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新規就農者(露地野菜農家)が儲からない原因はビニールハウス

新規就農者を含めて、儲からない貧乏農家を観察していると「ビニールハウスを建てたがる」という共通点に気付きました。

儲けを増やすためには「ビニールハウスを建てて生産性を上げるのは常識だろwww」と考える方も多いでしょう。しかし、私の考えは違います。なぜなら、ビニールハウスを建てても生産性は向上しないからです。「何言ってんだコイツ。馬鹿じゃないか(笑)」と思わずに私の話を聞いてください。


農家が行う投資は大きく分けて2種類
農家が行う投資は、ザックリ分けるとこの2つです。

①作業効率を上げるための投資
トラクター・田植え機・マルチ張り機・草刈機・除草剤の散布などのことです。これらを使えば手作業で何日もかかる作業が数時間で終わります。作業時間が短くなるだけで収穫量が増えるわけではありません。

②収穫量(売り上げ)を増やすための投資
ビニールハウスの建設、作付面積の拡大、農薬や肥料散布などのことです。これらは収穫量を増やすための投資であり、作業時間が短くなるわけではありません。むしろ労働時間が増える原因(生産性が下がる原因)になります。

生産性(労働生産性)とは
【生産性=アウトプット÷インプット】です。アウトプットとは利益(収穫量・売上げではない)のことです。インプットとは生産にかかった作業時間や費用のことです。生産性=収穫量ではないことに注意してください。これは収穫量が増えても労働時間や経費が増えたのでは本末転倒であるという意味です。

ここから「儲からない原因はビニールハウスにある」という理由を説明します。露地野菜農家がビニールハウスを建てる理由として、寒さに弱い夏野菜の苗をビニールハウスで育てることで収穫時期を早めたり、栽培に必要な苗を自分で苗を育てることで苗の購入費用を節約することがあげられます。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。さきほど収穫量(売り上げ)を増やすための投資のところで書いたように、ビニールハウスは作業効率を上げるための設備ではありません。それどころか苗作りにかかる経費や作業(インプット)が増えることで生産性を落とす原因になりうるのです。

では、何に時間やお金を投入をするべきなのか
どのような方法で何を育てるかにより千差万別ですが、少なくとも露地野菜が中心の農家にとって「苗用ビニールハウスをたてる優先度は相当に低い」というのが私の考えです。なぜなら、野菜の苗は自分で作らなくても“購入苗”で済ますことができるからです。苗用ビニールハウスを建てる前に「購入苗の利用や、畑に直接種をまくタイプの作物に変更する」などを検討するべきなんです。

購入苗は高いと思いますか?
重要なのは機会損失という考え方です。新品のハウスを建てて、さらに苗を温めるベッドを設置すると何十万円もかかります。もし、そのお金をマルチ張り機や“苗の植え付け機”などの労働時間を減らすための設備投資に使っていたらどうなるでしょうか。作業時間が減れば栽培技術の勉強や、営業活動で販路の拡大ができるかもしれませんよね。このようにコスパを考えるときは「見かけ上の費用」だけでなく、自分の労働時間の増加や機会損失も考慮して判断する必要があるのです。

儲からない農家さんの特徴
①作業時間を減らす投資を後回しにする。
②作業に追われて品質管理や営業活動が後回しになる。
③儲からないから、経費節約のために自家製の苗を作る。
④苗作りの手間が増える&金欠で①の投資がさらに後回しになる。
結果的に、貧乏ヒマなし状態にハマってしまうのです。

珍しい品種や作物で差別化を狙うのは得策ではない
ちなみにですが。新規就農者の場合、就農直後から広くて条件の良い農地を借りられることは、ほぼありません。そうした条件が悪い中で「珍しい品種で差別化をはかりニッチな市場で稼ぐ、多品目少量生産で高付加価値な経営を目指す」という農業経営を考える方が多いようです。そして、珍しい品種の苗は流通していないので、ビニールハウスを建てて苗の自家生産をはじめるのです。

しかし、なぜ珍しい品種や作物の苗は流通していないか考えてみてください。それは簡単な話で、珍しい作物=需要が少ないということです。反対にメジャーな種類であれば「確実に需要がある=売れる」と判断できますよね。

農家の仕事は生産以外にも「需要の把握、顧客の獲得、流通・販売、コスト管理」など、やるべきことが無数にあります。珍しい種類の場合は需要の予測や顧客の獲得から始める必要があり、それだけ作業負担が増えます。しかも、不慣れなマーケティングで出した需要予測は間違っている可能性が高いといえるでしょう。ツイッター・インスタグラム・ブログなどを駆使して、需要の少ない珍しい野菜で利益を上げている生産者もいます。しかし、新規就農者がわざわざビジネスの難易度を上げる必要があるでしょうか?

私は、その必要は全くないと思います。

どこのスーパーでも売っているような普通の品種を作り、確実に現金を得ることに集中するべきです。そのためには「ビニールハウスを建てて苗の自家生産をしよう」などとは考えずに、購入苗・マルチ張り機・除草剤などを利用して作業時間を短縮することにお金を使い、空いた時間を営業活動や経営戦略などの頭を使うことに充てましょう。


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