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物語をつくる服

アパレルの販売員をしていたり、バイヤーをしていると、「物語のある服」というワードをよく耳にする。デザインや色などの一見の魅力だけでなく、商品の付加価値としての物語だ。デザイナーがそのアイテムを生み出すまでの経緯だとか、どこで誰がどんな風に育てた素材を使っている、60年代のアイテムのリバイバル、などなどといった具合。販売員、特に中〜高単価な商品を扱っている店舗や個店の販売員は、服の物語を語れるように、と一度は言われたことがあるのではないかと思う。

個人的な感覚だが、服が持つ物語は、どちらかというと女性よりも男性に反応が良い。うんちくや希少価値に魅力を感じ、購買まで繋がるのは男性が多い気がする。女性でももちろん、その部分の付加価値を大切にしている人はいるが、どちらかというと、色やデザインが自分好みか、自分に似合うか、今の自分の気分と合うか、その比重が大きいように思う。これは、私自身もそうなのだが、元々物語がある服よりも、自分がそれを買って身につけることで、これからどういう物語が生まれるか、を想像する。例えば、このスーツを買ったら、凛とした印象になって取引先への印象が良くなりそう、とか、気になってる人とのデートにこのワンピースを着れば、自分の魅力が映えて、関係がうまくいくかも…。そうなると、まず服を買うにあたって、その服を着たいちょっと特別な出来事、場所が必要になるのだが、それはまた別の話なので、今回はさて置いておく。

この、これからの物語がつくれる服というのが、結構重要だと思っていて、どんなに素敵な商品でも、購入後の物語が想像できないと、ただ素敵ね、という感想で終わってしまい、購入まで結びつき辛い。そのため、その服のバックグラウンドや機能性などの魅力はもちろん、その商品を身につけることで、自分のこれからの物語に新たな選択肢が増える、とか、ちょっと大げさかもしれないが、新しい道が拓けそう、ということを売り手と買い手で一緒に想像できることが、このアイテムを私のクローゼットに迎え入れようかな、という気持ちにさせてくれる。

デザイナーやブランドが大切に紡いできた物語を、誰かが手にとったそのあとも紡ぎ続けられる服。みんながそういう気持ちで、自分だけの特別な一着を見つけ、大切にできたらいいなと思う。


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yuki

学生時代フランスに傾倒。 長年身を置いたアパレル業界から離れ、今は海外向けのサブスクリプションサービスのプランナーをしています。好きなことは野球、ファッション、食、美術史、フランス、文化史、幅広く資金不足。日々のあれこれとファッションのこと。人生を模索するアラサー。
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