異世界の名のもとに!! ♯7
「あの、早くそこを退いてくれます?」
美鈴はいきなりそう言った。
どうしたのだろうと、美鈴の向いている方向を見ると、その少女が寝起きの眼で美鈴の方を向いた。
「どうしてですか?」
「どうして、じゃないです。あなたがお兄ちゃんの傍に居るのがおかしいんですぅ!」
ありゃぁ。こりゃまた面倒な事になりそうだ。
「私、お兄様のお供をする事にしましたので、傍にいないといけません」
「どうしてそうなるんですか!?」
「私は、お兄様の優しさに憧れました!」
ボクに優しさなんて無いような気がするが
「確かにお兄ちゃんは優しい。…ですが、私からお兄ちゃんを奪う理由にはなりません!」
「あら、私はなにも奪うなんて言ってませんよ。ただ、妹の座を少し譲っていただこうかと、そう思っているだけです」
「完璧奪ってるじゃないですかそれっ!!」
二人ともアニメによくあるお互い睨みあってバチバチ鳴ってる感じだ。う~ん。困ったな。早くギルドとか行ってギルドの人に『これは、まさかっ!?』みたいな展開が待ち遠しいんだけどなぁ。流石にこのままってのも良くないし、う~ん。 そうだ
「ボクは歓迎だよ。キミのような優しく、愛嬌がある娘こがいると助かる!」
うん。悪くないんじゃない? ……たぶん。
「ありがとうございます! 大好きです!!」
ん? ん?? いや聞こえなかった訳じゃない。脳が理解を拒んだんだ。だい…す……き?
いや、ボクの事じゃないだろ 思い込みも激しいところだ。と、美鈴の方を見ると、いや視ると目が死んでいる。ん?ハイライトがOFFだけど。
「カンゲイ? アイキョウ? へへッ。…だ……いす…き? ハハハッ」
いや怖っ! 豹変した!?
そ、そうだ。美鈴の頬に触れると。
「っは。お兄ちゃん? どうしたんですか!?
私の頬に何かついてますか!? …恥ずかしいですお兄ちゃん///」
「私の前でイチャイチャなんて良い度胸ですね」
っは、と ボクは手を頬から離した。
「まぁ、今回はこのぐらいにして。お兄様、今日は何処か行ったりするのですか?」
「お、おぉそうだった。今日はギルドに行こうかと思っているよ」
「では、勿論私も同行しますよ。お兄様に傍にいてもいいと言われたので」
その娘は、美鈴の方を向いてそう言った。
「そういや、キミの名前は?」
ボクはその娘に聞いた。
「名乗り忘れていましたね。仕方ありません、恋をしてしまったのですから!」
何の事かよくわからないが、明らかに美鈴の目がまたもやハイライトOFF状態。
「私はクル・ヴァイライト・ディクリートと申します♪ クルとお呼び下さい、お兄様。」
そのクルという娘はベッドから降りて、くるりとボクの方に体を向け、スカートの裾を少したくしあげ、まるで御嬢様のような風貌を醸し出している。ボクはその様子に見惚れていた、のかもしれない。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、オニイチャン」
我に戻って美鈴を見ると、そう言っていた。面倒な事になりそうな予感が…。
……いや、案外美鈴のこの表情も良いんじゃないか? っは?! ボクは何を思っているんだ。まったく、アニメの見すぎだな。
きっと、美鈴はそんなのじゃない。
「では、行きますよ お兄様!」
「はいはーい」
ボクはボーっとしている美鈴の手を引っ張って宿を後にした。
「へへへ、お兄ちゃんは、渡さないよ? 絶対に。 へへ…」
小説(物語)を書いている者です。