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新月の闇の中で、光が生まれるのをじっくり待つ

もう3年くらい前の話ですが、イノベーションはどこから起きるのかということをソーシャルビジネスの先生と話していて、「いかに不安定、不確定、曖昧な状態に身を置くかがキーになる」と伺いました。

人はとても弱いので「わからない」「曖昧」な状態を嫌がります。ビジネスマンは特にですね。左脳でロジカルに考える訓練をされているので、「なんだかわからないけど居心地がいい」みたいな状態を「照明の照度が少し落ちていて、椅子とテーブルの高さが低く設計されていて、音楽に揺らぎが起きやすい弦モノを採用しているからだな」とか分析したりします。

しかし、こうして常に結論(しかも自分の過去の経験と知識の中で判断された安易な結論)を瞬時に出していく行為は、新しい発見を生み出すチャンスをつぶしていきます。

「曖昧な状態に身を置けば置くほど、イノベーションの確率は上がるよ」

この1か月で、とてもいい場をファシリテーションさせてもらいました。

組織のビジョンやミッションを見出しつつ、ビジネスモデル構築・事業設計にまつわる対話の場。
現場をまわって視察する時間が5時間、最新情報インプットが1時間、その後の対話の時間が13~18時までの5時間。飲み会でもずっとその話をしていて、2日通算5-6時間。

13~18時までの対話の時間の内訳はこんな感じでした。

■13~15時■ 前日にあったインプットから見えてきた、個別の事象について思いつくまま、一つひとつ対話で深めたり跳んだり。
(手探り、混沌、一つひとつ)

■15~16時■ 出てきたエッセンス(今回は「人」と「事業」)を抜き出し、相関関係を見て対話。
(見える化したものの「それで?」。対話しつつも停滞しているような、ただただホワイトボードを見つめる時間)

■16~17時■ 試しに「型」に落とし込んでみる。
(ものすごくパワフルな時間。混沌からいきなり絵が見え始めた)

■17~18時■ 見えてきたものを咀嚼し、肉付けし、リアルなスケジュール感とステップを想定してみる。
(陽のエネルギーがさく裂して、話がとまらない)

6人が集まって3時間も混沌とし続けると、どうしても安易なアイデアやよく聞く事例を振り込んでくる人がでます。

「これってこういうことだよね」「●●をやったらいいんじゃない?」

混沌の中に振り込まれるアイデアというのは、アイデアの質に関係なく、すごくパワーがあって、思考が流されそうになります。
そう、不安定→安定へ。ですが、今回の6人は全員が混沌の中に身を置くことの大切さを知っていたのだと思います。流されずに粘り強く、あーだこーだを続けました。

「一度試しに型にはめてみてアウトプットする」という策を繰り出したのは、機が熟したタイミング。その瞬間「ぱぁっ」と霧が晴れるような、全員が納得感のある、テンションが上がる、絵が道が、見えてきたのです。
おそらくこの策を1時間早く出していたら、終了後に消化不良感がでたはず。

昨日は「かみかわ未来会議」という場をデザイン&ファシリテーションしたのですが、こっちはバンバン形に落として、不安定→安定を生み出していきます。これを何度も繰り返し短時間でやり続けることによって不安定感が増すというパラドックス。

ワークショップや対話の場をデザインするとき、場の空気感をイメージするようにしています。

呼吸、緩急、緊張と弛緩、不安定と安定、曖昧と明確、闇と光。
それらがどんなペースで、どんな深度で起きていて、無理はないか、心地よいか、最後は吸って終わるのか、吐いて終わるのか。

今回、改めて大切だなと思ったのは、闇の混沌をしっかり味わうこと。
暗闇の中で触り、嗅ぎ、思考し、声を出すことで生まれるような微細な振動を感じ続けると、光がただの「明るさ」ではなく幾色もの粒子から生まれ、波のようにうねっているんだと、わくわくするような発見ができるのです。

ついつい場をうまく収めようと、安定や光や明確さを求めてやいないか?
ファシリテーターが隠し持っている暴力的なレベルのパワーを、自分の不安を取り除くために使ってやいないか?

新月の夜に、光が生まれるのをゆっくり待つ。
まるいシイタケを食べながら@旭川三四郎

※本投稿は、「ファシリテーターAdventCalender」向けの投稿です。


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