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笠松競馬の運営監視委員会は運営を「監視」できるのか?

笠松競馬が再び揺れている。
前回は調教師・騎手の馬券購入、脱税であったが、今回はきゅう務関係者(調教師・騎手・きゅう務員などを指していると思われる)の不申告である。

第三者委員会による調査はとっくに終了している。この際の報告書には次のように書いてある。

(3)税務関係資料
 笠松競馬きゅう舎関係者110名(調教師19名、騎手13名、きゅう務員78名)を対象として、過去7年分(平成25年分から令和元年分)の所得税の確定(修正)申告書類の写し、住所地の市町村長が発行する過去5年分(平成27年分から令和元年分)の住民税の所得課税証明書、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)第13条第1項の規定(以下「開示請求制度」という。)に基づき税務署から開示を受けた過去7年分(平成25年分から令和元年分)の所得税の確定(修正)申告書の提出を求め、収集したこれらの税務資料により調査対象者の所得の内容の確認・分析をした。
 税務関係資料の調査期間は、所得税については平成25年から令和元年分、住民税については平成27年から令和元年分とした。これらは、所得税の修正申告の遡及期限と住民税の所得課税証明書の交付期間に対応したものである。

既に修正申告があったと第三者委員会の報告書で触れられており、処罰の対象となっていない者は以下の通りである。(なお、詳細などに関しては「悪質とまで認められなかった者の修正申告額については、プライバシーに配慮して記載しなかった。」と明記されている)

D調教師について
 令和2年に、自ら、平成29年から令和元年までの社会保険の補助金とボーナス積立を収入に入れていなかった申告の誤りに気づき、所得税の修正申告をした。


F調教師について
 F調教師は、令和元年に、名古屋国税局の指摘を受けて修正申告をした。
 F調教師の妻が、自身の収入とみられる金員を同調教師名義の口座に入金しており、同妻において当該報酬について申告しなければならい所得であるとの誤った認識をしていた。
 F調教師自身は、税務申告を税理士に依頼して行っており、上記の妻の操作について知らなかった。


H調教師について
 H調教師は、平成31年1月に岐阜南税務署の指摘を受けて修正申告をした。
 H調教師は、平成25年から平成30年までの間にもらった馬主からの謝礼や自身の趣味に関する収益について、申告しなければならない収入との認識がなく、申告していなかった。

さらに、きゅう務員については1名、雑所得(公的年金等以外)が190万4240円の不申告が確認されたと書かれているが、その内容も処分についても全く触れられておらず、騎手については、馬券購入に関連した所得を修正申告した者についてという項目に4名の金額が載っている程度である。

第三者委員会の報告を受けた記者会見における質疑応答では

「私たちとしては第三者委員会という外部有識者の力を借りてですね、調査はできることは精一杯やったということでございます。」(1:52:05)
「きゅう務員に関しても面談調査、全て第三者委員会にやってもらいましたし、税務資料も集めて、チェックして頂いておりまして、そういうことは、不適切な事案はなかったという第三者委員会の報告でございます」(1:53:45辺りから)

と答えらえれている。

これは第三者委員会では、きゅう務員を含むきゅう舎関係者110名(調教師19名、騎手13名、きゅう務員78名)全員に税務資料の提出もさせ、面談調査も行っており、その最終報告が既に公開されている報告書ということになる。
つまり、結果論として税理士という専門家を二人も抱えた第三者委員会は十二分に機能していなかったということに他ならない。

前回のnoteで、第三者委員会のメンバーと調教師に不適切な関係があったのではないかという疑義についても述べたが、この一件のみを取り上げても、既に第三者委員会のメンバーの資質そのものが問われなければならない事態ではないかと思われるところ、岐阜県地方競馬組合が組織体制の強化のために設置した、運営監視委員会のメンバーを再確認したい。

運営監視委員会の設置について

笠松競馬における不適切事案を受け、組織体制の強化のため、下記のとおり運営監視委員会を設置し、昨日5月18日(火)に第1回運営監視委員会を開催いたしましたのでお知らせします。

■設置日
令和3年5月18日(火)

■委員構成
臼井 俊治 弁護士(U.I 総合法律事務所)
中西 敏夫 弁護士(弁護士法人森川・鈴木法律事務所)
丹下 忠彰 税理士(華陽税理士法人)
間宮 雄次 税理士(税理士法人 TAMIYA)
林 正子 岐阜大学名誉教授
山田 忠正 笠松町町内会連合会長

■設置目的、役割
公正かつ公平な運営のため、第三者的な視点から監視するとともに、必要な指導、助言及び提言を行う。
※委員個人へのお問い合わせ等は受け付けておりませんので、ご了承ください。

令和3年5月19日

岐阜県地方競馬組合 管理者

これを見る限り、委員構成は第三者委員会の4名に林正子岐阜大学名誉教授(文学博士)と山田忠正笠松町町内会連合会長を加えた6名体制であると発表されている。

資質に疑問符を付けざるを得ない第三者委員会のメンバーに文学博士と町内会連合会長。第三者的な視点、競馬などの専門知識を一切排除し、一般的な見地から助言、提言を行うという意味では文学博士が入るのも一定の理解ができるが、監視となるといかがなものだろうか?例えば、問題になっている名義貸しなどの行為について、その問題点・見抜き方などが理解できているだろうか?
さらに、第三者委員会のメンバーが監視「できなかった」のは現状で明らかと言えるので、この中で監視ができるとすれば町内会連合会長のみではないか?であれば、このメンバーで本当に運営を「監視」できるのか?

笠松競馬が早期に膿を出し切って、日本一クリーンな競馬場として生まれ変わるために、もう一度、かなり広い意味で大ナタを振るわなければいけないのではないかと強く感じる。

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