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運命が変わり、運命を変え、そして運命を作る。ロコ・ソラーレ夢の先へ。

以前の記事にも書きましたが、今回の五輪ではカーリングの面白さに完全に気付いてしまい、感情移入するレベルで応援しています。

どうも、同じようにカーリングに注目している人は多いようで、この記事にもいつもよりも多くの「いいね」をいただいています。読んでいただいた方、ありがとうございます!

そんなカーリング日本代表は、昨日の準決勝スイス戦に勝利し、史上初の五輪決勝進出を決めました。つまり、銀メダル以上は確定したというわけですね。前日に負けた相手に見事なリベンジマッチでした。

運命が "変わった日"

17日に行われたラウンドロビン最終戦のスイスとの試合。前半こそ、一時リードを奪う展開になったものの、ロコ・ソラーレはアイスを読み切れなかったのか、次第に差を広げられていきました。

最終的には、第10エンド途中で日本がコンシードを宣言し、4-8 で敗戦。試合後のインタビューで、スキップの藤澤五月選手が「なんでこんなに下手なんだろう」とコメントしたのにも表れていたように、持ち前のショットの安定感がなく、チャンスをものにしきれず、さらにはスイスの的確なショットと戦略の前に屈したという印象でした。

試合終了直後には同時刻に行われていた他の試合の結果次第では、準決勝進出の可能性が残されていました。しかし、インタビューでそのことを聞かれたサードの吉田知那美選手は「ん?」と怪訝な表情を見せた後、「うーん… LSD が良くないので、上がらないと思います」と力無げに答えました。

【LSD(ラスト・ストーン・ドロー)】
各試合前に、先攻後攻を決めるために、各チームから任意の2選手を選び、投じるストーンのこと。各選手が、時計回りと反時計回りで1投ずつ(計2投)投じ、ハウス中心からの合計距離が短いチームが先攻後攻の選択権を得ることができる。

しかし、そんなロコ・ソラーレを神様は見捨ててはいませんでした。試合終了から約20分後、スウェーデンと戦っていた韓国が試合に敗れ、勝敗数は日本・英国・カナダが5勝4敗で並びました。この場合、DSC の結果で順位が決まり、カナダに僅か「9.44cm」の差で勝っていた日本が準決勝進出を決めたのです。

【DSC(ドロー・ショット・チャレンジ)】
ラウンドロビン9試合で投じた計18投の LSD の結果から、最も悪い記録(ハウスの中心から遠い記録)とその次に悪い記録の2投分を除き、算出した平均値。試合途中でコンシード(試合途中で負けを認めること)があるカーリングでは、他のスポーツのように得失点差で優劣をつけられず、直接対決の戦績でも優劣がつかない場合に、DSC を用いて順位を決定する。

2021年9月に行われた日本代表決定戦の際に、知那美選手が残した名言「運命を変えよう」と呼応するかのように、"運命が変わった" 瞬間 でした。

運命を "変えた日"

前日、悔し涙から一転、嬉し涙へと運命が変わったロコ・ソラーレ。準決勝の相手は、前日に敗北を喫したスイスでした。

準決勝進出決定後に、喜びの中インタビューに答えたセカンドの鈴木夕湖選手が「今世紀最大くらいのサプライズで驚いているんですけど。本当にもう終わったと思っていたので。神様が与えてくれたチャンスだと思って、あと2試合はチームの力を全部出し切って、私たちらしさ120%でいきたいと思います」と語っていたように、吹っ切れた様子で笑顔も見せるメンバーたちの姿が印象的だった中で試合開始。

日本先攻の第1エンドは、お互いに得点を取らないブランクエンド。続く第2エンドから第4エンドまでは互いに1点を取らされるという拮抗した展開。

そして日本の後攻で迎えた第5エンド、この試合のハイライトが待っていました。的確にガードストーンを配置するなどし、相手に難しいショットを強いることに成功した日本。スイーパーの懸命な働きもあり、優勢な状況で迎えたスキップ・五月選手が連続でダブルテークアウトを演じ、一挙4点のビッグエンドになりました。

勢いづいた日本は、続く第6エンドも1点のスチール(先攻チームが得点を挙げること)に成功するものの、第7エンドでは反対に3点のビッグエンドを演じられる展開になりました(この時点で日本6-5スイス)

しかし、知那美選手が「4位上がりの私たちの最大のアドバンテージはラウンドロビンで他の3チームよりもたくさんのミス、たくさんの劣勢を経験できたので、私達は3点取られることも4点取られることも既に経験していたので、特にそこに関しては3点取られたって驚くことなく、1点アップなんだっていうふうな気持ちで冷静にエンドの展開を作れたのがすごく大きかったなと思います」と試合後に語っていたように、彼女たちは至って冷静でした。

コミュニケーションの質も落とすことなく、時折笑顔も見せながら、この試合をどこか楽しんでいる様子すら見られました。

そして、この日のショット成功率が驚異の99%というリードの吉田夕梨花選手が、スイスのガードを壊すウィックをことごとく決めるなど、相手に流れを渡さないままに、第8エンド、第9エンドは互いに1点を取り合い迎えた最終エンド。

夕梨花選手のウィックはここでも健在。続く夕湖選手もスイスにガードを作らせないショットを決め続け、知那美選手のナイスショットから、最後は五月選手が落ち着いてドローショットを決めて1点を挙げ試合終了。

この瞬間、日本カーリング史上初の五輪準決勝進出、銀メダル以上確定となりました。前日の敗戦を完全にポジティブ要素に変え、自分たちの手で "運命を変えた" 瞬間でした。

残るは、"運命を作る" だけ。

そんな劇的ドラマを生み出したロコ・ソラーレの戦いも、泣いても笑っても、勝っても負けても残り1試合。

その試合こそ、知那美選手が「正直な話、どんなに良質な睡眠をとっても五輪のゴールドメダルゲームを戦う夢なんて、寝てみる夢でも見たことなかった」と表現した戦い。相手は4年前の平昌五輪で銅メダルを争った相手イギリスです。

ーー 運命が変わり、運命を変え、運命を作る

今の彼女たちにはその力が溢れていると思っているので、熱く熱く応援したいと思っています。いつも通り、自分たちを見失わず、明るく、挑めればきっと最高の栄冠が待っていることでしょう。


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