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逆転検事 ヤンマガ版未発表原稿05

燃え盛る逆転(5)

《登場人物》
・御剣怜侍(みつるぎ・れいじ)……検事局始まって以来の天才検事
・糸鋸圭介(いとのこぎり・けいすけ)……所轄署で殺人の初動捜査を担当している刑事、御剣とは旧知の仲
X鞍馬満天(くらま・まんてん)……体操選手、大学構内で遺体が発見される
・智槍啓太(ちやり・けいた)……競輪選手
・大地翔(だいち・かける)……陸上選手、深夜3時にボヤを見つけて消火活動
・河童沙良(かわどう・さら)……水泳選手
・目樽望(めだる・のぞむ)……学長

▼シーン7

 トレーニングホール内。様々なトレーニング機器が置いてある。壁の3面は鏡。茂みに面した1面は大きなガラス窓。カーテンは開いている。

〈御剣〉「ここは?」
〈糸鋸〉「学生のためのトレーニングルームッス。この大学の学生であれば、24時間、いつでも使っていいんだそうッス」
〈御剣〉「真夜中、被害者はここでトレーニングに励んでいたというのか?」
〈糸鋸〉「ほら、あそこ」

 ベンチプレスを指差す糸鋸。80キロのプレートを装着したバーベルがセットされている。そのそばにタオルとパーカー。パーカーの背面部分には《目樽体育大学体操部》と記されている。

〈糸鋸〉「現場はそのまま保存しておいたッス」
〈御剣〉[パーカーの胸もとを見て]「M.KURAMA」と刺繍されているな」
〈糸鋸〉「鞍馬満天――被害者のパーカーッス。おそらく、彼はここでトレーニングをしているとき、建物の外に怪しい人影を見つけたッス。何事かと外へ出て、火をつけたばかりの放火魔と鉢合わせしたんだと思われるッス」
〈御剣〉「顔を見られた放火魔は、口封じのために彼を殺した?」
〈糸鋸〉「そういうことッス。犯人は連続放火魔ッス!」
〈御剣〉「ふむ。貴様にしては、ずいぶんとまともな推理だな。だが……」
〈糸鋸〉「なにかひっかかるッスか?」
〈御剣〉「ああ。深夜3時のトレーニングというのが、どうにも腑に落ちない」
〈糸鋸〉「それには理由があるッス。実は昨晩、被害者を含めた4人の学生たちが、学長に招かれて会食をしたッス。会食は夜遅くまで続いたらしく、だから日課のトレーニングがそんな時間にずれ込んでしまったス」
〈御剣〉「なるほど。それで、事件の目撃者が皆無なのだな。警備員はどうした?」
〈糸鋸〉「なにも見ていないそうッス」
〈御剣〉「会食に呼ばれたという残りの3人には話を聞いたのか? 会食後、不審者を目撃しているかもしれない」
〈糸鋸〉「今すぐ連絡をとってみるッス。あ……3人のうちの1人――大地選手なら、学生会館に待たせてあるッス」
〈御剣〉「ほお……ずいぶんと手回しがいいな」
〈糸鋸〉「実は、大地選手は放火事件の第一発見者で、自分と一緒に火を消したッス。もしかしたら不審者を目撃している可能性もあると思って、呼んでおいたッス」

                           つづく



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