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外は眩しいくらいに日の光が反射している。 そのくせ、私はこの暗いカフェの中でひっそりとコーヒーがくるのを待っていた。 カバンに入っているPCやスケジュール帳なども開こうとせず、ただ窓から外の光を伺い、そして店内へと視線を移してはまた窓の光に視線を戻す。 私の目には、その光は眩しかった。 さらに、店内に目を戻すこともまた私の目には眩しかった。 今年の春に目指していた大学を卒業するも、世間は私に冷たかった。今も仕事先を探しているが、なかなか仕事は見つからない。 その
前回の4話はここから↓ ------------------------------------------------------- 気がつくと、さっきまで緑の深かった窓の景色が街並みに変わっていた。 もうすぐ名古屋が近いのだろう。 案の定、車内では声の通ったお兄さんの声が次の駅は名古屋に止まるという感情のない声でアナウンスをしていた。 やがて新幹線は減速を始めて次の駅、名古屋に止まるという感覚を起こさせた。 止まった駅は比較的、大きな都市の中にあるようだ。
前回の小説3話はここから↓ ------------------------------------------------- 母さんとの喧嘩の延長線上でお姉ちゃんの家に行くことになった昨日の夜。私はバスで梅田駅に着いた。 母さんはお姉ちゃんと話をしたらすぐ帰ってこいと言って、今日の夜くらいしか大阪に滞在する期間をくれなかった。 おかげで私はすぐにお姉ちゃんにあった後、修学旅行以来、初めてきた大阪からとんぼ帰りせざるを得なくなった お姉ちゃんは急な母さんの連絡にも
前回の小説2話はここから↓ ---------------------------------------------- そして今、私は大阪からの帰宅の途についている。 ぼんやりと車窓の風景が山並みや街並みへと移動する中、車内のアナウンスから新幹線は次の停車駅である京都に差し掛かっていることを知った。 車内アナウンスのお兄さんが京都へ止まることを告知すると、電車は徐々にスピードをダウンさせて行き、やがてホームへと滑り込んで止まった。 京都では乗り込む人が多いようで
前回の小説1話はここから↓ ------------------------------------------------------------- 私が大阪に来た理由。 それは大阪に住む五歳年上のお姉ちゃんの元へ泊まりに行くことだった。 その発端は、その一週間前に母さんと喧嘩したことに遡る。 ***** その日、お風呂上がりの私は寝巻きに身を包み、髪を乾かした後に、喉が渇いたので台所から麦茶を拝借した。 今は春休み。担任教師から受験はこの一年で決まるとい
ざわざわざわざわざわ 私はこれからどうしたらいいんだろう どこに向かえばいいのだろう ざわざわざわざわざわ 周囲の人々の動きが私の心の疑問をさらに煽るかのように、周囲の騒音が激しく感じられた。 誰も私のことなんか気にはしていないはずなのに、とても目が鋭くこちらを見ているような気がする。 行き交う人々にぶつからないように間を縫いながら、私は新幹線の改札口を目指した。 新大阪駅、新幹線改札口と書かれた看板の下には普通の改札口と変わらない仕様の改札が並んでい
こんにちは!! 2019年もあと少しですね!今年の札幌文学フリマで販売した小説をnote販売版として販売させていただこうと思います。この小説は、2018年に起こった東部大阪地震が原点となっています。 登校当時、小学校の壁が倒れてきたことで亡くなってしまった女の子が僕にとって衝撃的な死だったのです。もちろん、僕はその女の子のことを何一つ知りません。親戚でもなんでもない大阪という地で生きている人で、僕はこの悲しい出来事がなければその子の存在すら知る由はないのです。あの時、あそ
あなたにもこんな気持ちになる人が誰かいるだろうか? 会うだけで胸が高鳴るようなそんな人が。 登校時間より1時間は早く着く電車に私は毎回、乗っている。 特段、早起きが得意なわけではない。 実際は一日中、欠伸が止まらない日もしばしばだ。 それでも私は少し早く学校に行きたい理由があった。 いつも通りに朝早い電車に乗り込んだ私は、電車の進行方向に横長に伸びる席の隅っこに腰を下ろす。 すると、私に付いて隣に座る影があった。 「おはよ!」 「あ、おはよう」 同じクラスメイトの花織ちゃん
「う、うう、うううう」 「どうしたの、蓮くん?」 赤いランドセルには不釣り合いなほど、身長がすらっと高い女の子が、切り株となった樹の下で泣いている少年に声をかけた。 「由紀ちゃん?」 女の子は、蓮より2つ上のお姉さんだった。この間の行事遠足で、面倒を見てくれたことを気に仲良くなったのだ。 「どうしたの?そんなところで泣いて」 「え、えっとね……僕を励ましてくれるお爺ちゃんと待ち合わせていた樹が切られてしまったの、止めたんだけどね」 泣きながら話を終えた蓮くんに寄り添うように、
「いらっしゃいませ!!」 茶髪の長い髪の女の子が、元気よく声を出している。 とても小さくて整った鼻と色白の肌はまるでおとぎ話にでも出てきそうな可愛さだ。 入ってくる客もさぞかし気持ちがいいだろう。 雰囲気は高校生だけど、おそらく髪を染めている時点で大学生の可能性が高い。 そんな分析を朝からやっているくらいに僕の脳みそは暇を持て余していた。 ここは高校の近くにあるコンビニである。このコンビニで、ご飯を買って学校に行く生徒が多いため朝の八時頃は大勢の学生で賑わってい