逆転検事 ヤンマガ版未発表脚本03
燃え盛る逆転(3)
《登場人物》
・御剣怜侍(みつるぎ・れいじ)……検事局始まって以来の天才検事
・糸鋸圭介(いとのこぎり・けいすけ)……所轄署で殺人の初動捜査を担当している刑事、御剣とは旧知の仲
・鞍馬満天(くらま・まんてん)……体操選手
・智槍啓太(ちやり・けいた)……競輪選手
・大地翔(だいち・かける)……陸上選手
・河童沙良(かわどう・さら)……水泳選手
・目樽望(めだる・のぞむ)……学長
▼シーン3(続き)
〈目樽〉「4人とも、来月に開催される世界大会への出場が正式に決定してね。今夜はそのお祝いをしてあげようと思い、ここへ呼んだんだよ。というわけなので、そろそろ退散してもらえるかな?」
〈糸鋸〉「そうとは知らず、お邪魔して申し訳なかったッス。あの……最後に握手してほしいッス」
鞍馬に右手を差し出す糸鋸。しかし、鞍馬は無視。
〈糸鋸〉「あ……あはははは」[右手を引っ込めて]「皆さん、頑張ってくださいッ。応援してるッス!」
浮かれた様子で学長室をあとにする糸鋸。途端に学長の表情が変わる。
〈目樽〉「どうした、みんな? 暗い顔をして」
笑顔に戻り、彼らの背中を叩く目樽。
〈目樽〉「4人とも、最近の成績がイマイチだということはわかっている。だが、過ぎてしまったことを悔やんでも仕方がない。最大の目標は世界大会だ。今度こそいい成績を収めてくれるものと私は信じている。大学の名誉のため、頑張ってくれ」
しかし皆、浮かない表情。
▼シーン4
深夜。大講堂の時計は3時を示している。大学内はひっそりと静まり返り、人の気配はまったくない。
ライト片手に広場をうろつく糸鋸。
〈糸鋸〉「1ヵ月後には世界大会ッス。彼らが火事に怯えることなく、ベストコンディションで試合に挑めるよう、自分が必ず連続放火魔を捕まえてみせるッス」[あちこちをライトで照らしながら]「学長は煙草の不始末が原因だと話してたッスが、絶対にそんなことはないッス。こんなにも頻繁に火事が起きるなんておかしいッス。きっと放火魔がいるに違いないッス。これは刑事の勘ッス」
とそのとき、暗闇の中を怪しい人影が駆け抜けていく。
〈糸鋸〉「怪しい人影ッス! 早速、見つけたッスよ。逮捕ッスぅ!」
人影を追いかける糸鋸。
〈糸鋸〉「そこの人! 無駄な抵抗はやめて立ち止まるッス!」
立ち止まる人影。ライトを向けると、それは大地翔。彼はジャージ姿。両手に水の入ったバケツを持っている。
〈大地〉「あ、刑事さん! ちょうどよかった。火事だよ、火事! トレーニングホールの裏手が燃えてるんだ。早く消し止めないと!」
〈糸鋸〉「え? またッスか?」
再び走り出す大地。慌ててあとを追う糸鋸。トレーニングホールと記された建物の裏へ。一面、大きなガラス窓。建物内には照明が灯っており、中の様子がはっきりとわかる(トレーニング機器が置いてある)。
窓の前が激しく燃えている。
〈糸鋸〉「わわわっ! これは大変ッス!」
バケツの水を火にかける大地。
〈大地〉「ぼおっとしてないで、刑事さんも早く水を!」
〈糸鋸〉「りょ、了解ッス!」
つづく
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