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「スーパーマリオRPG2」から始まったのに、なぜか「ファイアーエムブレム」になった『マリオストーリー』

皆さんは、2023年に発売された『スーパーマリオRPG』を遊びましたか?
私もNintendo Switch版で初めて触れましたが、なかなか楽しかったですよ。

なぜ『マリオストーリー』のnoteで『スーパーマリオRPG』の話をしているのかというと、今作はもともと「スーパーマリオRPG2」として開発が始まったからです。

NINTENDO64やPlayStationがゲーム市場の中心となっていた時代。当時『スーパーマリオRPG』を開発した任天堂とスクウェアの関係は悪化していました。そこで代わりに開発を担ったのが、ファイアーエムブレムシリーズの開発で知られるインテリジェントシステムズです。

海外では『Paper Mario』として発売されました。

当初は『スーパーマリオRPG』に次ぐ新たなマリオのRPGとして開発が始まった今作ですが、紆余曲折あって完成したその姿は、同じRPGでも全く毛色の異なる作品に仕上がっていたのです。

なぜこんなにも変わったのか?
そのヒントとなるのが、まさに『ファイアーエムブレム』シリーズでした。

アルテリオス計算式

アルテリオス計算式って何?
そう思う方も多いでしょう。今作で採用されているダメージの算出方式ですが、全然身構える必要はありません。めちゃくちゃ簡単ですもん。

相手に与えるダメージ=自身の攻撃力-相手の防御力

これがアルテリオス計算式です。ね、簡単でしょう?
というか、ゲームシステムを詳しく知らない人なら、「これって当たり前の計算式じゃないの?」と思うのではないでしょうか。

実際のところ、この計算式をそのまま採用している作品はそれほど多くありません。なぜなら、この計算式には明確な欠陥があるからです。
例えば、自身の攻撃力が5で、相手の防御力も5だとしましょう。すると相手に与えられるダメージは0になってしまいます。これでは戦闘が成立しません。

逆に、自身の攻撃力が100で、相手の防御力は5だとどうでしょう。相手に与えるダメージは一気に跳ね上がり、95になってしまいます。これはこれで味気ない。
ステータスが細かく変化するRPGにおいて、アルテリオス計算式をそのまま採用すると、ゲームが成り立たなくなってしまうわけです。

では、この計算式はどんなゲームで採用されているのか?
ステータスの変化が小さい、またはほとんど変化しないゲームなら採用できます。シミュレーションRPGなどが好例ですね。

さて、『マリオストーリー』とその次回作『ペーパーマリオRPG』では、このアルテリオス計算式が採用されています。先にも話した通り、開発元のインテリジェントシステムズは、シミュレーションRPGの最大手『ファイアーエムブレム』シリーズで実績のある会社。

これは偶然ではないでしょう。ファイアーエムブレムのシステムを、マリオのRPGに組み込んで完成したのが今作なのです。

超デフレ戦闘のメリット

戦闘画面

今作の戦闘の特筆すべき点は、敵も味方も含め、ステータスがかなり抑えられているところでしょう。
例えば、初期のマリオのHPは10、FP(ドラクエでいうMP)は5からスタートします。レベルアップで最大値を上げられますが、それでも50が限界となっています。

加えて、マリオの攻撃力は1からスタートし、さらには攻撃力が上がるタイミングもシナリオで固定されています。
つまり、マリオや味方が与えられるダメージには、基本的に変動がないのです。今作の敵の防御力は基本的に0ですが、ボスなどで防御力が1上がると、それだけで途端に苦しくなります。

また、同じエリアで上げられるレベルには上限があります。「ボスに勝てない時は、雑魚を狩りまくってレベル差の暴力で勝つ」のがRPGの基本ですが、今作はそのようなプレイングを阻止し、ゲームバランスが崩れないよう調整しているわけです。

このように、ゲームデザインを厳密に調整することで、アルテリオス計算式の弱点をカバーし、バランスの良い戦闘を成立させているわけです。

そして、アルテリオス計算式を実装したことで、このゲーム独自の面白さが生まれました。それが逆算です。
例えば、体力6の敵がいたとします。マリオのジャンプ攻撃で2、味方キャラクターの攻撃で1のダメージを与えられる場合、その敵は2ターンで倒せる――与えられるダメージが決まっているので、戦う前から正確な計算ができるのです。

今作の仲間キャラクターであるクリオが、敵の体力を把握できる技を持っているのも、意図してのことでしょう。相手が手強い時こそ、「あと何ターンで倒せるか」と逆算することが、負けないために重要になってくるのです!

……って、よく考えると、この楽しみ方もファイアーエムブレムに近いんですよね。つまりそういうことです。

まとめとおまけ

このnoteでは、『マリオストーリー』の特殊な戦闘について紹介しました。
今作の特殊な戦闘システムを生み出したのが、ファイアーエムブレムの開発会社なのは偶然ではない。RPGでありながら、その楽しみ方はSRPGに重なっている点が、今作の見どころだと思います。

以下はおまけです。
今作が名作と言われる所以は、当然ながら戦闘システムだけではありません。
個人的に気に入っているポイントを軽く紹介します。

手紙

お手紙

主人公のマリオの家には、時折手紙が届きます。また、冒険の拠点となるキノコタウンには郵便局があり、そこでは仲間宛に届いた手紙を読むことができます。

手紙の送り主は、冒険の間に出会ったキャラクターたち。RPGはメインストーリーを追っていると、以前まで拠点にしていた町のことを忘れてしまいがちです。手紙システムは、ふと足を止め、これまでの冒険を振り返るきっかけを与えてくれるいいシステムだと思います。

ちなみに、仲間キャラクターの一人であるパレッタは、フィールド上に落ちている手紙を集め、送り先へ届ける役割があります。いわゆるサブクエストですが、これもかつての冒険の地を再訪する動機づけになっています。

個性的なキャラクターたち

『スーパーマリオRPG』は「あなたマリオの世界の住人じゃないでしょ!」と言いたくなるようなクセの強いキャラクターばかりでしたよね。
今作のビジュアルはそれらと比べるとさすがに控えめですが、中身はしっかり濃いですよ。

レサレサ

個人的に好きなのはレサレサです。彼女は仲間キャラクターの一人で、テレサのお屋敷に住むお嬢様です。概要だけでも興味を惹かれるキャラクターですよね。

お嬢様なので高飛車なところもありますが、基本的にすっきりした性格で後腐れがなく、プレイし終わった後も印象がいいんですよね。理想的なお嬢様キャラだと思います。

うっすら残るスーパーマリオRPG要素

今まで話した通り、今作はスーパーマリオRPGの続編として始まった割に、プレイ感はかなり異なっています。ただ、微かにそれっぽい要素を残しているのも事実なんですよね。

分かりやすいのがアクションコマンド。
攻撃時にタイミング良くボタンを押すと、与えるダメージが増えたり、逆に敵から受けるダメージを減らしたりできます。

私事ですが、今作のアクションコマンドは意外と手こずりました。攻撃はいいのですが、防御のタイミングがつかみにくくて。
アクションコマンドを成功させやすくする「タツジーン」というバッジがあり、ゲーム中はずっとこのバッジを使っていたくらいです(笑)

あと、個人的に印象的に残っているのは、エンディングのパレードでしょうか。ルイージが先頭に立っているのが前作と同じなのはちょっと笑いました。

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