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禁止改訂後スタンダードの【オルゾフミッドレンジ】の調整とPTQ振り返り

 くろきです。先日行われたスタンダードの大会である$1,000 Cash GGtoor M:TG Arena Cup#1 (Set Championship Qualifier!)で優勝し、目標にしていたセットチャンピオンシップの権利を獲得することができました。禁止改訂の直後という練習時間の限られるタイミングでこのような望外の結果を出せたのは、主にデッキ調整の際にアドバイスをくださったAkioProsのコミュニティのメンバーのお陰です。

 今回は調整した【オルゾフミッドレンジ】についての思考や大会で実際に対戦した感想を記事にしました。もともとは配信で話すために作成したメモを有効活用する目的でこの記事を作成しているため、従来の記事ほどの分量やクオリティはありませんがご承知ください。

1. 禁止改訂からデッキ選択まで

 1/25(火)に禁止改訂があり、スタンダードでは《アールンドの天啓》,《ゼロ除算》,《不詳の安息地》の3枚が禁止カードに指定されました。

 対処の難しい必殺技を持つ【イゼット天啓】が構築不能となり、《ゼロ除算》の禁止によって青いデッキの妨害性能が落ちたことで、禁止改訂前と比べて低速なデッキが活躍できる環境へと変化します。

 改定後最初に目を付けたのは禁止改訂前からそれなりに結果を残し、禁止改訂の影響を全く受けなかったトレジャー系(《ヤスペラの歩哨》,《厚顔の無法者、マグダ》デッキ)と【オルゾフミッドレンジ】でした。強力なドロー呪文である《表現の反復》は依然として使用できるため、イゼットカラーのデッキも強力に思えましたが、短時間で構築を練ることが難しいと判断して断念します。

 禁止改訂発表の翌日にコミュニティ内で対戦してみた結果、【オルゾフミッドレンジ】がデッキパワーもあってよい感触を得られました。この時点で自分がこのデッキを使おうということはほぼ決めていました。

2.【オルゾフミッドレンジ】ってどんなデッキ?

今回使用したデッキリスト。(Decklist Viewerを使用しています)

 このデッキは白と黒のレア・神話レアのカードがふんだんに使われている典型的なミッドレンジデッキです。優秀なクリーチャーやプレインズウォーカーで盤面の有利を築き、扱いやすい除去で相手の動きを妨害します。特に《食肉鉤虐殺事件》は非常に強力なカードで、Xの値を調節してこちらのクリーチャーだけ残る盤面を築くことができたり、ライフルーズの効果で勝ち手段になる場合もあります。

 もともと【オルゾフミッドレンジ】はTeamUNITEに所属する森山選手が日本選手権2021 Season3で使用してTOP4への入賞を果たしたことで広まり、類似したタイプのものがMOなどの大会で使用されるようになりました。

 また本デッキを使い込んでいたへいかさんが詳しい解説記事を書いてくださっており、デッキの基本的な部分や回し方、採用されるカードの使用感などを知ることができます。ぜひこちらもご覧ください。

3. デッキ細部の調整

 本大会があった週末はCSの権利を得られる大会(PTQ)がもう1つあり、そのフォーマットはアルケミーであったため、スタンダードの練習にかけられる時間はほとんどありませんでした。しかし、ありがたいことに同コミュニティのヤミさんが【オルゾフミッドレンジ】を40マッチほど回してくれており、高い勝率を出していたことが確認できました。そのため大会直前に各カードの感触やサイドボーディング、環境の様子を聞いてデッキ細部を調整していきました。

調整点① 《輝かしい聖戦士、エーデリン》採用

 白の3マナクリーチャーとして破格の性能を持つ《輝かしい聖戦士、エーデリン》は【オルゾフミッドレンジ】においても様々なカードとシナジーを形成しています。《婚礼の発表》や《蜘蛛の女王、ロルス》のような複数のトークンを並べるカードによって打点を上げやすく、自身の能力で生成した人間トークンを《食肉鉤虐殺事件》でダメージに変換することもできるのです。

 このカードの採用に伴い、マナベースも調整しています。一般的な【オルゾフミッドレンジ】の構成では黒のダブルシンボルを持つカードが多いことから黒マナを白マナよりも優先したマナベースになっているのですが、本デッキでは白マナと黒マナを供給できる土地の枚数を均等にしています。

調整点② 対コントロール意識の《精鋭呪文縛り》採用

 《ゼロ除算》は禁止されたものの依然として青いコントロールデッキは環境に存在しているということをヤミさんから聞き、《強迫》に追加して対コントロール用のカードを採用することになります。《真っ白》,《パラディン・クラス》が最初に選択肢に上がりましたが、カードアドバンテージやテンポを失わず、2~3ターン目からクリーチャーを出してクロックをかけていくプランに最もマッチする《精鋭呪文縛り》を採用することに決めました。

 青いデッキのフィニッシャーとして使われる《船砕きの怪物》に特に有効である点も評価しています。9マナになった《船砕きの怪物》は呪文のバックアップ込みで唱えるのは難しく、《消失の詩句》で対応しやすくなります。

調整点③ 同型意識のプレインズウォーカー増量

 オルゾフ系のミッドレンジのミラーが増えることを見越して、ミラーマッチのキーとなるプレインズウォーカーをサイドに増量することにしました。具体的にはサイドに《蜘蛛の女王、ロルス》の3枚目、《情け無用のケイヤ》を採用しています。

 ミラーマッチでは盤面が膠着しやすく、そうなった場合はプレインズウォーカーでのリソースを稼ぐことが重要です。一方の場にのみプレインズウォーカーが残ってしまった場合は極端に有利不利が傾きます。

 《情け無用のケイヤ》は相手のプレインズウォーカーに対処することができ、+1の能力もクリーチャーを多用するデッキであるため有効に活用できます。-3能力は追放除去であるため《雪上の血痕》を使うデッキに強いことも魅力です。

調整点④ 【白単アグロ】意識のサイドカードをクリーチャーデッキ全般に有効なカードへ

 もともとは【白単アグロ】を意識した《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》や《危難の道》のようなカードをサイドボードに採用していました。しかし【白単アグロ】は《不詳の安息地》禁止によって大きく弱体化されていることから、あまり使用者がいないだろうと考えてこれらの枠を汎用的な除去に変更。

4. マッチアップやデッキの使用感

R1:【エスパーコントロール】〇〇
R2:【ティムールトレジャー】×〇〇
R3:【緑単アグロ】〇×〇
R4:【オルゾフミッドレンジ】(履修型) ×〇〇
R5:【オルゾフミッドレンジ】(履修型) ×〇〇
R6:【ティムールトレジャー】〇×〇
R7:【セレズニアランプ】〇××
R8:【ジャンドトレジャー】〇〇
R9:【イゼットコントロール】〇〇

SE
準々決勝【ボロスアグロ】〇〇
準決勝 【イゼットドラゴン】〇〇
決勝  【イゼットコントロール】〇〇

 結果としてはアグロからコントロールまでのすべての相手とバランスよくあたることとなりました。コントロールに対してガードを下げすぎず、また特定の相手を過剰に意識したサイドカード選択にならなかった点が非常によかったと感じています。

 大会を通して不運だと感じることが少なく、デッキの性質上プレイが難しくなる局面はほとんどありませんでした。大会が進むにつれてデッキの強度を信頼できるようになり、心が乱れず落ち着いたプレイができました。

対クリーチャーデッキ

R6の【ティムールトレジャー】

 トレジャー系や【緑単アグロ】などのクリーチャーデッキに対してはうまく全体除去が機能して拾うことのできたゲームが多く、非常に幸運でした。また警戒を持つ《輝かしい聖戦士、エーデリン》が優秀で、攻めながら《群れ率いの人狼》や《無謀な嵐探し》のようなパワー3以下のクリーチャーの攻撃を止める活躍をしました。

対【オルゾフミッドレンジ】(履修型)

R5の【オルゾフミッドレンジ】(履修型)

 履修型の【オルゾフミッドレンジ】相手のマッチが一番厳しく感じました。相手の《忘却の儀式》でこちらだけ容易にプレインズウォーカーを除去されてしまうためです。序盤に展開できるクリーチャーの質は勝っているので、一貫して早めに相手のライフを削ることを目指しました。履修型【オルゾフミッドレンジ】の構成はサイドボードに《軍団の天使》と講義カードが多く取られていることが特徴で、サイドボーディング後のデッキ調整が難しい傾向にあります。メインボードは1ゲームも取ることはできませんでしたが、サイドボーディング後からはこちらだけ《強迫》が4枚使える点が有効だったのか、サイドボーディング後に2ゲーム取る展開が2度続きました。履修型の【オルゾフミッドレンジ】はデッキ全体勝率が高く、今後注目したいデッキの1つです。

対青系コントロール

R9、決勝の【イゼットコントロール】

 青系のコントロールに対しては、4マッチ中1ゲームも落とすことなく非常に有利そうな印象を受けました。現在のコントロールデッキでは《婚礼の発表》に対する回答がなく、その他にも《魅せられた花婿、エドガー》やプレインズウォーカー、ミシュラランドなど対処に苦労するカードは多岐にわたります。《アールンドの天啓》禁止の影響で、コントロール側のフィニッシャーが《船砕きの怪物》,《くすぶる卵》などのパーマネントになったことで《消失の詩句》が腐らなくなった点も追い風です。

5. 大会での気づき

環境変化直後の大会は情報収集の価値が特に高い。

 今回の大会は禁止改訂の直後に開催されたものの、類似した構成の【オルゾフミッドレンジ】(履修型)や【ティムールトレジャー】,【エスパーコントロール】が他のデッキと比べて多かった印象を受けました。詳しくは調べられていないのですが、有名なプレイヤーや配信者等の影響があるのだと考えています。そのような流行を追うことができれば、デッキ選択の段階で他のプレイヤーよりも優位に立つことができるでしょう。このような環境が定まっていない大会に出場する際にはSNS等での情報収集、コミュニティでの情報交換の価値が一層高くなると感じました。

他の人の意見をなるべく聞いたほうがいい。

 当たり前といえば当たり前なのですが、デッキを回せば回すほど環境やデッキについての理解が深まります。しかし、回数をこなすことで得られる知見を自分の力だけで得ようとするのは非効率的です。特に複数のフォーマットに取り組む必要のある場合は1つのフォーマットに十分な時間を確保するのは難しいでしょう。そうした状況で大切になるのはコミュニティの存在だと実感しました。他の人の意見を聞くことでデッキを高い次元で洗練することができ、よりよいサイドボーディングを発見するきっかけになります。今回大会を通して自信をもってプレイできたのもこれが要因です。

6. 終わりに

 【オルゾフミッドレンジ】の調整については以上です。今回の結果は環境や運に恵まれたお陰であり、自分と関わりを持ってくださった方に非常に感謝しています。今年の目標の一つにしていたセットチャンピオンシップの権利を獲得することができ、まだ夢ではないかと疑うほど嬉しいです。しかし折角掴んだ貴重な機会なので、出場するだけで満足せずに悔いのないように取り組みたいと考えています。

 最後までお読みくださりありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします!


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