖も見える。ここでお昼ご飯。吹き渡る風が気持ち良い。一行5名、ビニール袋はそれなりに獲物で膨らんでいる。食用としてどれぐらい残るかは不明。

 一服の後、ふたたび森の中を水平移動。センボンクズダケの大きな株を見つけて収穫。5時間ほどのキノコ狩りを終えて、五合目登山口の土産物屋街へ戻った。ここにある東富士山荘のご主人が毒キノコを選り分けてくれる。店の前のテーブルに新聞紙を広げ、そこへ収穫してきたキノコをすべて積み上げた。選別はあっという間だった。もの凄いスピードで毒キノコをはね出していく。意外に残った。7割ぐらい。

 山を下って、今夜のお宿、扇屋へ。ここからが一仕事。先ほどの選別は食用不可なものを外しただけで、美味しいか不味いかは関係ない。食べるに値するキノコを選別すると、半分以下に減った。蕎麦屋で見かける長方形の浅い木箱に新聞紙を敷き、石づきをハサミで切り落とし、葉っぱなどのゴミを除く。終わったら、種類別にキノコを分ける。料理が楽しみだ。

 宿の最上階は富士山を眺められるお風呂。が、昼間はあれほど見事な眺めだったのに、いつの間にか雲に隠れていた。汗を流してさっぱりして、ビールを飲もうと、テレビをつけたら驚いた。御嶽山が噴火したという。御嶽山は何度か登ったことがあるし、たまたまこの日は富士山にいたが、御嶽山にいてもおかしくはない。とても他人事ではなかった。無事に救出されることを皆で祈るばかりだった。

 さて、夕食。本来の宿の夕食メニューの他に、先ほど採ってきたキノコをあれこれ調理して出してもらった。アシナガは甘辛く煮付け。黒ラッパ、カヤタケ、アミダケ、ムラサキシメジは天ぷら。いい香りがして食感も楽しめる。鮮やかな黄色のカベンタケは鍋に。センボンクズダケはバター炒め。期待以上に美味しい。圧巻は、キノコ蕎麦。イグチとハナイグチが入っている。出汁も美味しく、キノコそのものも旨味がたっぷり。ご馳走を食べきれず。

 部屋に戻ってからも、テレビニュースに釘付け。翌日、朝風呂に入ると、窓の外にどかんと富士山。早起き組は、赤富士を撮影したと言う。出遅れた。

 朝食には、昨夜は見かけなかったキノコが並んでいた。ホテイシメジのおろし和え。アルコールと一緒に食べない方がいいキノコなので、夕食時には控えてくれたのだ。

 再訪を誓って、扇屋を後にした。

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