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花の写真の撮り方【kurit3の場合】

花の写真は、ほんの少しの情緒を含む、科学スケッチである。

これはかの有名な博物写真家 エルチェ・カウペルの言葉ではなく、わたしが勝手につくった格言です。エルチェ・カウペルって誰ですか。

はじめに

どうも、クリハラ(@kurit3)です。わたしは植物を育てることと、写真を撮ることが好きです。

そのどちらもを一緒に楽しんでしまおうと、あわせて取り組みはじめたのが5年くらい前です。そして、その楽しんでいる様子を記録として残すためのブログ「私的植物生活概論」を、2015年7月にスタートさせました。

「好きなもの × 好きなもの」なんて楽しくないわけない、と決めつけてはじめたブログでしたが、あのときの俺、いい判断だったぜ。

花や植物をよくよく観察して、写真に撮って、文章にして、アウトプット(ログ)する。その過程で、わたし自身の植物に関する知識は増え、写真のスキルは上がりました(文章については、まだまだムラがあるから何とかしたいところではある)。

嬉しいことにオンラインでも、オフラインでも「クリハラ = 植物好きな人」と言われることが増えました。ありがとうございます。そして「花や植物をキレイに撮る方法」みたいな質問を受けることも。

本エントリーでは、わたし個人が実践している、花や植物を撮影するときに気をつけていること、観察しているポイント、大事にしている考え方(マインド)を余すところなく紹介しています。実際にわたしが撮った写真とあわせて考察していこうという意気込みです。

撮影のテクニック集ではありませんし、いいねを集める撮り方でもありません。写真の基礎でもなければ、正解ということでもありません。好きな花が人それぞれ異なるように、いい写真というのも人それぞれだと思っています。

だからこそ、あなたが発見した、花の美しさ、可愛いさ、瑞々しさ、はかなさ、そんな一瞬を撮ってみて欲しい。その時の、参考にしていただけたら嬉しく思います。

私的植物撮影序論とでも名付けましょうか。いや、やっぱり名付けるのやめましょう。

1.観察する

何よりも大切なのは、花/植物をよく見ること。自分がその花のどんなところにグッときたのか。そのポイントは形なのか、色なのか、元気のよさなのか、終わりを迎える潔さなのか。目で見えるポイントはすべて確認します。イメージを組み立てる前の大事な段取りです。

・花の咲き方、色、咲いている環境をよく見る(カタクリ)

カタクリの淡い紫色の花、しなった華奢な茎、力強い葉。

大変良い状態のカタクリを見つけることができました。落葉樹林のなかにあり、葉が繁る前の初春、明るい林床で光を浴びている様子が観察できます。背景には朽ちたシラカバの枝もあり、ここがある程度冷涼で標高が高いことがわかります。

それらの観察されたカタクリの環境から、どのように感じたのか。その部分を文章で補ってやります。これは灯台もと暮らしの【今日の一輪】シリーズに登場しました。

【今日の一輪】「カタクリ」したたかで潔い彼女はチャンスを逃さない | 灯台もと暮らし

写真表現的な反省としては、光が差し込む様子を撮れていないこですかね。春が来たらまた挑戦しましょう。

・要素を少なくする(極楽鳥花)

よく観察した結果、ひとつの個体で多くの特徴を持っている花は、それ以外のものを写さないように切り取ることで、より引き立ちます。

極楽鳥花ストレリチア。南アフリカ原産のこの花は、信じられないような形と色彩を持っています。余白を使って大胆に配置してみました。ストレリチアの花の特徴を伝えるのに、シンプルな写真は最適だと思います。

・同じ物を並べる(ビオラ)

ビオラを観察してみると、小さなフォルムでありながら、決して無視できないかわいい雰囲気を持っていますね。その可愛らしさは一輪の花だけではちょっと弱いと感じました。いくつか並べることで、ビオラの小ささや、可憐さを損なわずに表現した一枚です。

基本の構図

写真を撮るにあたり、基本の構図は意識しておくと便利です。被写体をよく観察し、その魅力を記録するために最適な構図を選べるようになると、より撮影の幅が広がります。

ここでは3つの構図を紹介します。

・日の丸(ノコンギク)

ニッポンの国旗でおなじみの「日の丸」です。中心におく被写体と、それ以外の関係がわかりやすくなります。カメラに慣れていない人も、簡単に撮ることができます。

足元に咲いていたノコンギク(キク科シオン属)を、真上からとりました。日の丸構図はともすれば初心者っぽい写真になってしまいがちです。ここでは一輪ではなく2つの花をとってみました。前項で出てきた「同じものを並べる」パターンですね。

・三分割(ヒマワリ畑/スカシユリ)

スマホカメラやデジカメでは、この三分割のグリッドラインを表示できるものもあります。それに合わせて撮ると、収まりの良い三分割構図の写真になります。例を見てみましょう。

夏の定番、ひまわりです。空と山とひまわり畑が、だいたい三等分になっていることがわかります。写真的にはちょっと雲が多いのが残念ですが、各要素がバランスよく収まっています。もうちょっとメリハリある空模様だと、グッと夏感が増しますね。

また、三分割構図はそのグリッドの交点にメインの被写体を配置してやるとバランスが良いです。

スカシユリの蕾を上部に持っていき、花をグリッドの交点の近くに配置しました。フェンスや緑の葉が下地となり、余白部分も楽しめる一枚になりました。

・シンメトリー/二分割(バラ)

シンメトリー構図はどっしりとした安定感をイメージさせます。誠実で落ち着きがあって、厳かな印象。ちょっとアクセントや遊び心が加わると、親しみやすさを演出することもできます。

花瓶に生けたオレンジ色のバラ。花瓶をセンターに置き、バラのみをラウンド型に仕立てました。花材と花器の魅力を活かした、たいへん潔い一枚ですね。

この花瓶すてきでしょ、ねぇねぇ。和風にも洋風にも使えそう。

飾る/愛でる

前項のバラで登場した「花器」を愛でる感覚も、撮影シーンに大いに登場させてやりたいところ。前章までの撮影ノウハウとは少し性格が変わりますが、わたしがグッとくる愛で方を3つ紹介したいと思います。

・とにかくたくさん並べる(アルストロメリア、ナス)

1章で紹介した「同じものを並べる」と共通した方法ですが、そのボリュームを過剰にしてやると、面白さとほんのちょっとの狂気を感じるので好きです。

アルストロメリアはひとつの茎から複数の花を咲かせるのが特徴です。そんなアルストロメリアがぎっしりと!華やかで豊かなボリューム感を、フレームいっぱいに収めてやりました。やってやりました!

初夢に登場して欲しいも第3位ナスは「(大事を)成す」とかけて、たいへん縁起の良いモチーフです。流線型のフォルムと茄子紺の色彩が鮮やかな一枚。

手ぬぐいを撮っただけの写真と思いましたか!? おっしゃる通りです!

植物のこういった捉え方もあるという例のひとつとして、ご提案させていただきました。

・ストーリーを想像する(サフィニア)

こちらはベランダ全体の様子を観察するところからスタート。緑色や茶色が多いガーデニングエリアで、一輪の赤い花がよく映える。そんなストーリーのもと、撮影をおこなっています。

緑の葉に囲まれた一輪の赤い花は、量産型ザクⅡを従えるシャア専用ザクみたいですね! そんな裏テーマで撮影したこちらの一枚、あえてレタッチ中の画面をスクショして、男子っぽさ、メカニック感を出した一枚に仕上げて、通常の3倍楽しみました。

・意外性のある組み合わせ(ビオラ×おちょこ / トルコキキョウ×ビー玉)

花瓶や一輪挿しだけが、花を飾るフラワーベースではありません。身の回りのさまざまなアイテムを使って、花を飾ってやるのも楽しみ方のひとつです。乱暴に申し上げますと、水が漏れなければ何でもいいのだから!

なので、おちょこでもいいのです。黄色いビオラを飾り、お気に入りのアイテムたちと並べて俯瞰で撮った一枚。意外性のある組み合わせですが、ビオラの黄色とおちょこの模様の青が補色の関係になっていて、破綻なく調和していますね。

トルコキキョウを一輪、コップに飾ります。トルコキキョウの茎はボリュームのある花にくらべて、たいへん細く自立が困難です。そのため根本を留めてやる必要がありました。そこで使ったのはビー玉。華奢なトルコキキョウを支えつつ、その透け感で涼やかで艶っぽい印象に仕上げてやりました。

ポイントであるビー玉と華奢な茎を効果的に見せるため、ほぼ真横から撮影しています。

どちらも意外性のあるものですが、珍しいものではありません。身の回りの物を、それも意外なアレを花器にしてしまおう。

おわりに(編集後記)

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