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逆転検事 ヤンマガ版未発表脚本04

燃え盛る逆転(4)

《登場人物》
・御剣怜侍(みつるぎ・れいじ)……検事局始まって以来の天才検事
・糸鋸圭介(いとのこぎり・けいすけ)……所轄署で殺人の初動捜査を担当している刑事、御剣とは旧知の仲
・鞍馬満天(くらま・まんてん)……体操選手
・智槍啓太(ちやり・けいた)……競輪選手
・大地翔(だいち・かける)……陸上選手、深夜3時にボヤを見つけて消火活動
・河童沙良(かわどう・さら)……水泳選手
・目樽望(めだる・のぞむ)……学長

▼シーン5

 15分後。ようやく鎮火。息を弾ませながら、現場に座り込む大地と糸鋸。火事はボヤ程度。壁面が煤で黒く汚れただけですむ。

〈糸鋸〉[肩で息をしながら]「ボヤですんでよかったッス。あーあ、一張羅のスーツが煤で真っ黒ッス。ちょっと洗ってくるッス」

 ブレザーを脱ぐ糸鋸。しかし、そのとき突風が吹き、ブレザーが飛ばされてしまう。

〈糸鋸〉「あっ、ダメッス」

 ブレザーは茂みの中へ。あとを追いかける糸鋸。

〈糸鋸〉「大切な一張羅ッス。あれがないと、明日から着るものがないッス」

 ライトを照らすと、茂みの中にブレザーが落ちている。

〈糸鋸〉「よかった。見つけたッス」

 ブレザーを拾い上げ、ほっと胸を撫で下ろす糸鋸。しかし、その横に人影。

〈糸鋸〉「……ん?」

 そこには鞍馬の遺体が横たわっている。

〈糸鋸〉「うわあああああッス!」

 闇に響き渡る糸鋸の叫び声。

▼シーン6

 翌朝。大学の周囲には立入禁止のテープが張り巡らされ、あちらこちらに警察官の姿が。
 《本日、臨時休講 学長》の立て看板。
 御剣、登場。トレーニングホールの裏手で捜査を進める糸鋸のそばへと歩み寄る。

〈糸鋸〉「あっ、御剣検事。朝早くからご足労をおかけして申し訳ないッス」
〈御剣〉「貴様が第一発見者だそうだな」
〈糸鋸〉「そうッス。連続放火魔を見つけるつもりが、なぜか死体を見つけてしまったッス」

 茂みに横たわる鞍馬の遺体を調べ始める御剣。鞍馬はTシャツ、ジャージにスニーカー姿。Tシャツの首周りには水で濡れた染みがある。

〈御剣〉「……絞殺か。ロープのようなもので、後ろから首を絞められたようだな」
〈糸鋸〉「自分が遺体を発見したとき、まだ身体はそれほど冷たくなかったッス。殺されて間もなかったはずッス」

 遺体を隅々まで調べる御剣。

〈御剣〉「貴様が遺体を見つけたのは午前3時過ぎだったな?」
〈糸鋸〉「そうッス」[焦げた建物を指差し]「学生と一緒にボヤを消し止めたあと、偶然発見したッス」
〈御剣〉「放火か?」
〈糸鋸〉「燃えた現場から、ガソリンを染み込ませた古新聞が見つかってるッス。明らかに放火魔の仕業ッス」
〈御剣〉「それにしても、被害者は真夜中に、一体なにをやっていたのだろうな?」
〈糸鋸〉「たぶん、トレーニングッス」[鞍馬のシャツを指差し]「その証拠に、Tシャツが汗でぐっしょりと濡れてるッス」[続いて、トレーニングホールの大窓を指し示し]「さらにこの建物内から、被害者の遺留品が見つかったッス」

                           つづく

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