ネコは僕と#1

僕の元に、一匹のネコがやってきた。
耳、顔、脚、尻尾が黒く、胴体は白い。青く透き通った眼に、丸い瞳が愛らしい。
マイマイと名付ける。
そんなマイマイと僕の何気ない日常が、僕にとっては大事な思い出。

もともと僕が小学生の頃に、一匹のネコを飼っていた。白くて長い毛、尻尾だけが焦茶色、青と黄色のオッドアイが特徴的であった。いつも遊んでいて、お互いじゃれ合って、眠くなれば一緒に寝て、という生活で過ごしていた。
しかしある時、玄関を勢いよく爪を立てていた。普段見たことのない様子で、呼びかけてみても反応しなかった。

——開けて。

そんな想いが、僕の頭の中に入り込んだ。
僕は何かを感じ取った。
ここで開けたら、きっと。
胸騒ぎが強くなり、先ほどの想いがこだまする。

——開けて。

僕は玄関のドアを開けた。
そして僕の顔を見ないまま、振り向くことなく、行ってしまった。
探すこともせず、僕は待った。帰ってくることを願った。

しかしながら、その願いは届かなかった。
そう思ったのは、そう確信したのは、一ヶ月ほど過ぎた頃であった。
毎日いつ帰ってきてもいいように、エサを準備して待っていたわけなのだが、今日の夜から出すことを止めた。

僕の時間から居なくなってしまったのだった。
不思議と後悔はしていない。あの言葉は、僕に対しての想いだったのだ。それを望み、願ったのだ。玄関の先に、目的があった。それだけのこと。
それからというもの僕は、ネコを飼う前の時間に戻り、何気なく過ごした。
それから十五年も過ぎた頃だった。

『里親探しています』という情報が、僕の元に来た。
飼う予定はないけれど、見るだけならいいかと軽い気持ちでその場所へ向かった。そして子ネコが何匹かいた中で、ひと際小さく、白いネコ。
兄弟であろう周りの子ネコより一回り、いやふた回りは小さいだろうか。

これが僕とのちのマイマイとの出会いだった。

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