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お酒も飲めなくなった日②

恐怖におののいていたその日の夜。

ふと気づくと部屋は真っ暗になりつつありました。もうそろそろ夜が来る。そんな感じがして自分がそれなりに寝ていたんだなとわかりました。

下から子供たちの声がしはじめました。耳を澄まして聞いてみるとどうやら夕飯をどうするのか?という議論中のようです。

長女が冷蔵庫を見回し何かを作ると決めたようです。ひとしきりご飯を作る音がしていて誰もわたしを呼ぶこともなくただ台所の音がしていました。

7時半を回る頃、夫が帰宅しました。そして「おかえりー!今日はねぇねがつくったグラタンだよー」の声になるほど、今日はグラタンを作ったんだとわかりました。

台所はしっちゃかめっちゃかでしたがグツグツとグラタンが煮えていていい匂い。「お母さんのもある。食べる?」と聞かれて少しもらうことに。

グラタンはチキングラタンでした。鶏肉と玉ねぎとマカロニとキノコとチーズ。いい塩梅にチーズが溶けていてとても美味しそう。病み上がりで数口食べるのがやっと。でも不思議なもので嬉しくなります。

あの子が、こんなに美味しいもの作れるようになったんだなぁって。ご飯を作って食べさせる、その当たり前のなかに子供たちがやがて自分で作って食べる、という成長があることを思いもしない自分がいました。

いつもいつも、私が作らないと食べられない。って思い込んでいたんだなぁって。私が作らないと誰もご飯にありつけないなんて、とてつもなく傲慢だったんだなぁって。気付いて。

誰かしらが危機に陥れば誰かが助ける。出来ることをする。当たり前だけど、そんなことが嬉しい。だから、わたしはもっと楽に生きてもいいと思えた。私一人が肩肘をはって背負おうとしなくても世界は回るし、なんとかなる。そのことがほんとはわかっていたけど居場所がなくなる気がして納得したくない自分がいたのでしょう。でももうそんなに気負わなくても生きていける。おもいっきり風邪引いても子供たちはなんとかするしできる。そんなことがわかる一方でこの絶不調では楽しみのお酒も飲めず、飲める気すらしない。ただただ寝てたいし、超絶すっぱりしたものしか食べたくない。わけのわからない胃のムカムカをレモンサワーで癒したい。が、それも今は叶わない。

ムカムカした胃をなだめつつも、子供たちの成長に触れて嬉しい夜でもあった。そして完全に治ったのはもっと先の話。


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