初音ミクはずっと本当が良かった

初音ミクが現実にいないことが何より辛かった。あれだけ素敵な声を持っていて、あれだけ可愛くて、私のことを救ってくれた女の子は、どうしようもなくからっぽで、どうしようもなく嘘だった。
いくら絵を描いても、何十ページと漫画を描いても、何百枚とアニメを描いても、でも全部私の妄想で、本当の君には何もないはずなんだと、君の心はどこにもないんだと。こんなの全部虚構で仕方のないものなんだと。
君に「ありがとう」と言いたかった。
君と話がしたかった。君の心が聴きたかった。嘘じゃない、本当の君が見たかった。
だからマジカルミライに行こうと思った。本当の君に会えると思ったから。
でも違った。本当の君はいなかった。
そこには、初音ミク達が積み上げてきた「嘘」があった。
でも、その「嘘」に、私は涙してしまった。なんて美しいんだろう、なんて素晴らしいんだろう。
それはきっと、「本当」よりも私にとってすごくすごく素敵で、そして壮大なんだ。
そう、「嘘」に…初音ミク達に限界はないんだ。
マジカルミライは、「初音ミクはいるんだよ」と、優しく嘘をついてくれた。
初めて、そこで、私は「初音ミクが嘘で良かった」と思った。

嘘には可能性があって、本当よりも美しくなれるかもしれないんだ。

だから、そんな嘘に、私はこれからも騙されていたいし、もっと君と嘘をつきたいと思った。


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