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大火砕流から30年目の年に島原で行われた写真展へ

 昨年9月、いつものように安い切符を手に入れ、成田空港から長崎へ飛んだ。レンタカーで向かったのは島原。この古い城下町で開催中の写真展が旅の目的である。

 旅行雑誌の編集の仕事をしている時に多くの写真家と仕事をさせていただいたが、砂守勝巳(すなもりかつみ)氏もその一人。後に土門拳賞を受賞した著名な写真家だが、大阪在住時代、まだフライデーやフラッシュなどの写真週刊誌で大活躍する前から、時折、雑誌の特集企画の取材を依頼していた。さらなる活躍を期待されながら、60歳を待たずして10年あまり前、病死された。

 その砂守氏の仕事の一つが、雲仙普賢岳噴火後を撮影した写真展「黙示の町」。発表当時は東京と大阪でしか展示されなかったが、遺作を管理する娘さんが、ぜひ現地で写真展を開催したいと尽力され、実現した。ちょうど大火砕流から30年の節目でもある。

 会場は、城跡に近い古民家、まちの寄り処森岳。砂守氏が3年間取材に通っていた時に知り合ったという地元島原の方が、会場の管理人だった。

 2階が展示スペース。太い梁が目立つ。作品は30点ほど。1995年公開時に銀座ニコンサロンで主要作品は見ているはずだが、改めて、心打たれる作品も多い。

 40歳まで東京でデザイン関連の仕事をしていたという管理人さんは、故郷に戻ってからは古民家再生に取り組んでこられた。とても80歳には見えない若々しい方だった。

 島原は若い頃に一度来たことがある。武家屋敷の並ぶ通りに水路が走り、清水が流れ、鯉が泳いでいる。そんな美しい町並みが、今なお残っている。普通の住宅の玄関に、正月でもないのに注連飾りが架かっていたが、それはクリスチャンではないという証の名残とか。ここは天草四郎ゆかりの土地でもある。

 夕食は、郷土料理の店で。名物というフグの湯引きと唐揚げをいただき、地元の米焼酎、阿蘭(あらん)を合わせたが、いい取り合わせだった。

 翌日は、早起きして、城下町を散歩。茅葺きの武家屋敷もある。さらに足をのばし、浜の川湧水へ。市内に多くある水源のひとつ。水場は4つのエリアに分かれ、水源に近いエリアから、魚や食品、次は食器、すすぎ場、最後は洗濯場となっていた。

 ホテルをチェックアウトし、砂防みらい館へ行くが、中へは入れず。隣には旧大野木場小学校が被災時のまま、無残な姿で保存されている。近くにある、がまだすドームへ。ここは雲仙普賢岳の噴火を始め、火山に関する様々な展示をするミュージアム。自然の驚異と災害の教訓を伝えるための拠点。

 平成新山を間近に眺め、雲仙温泉へ登り、半島西側の小浜温泉へ下った。

 今夜の宿は蒸気屋という。その名の通り、温泉の蒸気を料理に使える調理場がある。夕食は温泉蒸しにチャレンジすることにした。まずは、近所のスーパーで買い出し。地魚の刺身小パック。温泉で蒸す野菜は、生落花生とアスパラガス、トウモロコシにした。

 料理の前に、まず一風呂。温泉は結構熱め。蒸気蒸しのサウナもあって快適。湯上がりのビールも旨くなる。

 さあ、調理場へ。包丁やお皿などは自由に使わせてもらえる。温泉蒸しは作り方や所要時間などの解説付き。まずは、落花生を。次に、アスパラとトウモロコシ。いい感じに出来上がり。

 落花生は普通に茹でるより、ふんわりした柔かな仕上がり。香りも食感も好ましい。豆好きにはたまらない。そして、トウモロコシの甘いこと。パック入りの刺身、タチウオとウスバハギも美味しい。安価ながら、ちょっぴり贅沢な夕食となった。

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