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【随筆/まくらのそうし】 川魚

 漁業権が要らない魚は、ハヤやウグイ、オイカワなどの類いである。

 いわゆる雑魚というやつで、竹に糸、釣り針をつけたくらいで釣れてしまうが、これがひどく美味いのである。

 夏、子供が川で遊ぶのを、水しぶきの来ぬ方に、その辺りの虫でも拾い、ぽちゃんと投げればすぐに釣れ、バーベキューの要領で焼いてしまえば、下手なアユやアメゴは敵わない、それほどの味である。

 特に、アブラハヤは脂が乗って、オイカワのオスが釣れれば美しく、鯉かと思うほどの大きなウグイは、開いて塩の水に漬け、干せば干物のできあがり。

 川魚の干物というのは、なかなか見ないものではあるが、これは海の魚よりくどくなく、川の清い流れのせいか、不思議と香りの良いものだ。

 川を豊かに保つには、山が豊かでなければならず、山が豊かになるためには、人が手を入れねばならぬ。

 杉植林の山ばかり、作ってしまったいまとなれば。

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