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「コロナ相場との付き合い方と株式投資での留意点」について考えてみました

コロナ相場との付き合い方と株式投資での留意点

昨年のマーケットを振り返ると、株式市場は昨年3月のボトムから急回復します。NYダウ平均株価指数は3月23日の1万8591ドルから年末には65%も上昇して初の3万ドル乗せとなり、一昨年末比でも7%上昇しました。わが国の代表的な株式指数である日経平均株価に至っては18%もの上昇となりました。専門家の間でも、新型コロナウイルス禍でも大きく上昇した今回の株価上昇をバブルとみていいのか判断の分かれるところですが、バブル相場の入り口近辺にいる気配は感じられます。そこで、今回のnoteではコロナ相場との付き合い方と米国株・日本株を中心とする株式投資での留意点について考えてみました。

まず、結論を先に言ってしまえば、今回のコロナ相場を支える巨額米財政支出など国策ともいえる主要因は当分崩れるとは思われません。従って、「国策に売りなし」という格言を引き合いに出すまでもなく株式に対する強気の投資姿勢を当面維持すべきと考えます。ただし、割高感のある米国を中心とするIT関連銘柄への集中投資は見直し、米国バリュー株、代表的な景気敏感株の日本株などにも目を向ける時期を迎えています。

次に、コロナ相場で株式重視の姿勢を転換する鍵となるのが米長期金利です。なぜかというと、日本株と相関の強い米国株の見方に大きく影響し株式相場の変調を事前に察知する「炭鉱のカナリア」の役割を果たすためです。米長期金利の代表的な指標である米10年国債利回りは、昨年8月前半にはボトムの0.51%まで低下しました。ところが、経済回復期待の高まりに加えてバイデン政権の財政投資拡大に伴う金利上昇圧力から今年1月初旬には1%台を回復します。

その後、1月半ばに1.14%まで上昇するものの足元は1.10%前後の水準に留まっています。これは、財政支出拡大による上昇懸念は残るものの先進国国債のなかでは相対的に魅力が高いことから投資家から選好されやすいことを示しています。2021年末1.2~1.5%程度まで上昇するとみているエコノミストもいますが、イールドスプレッド(長期金利と株式益利回りの差)からみると、1.5%になったとしても現在の米国株へのインパクトは限定的と考えます。ただし、2022年には2%台回復を予想する調査機関も有りますので来年以降の動向には注意が必要です。

ところで、コロナ相場で株式市場を牽引する主要因として以下3つの政策を指摘できます。米長期金利にも影響するそれぞれの項目を総点検し注意点を整理したいと思います。
①新型コロナウイルス禍に対応した米FRBを中心とした金融緩和の強化。
②民主党バイデン新政権の発足による財政支出の拡大。
③新型コロナウイルスワクチンの接種体制整備と主要国の接種動向。

最初の点検項目は金融緩和の強化です。米FRBは昨年3月から量的緩和とゼロ金利を復活させ、社債等を購入する異例の資金供給策を実施するなど素早く新型コロナウイルス禍への危機対応に転じます。米FRBのバランスシートはその後大きく拡大し、昨年末には6.7兆ドルとわずか9ヵ月で2.4兆ドルの増加となりました。今回のバランスシートの拡大ペースはリーマン・ショック直後を上回る驚異的な規模・スピードとなり、他の主要中央銀行が協力して金融緩和を強化してきていることも特徴の一つとなっています。

米FRBは昨年のFOMC(公開市場委員会)で3年後の2023年までのゼロ金利継続を宣言しており、低金利が維持される見通しです。経済の正常化が進めばテーパリング(量的緩和の縮小)をめぐる議論が出てくることは想定されますが、投資環境で重要な政策面から低金利が持続する構図には当面変化がなさそうです。

2番目のチェックポイントはバイデン新政権発足による巨額の財政支出です。新型コロナウイルが猛威をふるうなかでスタートした新政権の最大の優先課題は新型コロナウイルスと雇用悪化という2つのリスクの克服です。集計データによると、直近の米新型コロナウイルス感染者数は約2660万人となり世界全体の約25%を占めます。また、死者数も45万人を超え2位以下を大きく上回っています。

注目される経済対策は2段階に分けられ、第1段の対策では家計支援に1兆ドル、ワクチン普及などの対策に4000億ドルなど合計1.9兆ドル(約200兆円)の新型コロナウイルス対策を提示しました。その後、第2段として巨額インフラ投資(選挙公約は4年で2兆ドル)を計画しています。議会の承認手続きなどのハードルが存在するため目論見通りにはならない可能性が指摘される一方で、財政支出の拡大に伴う長期金利上昇リスクは高まります。この点に関しては、金融政策に明るいイエレン財務長官の手腕によるところとなります。当然のことながら米FRBなどとも連携しながらマーケットへの悪影響を押さえていくとみられるだけに、政策対応に関するイエレン財務長官への期待は高まっています。

3番目の点検項目は株式市場で関心の高い新型コロナウイルスワクチンの接種動向です。新型コロナウイルス感染者数は世界全体で1億人を突破しました。最大の米国にインドとブラジルを加えた感染者数の割合が約45%に達しており事態が深刻です。こうしたなかで、遅れていた英国、米国でのワクチン接種体制が整いつつあり、先行するイスラエルでは感染者が減ったというような報道が話題を集めています。バイデン新政権は就任100日後の4月末までに1億回分のワクチンを投与する目標を掲げています。連邦政府主導で接種拠点を全米に整備するほか、企業にワクチンに必要な材料の供給を優先するよう働きかけようとしています。

ところが、不測の事態もいくつか確認されています。人口対比で感染者数の多い英国などではより感染力の強い変異種が拡散しています。さらに、先行する米ファイザーや英アストラゼネカのワクチン供給体制に遅れが生じたり、感染力が強い変異種に対するワクチン有効性の低さなどが指摘され始めています。混乱はいずれ解消するとはみられますが、新興国の対応等を考えると集団免疫を獲得するにはもう2~3年の期間が必要なのかもしれません。

以上、ウイルス相場で株式市場を支える3つの政策を総点検してみました。新型コロナウイルスワクチン供給の遅れやバイデン新政権による経済対策の規模縮小といった懸念材料はあるものの、米FRBによる強力な金融緩和といったバックアップ体制はほぼ万全です。それだけに、新型コロナウイルス禍が長引けば長引びくほど政策面での支援を継続、あるいは強化せざるを得ません。言い換えれば、強力な支援策が株高に繋がりやすいことがコロナ相場では最も重要な視点となります。米大手アセマネ運用責任者からは米S&P500は今年10%近く上昇するという強気の声も聞こえてくるほどです。

最後に、前出の結論で示した投資方針に解説を加え雑感等をまとめて今回のnoteを終わりたいと思います。新型コロナウイルスの影響は投資家行動にも大きな変化を及ぼしています。米証券業金融市場協会によると、米株式市場における個人の売買シェアは通常10%程度でしたが、足元では推計25%程度まで上昇してきているそうです。新型コロナウイルスの感染が急速に広がった昨年3月以降、大手ネット証券では個人口座数が大幅に増加し、ロビンフッターを含む個人投資家がテスラのような銘柄の株価上昇を牽引しています。こうした現象はわが国ネット証券でも確認できます。

また、今回のコロナ相場では米国株に巨額のマネーが流入し米国株相場を牽引した点も見逃せません。例えば、昨年の日本籍追加型株式投信・資金流出入(ETFを除く)では、テーマ型アクティブ・ファンドなど米国を中心とする外国株式の一人勝ちになりました。ただし、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)をはじめとする米IT巨大企業に集中投資する株式ファンドでは、組み入れ銘柄の株価バリュエーションの割高感が目立ちます。米国成長株投資を否定するわけではありませんが、米S&P500など株価指数連動型の商品、米国バリュー株ファンドに一部入れ替えを検討すべきではないでしょうか。

IMF(国際通貨基金)は先月末に世界経済見通しを公表しました。そのなかで2021年に+5.5%と昨年10月の前回予想から0.3ポイント引き上げ、続く2022年には+4.2%の成長と回復を見込んでいます。景気敏感株である日本株にも業績モメンタム、予想PER等の株価バリュエーションから判断して投資チャンスが大きいと思います。

少し長めの時間軸で見ると、いずれ新型コロナウイルス禍が完全に収束し経済が回復する時期が到来します。そのため、コロナ相場を支えた幾つかの要因はその役割を終え米長期金利が上昇しやすくもなります。さらに、バイデン新政権では増税リスクやIT巨大企業に対する規制などといったマイナス材料も意識しなければなりません。許容水準以上に米長期金利の上昇気配を感じたら、保有資産の内訳(株式、債券、REITなど)をリバランス(資産配分の再調整)し保有株式の内容も見直していくことが必要と考えます。

今回のnoteは最近の経済専門誌、「新型コロナ 収束への道」(花村遼・田原健太朗著者 日経BP)、マスコミ報道等を参考にまとめたものです。昨年10月に「バリュー株に投資チャンスがあるのか」というタイトルでメモを作成しています。現在の株式市場を俯瞰するうえで参考になると思いますので、是非ご覧になってください。

Malon, 5th. Feb. 2021

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