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贔屓陣営の敵は、自らの敵となり得るのか

銀河英雄伝説の贔屓陣営、ありますか?
その陣営に対する陣営を、あなたはどう捉えていますか?



はじめに

「銀河英雄伝説」という田中芳樹先生が書かれた小説がある。
強い言葉で構成されているタイトルゆえか、英雄譚を敬遠する捻くれっぷりからか、近年まで手に取ってこなかったのだけど、2020年手に取って以来、ドがつくほどにハマってしまった。それもう、絵に描いたように。

今となってはTwitter(X)で「銀英伝」の検索をかけては、考察やら初見さんやらの叫びを見てにやにやするという、あれなことを繰り返すまでに「成長」した。
(意地悪とかはしてないので見逃してほしい。辻いいねは辛抱たまらんくてしているかもしれない。怖がらないでほしい)

で、ある日。「同盟が好きなので帝国は敵だと思っている(意訳)」というポストに遭遇。

ふむ。

銀英伝を知らない人に説明するならば、簡単に言うと陣営の対立と、その中に佇立する個性を描き出しているのが銀英伝という作品。善悪ではなくとも対立軸はあるので、贔屓陣営はできる確率は高い。

特に、独裁を嫌って航路もない宇宙へ飛び出した面々が、民主主義国家として建国した自由惑星同盟(通称:同盟)は、現在の我々に近い(あくまで皇帝が絶対君主として君臨する銀河帝国と比して、だけど)こともあり、こちらに対する共感が高い傾向にあるように見受けられる。

(その所為で腐敗っぷりが描かれるたびに身につまされるというか、こういう気配、まさに今感じられるようになっちゃってるな、とか、怖い部分や苦々しく思ってしまう部分もあるのはまあ別の話なので割愛)

自分としても、国としてのあり方とか、そういうものに関しては同盟側がしっくりくるし、ラインハルトという唯一無二の皇帝が現実には存在し得ない(あるいは一代限りでは奇跡的に存在し得たとしても、続く保証がない)以上、そっちの方面に期待するのはあかんという判断はついている。

でも、かっこいい。帝国、かっこいい。

これは好みの問題なので、どうしようもない。
日本が帝国化されることは断固拒否だし、何ならヤンがリアルにいても民間人である自分は信用しないだろうし、やってることオールオッケーとかいうつもりは毛頭ないけど、何となく帝国側に肩入れしているというか、陣営にいるキャラに対しての愛着が強いというか、まあ端的に言えば推し陣営なわけだ、帝国が。

同盟の、というか主に13艦隊のキャラも好きだし、ホワン・ルイやビュコック提督も大好き。同盟首脳部には、政治形態が近いだけに怒りと嫌悪の割合が大きいけど、同盟という理想も含めて、決して嫌いなわけではない。

なので、贔屓陣営は帝国なのだけれど、同盟を別に自身の敵のように思っているわけではない。
見かけたポストの意図がどこにあるのかは正直わからないし、それを非難する気も全くないんだけれども、「敵」と感じる見方もあるのか、と新鮮な感覚だった。

で。

自分が観測していた範囲の中だと、同盟派を自認している人の方が、作中の対立構造とご自身の感情がリンクしているようなポストをしている人が多いように感じていた。ポストに連ねた言葉と感情がイコールなのかはわからないので、まあ感触なのだけど。

同盟派のアカウントの方が、作中の同盟の敵である帝国のやることに対して否定的。帝国がやってるのがマジものの侵略なので(宇宙統一という名目はあれど)、それに対する嫌悪とかそういうのもわかるのだけれども。
まあそういうのも含めて、同盟派の人は帝国を「敵」( = 悪という意味ではなく)とみなしている人が多いのかな、ということが気になり始めた。

のが、発端です。
「はじめに」が長い。ごめん。



やったこと

Twitterのアンケート機能で、自分のワーさんが回してくれる範囲の集計を行ってみた。
参加しなかった人、どちらにも属さない、あるいはどちらも好きでどうしようもない人、フェザーン派の人、地球教信者の人など、そもそもどちら派みたいなことを敬遠しがちな人。そういう方々を無視しているので、乱暴だなあと思いつつも、まあお遊び程度、自分の認識と実体にどこまでズレが出ているのかを検証する名目だし、いいかーということで実施。

集計結果

[集計期間]
2023年12月10日〜2023年12月15日
[得票総数]
96票
[結果]
帝国派。同盟は敵 5.2%
同盟派。帝国は敵 5.2%
帝国派。同盟を敵とは思っていない 50%
同盟派。帝国を敵とは思っていない 39.6%

へー!!!!!!!!!


結果を得て

正直意外だった。
何がって、帝国派が多かったことが。
帝国派(というか帝国キャラが最推し)のフォロワー/フォロイーさんが多いアカウントからの発信ということで、周辺はまあそうかなーとは思ってたんだけど、世の中的に同盟派の方が圧倒的に多いような印象があったので。
キャラとしての帝国キャラが好き、というのは多いけど、陣営への贔屓とか肩入れという話になると別かなと思っていたので。

好きなキャラがいる方の陣営を「派」としてくださっていたなら、帝国キャラ人気!!ということなのかもしれない。その辺は全然指定してないので、結果もふんわり受け止めておくのが良いかも。
でも、やっぱり意外だったので、意外と言っておく。

で、相手陣営を敵と思ってる人が、全体的に少ない。帝国と同盟で差もない。これも実はちょっと意外だった。見かけたのは圧倒的に同盟派(と思しき)人が多かったし、その数も自分の観測上は割合高かったし。
そうかー。改めて聞いてみるとそういうわけでもないんだなあ。

まあ何にしろ、自分の予測とか観測値とか、全部当てにならねえなってのがわかる結果となりました(笑)。
自分の感覚が「正しい」と思い込むのは危険なことだね。
至極真っ当な認識の補正ができて、満足です。

ご協力いただいた方々、ありがとうございました!!


何はともあれ、銀英伝はすごいぞ

結局そこになるわけなんだけれども(笑)。
もちろん粗がないとは言わないし、書かれて41年。無謬の聖典のように扱うつもりも全くないし、これで世の中の仕組みがわかるとかそんな類の主張をするつもりもないのだけれど、そういうの差っ引いて、今ある自分の生活、国というもの、政治というもの、戦争というものに対して、改めて考える機会を与えてくれて、しかもそれが極上のエンタメとして成立しているのが銀英伝という作品なんだと思う。
読後まず「選挙に行こう、行かないといけない・・・」と思える小説が、果たしてどれだけあるのか(笑)。

ありとあらゆる人間関係とか書くと、どろどろとしたいがみ合いとか騙し合いとか裏切り合いみたいなものはほぼないので、肩透かしを食らう人たちが出てきてしまうと思うけれど、それでもさまざまな関係性が、個性あふれるキャラクターが無数に描かれていて、どこかには必ず刺さる。はず。


小説

原作小説は初版の徳間ノベルスから、創元SF文庫、電子書籍のらいとはうす版など、色々出てるよ。愛蔵版も何度か刊行されていて、去年あたりにも豪華なやつが出てるよ。寄稿されてる解説の違いとか、田中先生のインタビュー内容が追加されていたりと、細かな違いがあるので、お好みの版を手に取ってみるのも良いと思う。ものによっては挿絵が入っていて、びっくりするようなキャラデザが描かれているものもあるとか(自分が持ってるのはらいとはうす版と創元SF文庫なので挿絵はない)。

メディアミックスで省かれてしまう細かな内面描写とか、小さいけど印象的なエピソードとか、「英雄」と呼ばれる人たちの見えづらい苦悩だとか。そういうのはもう、小説ならではだと思う。
取り敢えずラインハルトの美貌描写のバリエーションの豊かさを味わって、お腹いっぱいになってほしい。銀河一の美形はちょっとやそっとの修辞では描き切れぬのだ・・!!!!


オーディブル

小説が一番濃い原液で、これを母国語のニュアンスとか含めて味わえるのサイコー!!!!!!と思っているけれども、文字を読むのが苦手な人がいるのも仕方ないとも思っている。そういう人にはオーディブル。耳で聴くのもおすすめ。2018年から始まった「銀河英雄伝説Die Neue These」のナレーションを担当されてる下山吉光さんが、声音を駆使して音源化してくださってるのでそちらで。


アニメ

アニメは2種類(+1種類)あって、いわゆる石黒監督版と呼ばれるOVA形式で発表されたもの(に連なる劇場版)と、現在進行形のノイエ版(銀河英雄伝説Die Neue These)。これらは相関関係はなくて、それぞれが原作小説を元にした別軸のアニメ。流体金属の設定を仁義切ってオマージュで踏襲していたり色々あるけど、別軸で制作されているもの。

ノイエがリメイクと言われることがあるけど、それはもう一度アニメ化したという意味の場合のリメイクであって、決して石黒監督版のリメイクではないということは、念頭に置いておいた方が良い。アレンジの仕方が全然違うし、視点もテーマも違うので。

どちらもしっかり「銀英伝」してるのは間違いない。
と同時に、どちらも田中先生の銀英伝そのままではないというのは、しっかり心に刻んで、それぞれを楽しむのが良いと思う。

かっこの中の+1種類は、田中先生が小説を書き下ろして、道原先生が漫画化して、それをアニメ化したという作品。キャストもキャラデザも道原先生版になってる。漫画は単巻同名コミック、小説は外伝に収められている。

個人的にはノイエ銀英伝の描き方が性に合っているので、聞かれればこちらをお勧めする。
邂逅→星乱→激突→策謀
と4期48話が制作されていて、原作小説の4巻分がアニメ化されてるよ。
2024年1月16日から日テレで25:30から1年間かけて放送されるのと、合わせてTVerでも見逃し配信されるので、視てね!!!!

さらに続編の制作も決定したので、一緒に次期を待ちましょう。


漫画

アニメも時間がないよーという人は、漫画も2種類あるので、そちらでどうかな!?

銀英伝を(あくまでも傾向的に)少女漫画の文脈で再構成したらどうなる?ってのが道原かつみ先生版。キャラの女性化やエピソードの足し弾きがすごい。残念ながらしっかりアレンジが効いてコミカライズされているのは、原作2巻まで。そのあとはエピソードを結構生真面目に拾った「英雄の肖像」という形で途中までまとめられている。

少年ジャンプ系漫画にしたらどうなる?こうなる!!ヤンの謎めき具合とキルヒの安心感とラインハルトのキラキラっぷりの限界突破具合がすごい、藤崎竜先生版。キャラの最期が結構大胆に変わっていたりもする。外伝にあたるラインハルトとキルヒアイスの10歳の出会いから再構成されてるので、時系列がわかりやすい。
先日発売された最新刊(28巻)で原作小説8巻のあのエピに到達したよ(察して)。


さいごに

という感じで膨大な量の楽しみが約束されている銀英伝。
あなたも沼に落ちてみないかい??
すべてを楽しむ必要はない。楽しめなかったというなら合わなかったので仕方ない。好きなものを好きなように楽しんで、銀英伝を好きになってくれたら嬉しい。

最後、ただの銀英伝プレゼンになったし、一個記事書けばよかったと思ったけどまあいいかな。
こんな感じで色々書いていきたい。適当に。

1/16からのノイエの放送に合わせて感想を書いていこうと思う。
別に感想noteは読まなくてもいいから、ノイエ銀英伝、視てね!!!!!!!!!!
で、次期から劇場の特別上映に足を運ぼう。
劇場で浴びるノイエ銀英伝、本当に最高なので。

では!