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武富健治先生『古代戦士ハニワット』勝手に応援企画(11)コラム➉:第2部最新48話「エピローグⅡ 旅立ち」について

第1節 はじめに

 このエッセイは、武富健治『古代戦士ハニワット』第2部第48話「エピローグⅡ 旅立ち」(『漫画アクション』№21.2022.11.1)のネタバレしか存在しません。まだ最新話を読んでいない方、特にネタバレを避けたい方は、これ以上読み進めないでください。

 また、このエッセイには、ぼく個人の『ハニワット』へのかかわり、武富健治先生との付き合いに関する内容も含まれています。一読者の作品や作者とのかかわりを読みたくない方も、これ以上読み進めないでください。

 それでは、ここからは以上の二点を気にしない方だと思いますので、遠慮なく書かせていただきます。

第2節 拝啓 武富健治先生1

 拝啓 武富健治先生

 『ハニワット』第2部「妙義横川&庄内飛鳥島編」のラストエピソード、第48話「エピソードⅡ 旅立ち」を拝読致しました。最高です。最高です。最高です。

 このエッセイは『ハニワット』の連載続行にすこしでも寄与できればと、2021年8月20日に始め、約1年あまり断続的に書き続けてきました。第1回目の書き出しは次のようなものでした。

 武富健治先生に『古代戦士ハニワット』の連載を続けていただくために、現在『ハニワット小事典(仮)』を作成しています。素晴らしいマンガをより楽しめることが出来るように(願望)、ストーリー篇、キャラクター篇、用語集、年表、コラムなどをまとめています。要望があれば無料でPDF配布をしたいと思ってますが、何せ時間がかかります。そこで、その一部を公開してゆくことにきめました。絵もつけたいのですが、自分で描くとなると時間もかかるし、手書きしかできないし、下手だし(笑)。どなたかいい案ください(本気)。

 結局、個人で『ハニワット小事典(仮)』は実現できなくて、『ハニワットまるごと』という同人誌に参加させていただくことにより、現実化しそうです。この最初のエッセイを書いた時の個人的な想い出は、武富先生が「easygoaさんとは付き合いが長いから、noteであれば、自分の絵を使ってもいいですよ」とおっしゃっていただいたことです。何度も書いたり、語ったりしていることですが、ぼくが武富先生にお会いしたのは、2019年なので、それほど付き合いが長いわけではありません。しかも、その時にサインしていていただいたわずか数分だけしか話したことがなく、その後はゲンロンカフェでもう一度、ご挨拶しただけ。きちんとお話したのは2021年10月1日、マンガナイトBOOKSの原画展初日のことで、いまからわずか1年前にすぎません。最初のエッセイを書いた時は、ほとんどTwitter上のお付き合いしかなかったのに、絵を使わせてくださるという破格の申し出に驚きと共に嬉しさでいっぱいでした。

 結局、武富先生の絵を使ったのは、「久那土凛」の「後篇」のヘッダーだけで、あれは複製原画を撮影して使わせていただきました。あの時、絵を描くのが本当にしんどくて助けられました。ありがとうございます。

 いい加減最新話の話を書かなければなりませんね。節を改めます。

第3節 拝啓 武富健治先生2

 最新第48話、及び前回の第47話のエピソードは、実はひやひやでした。その理由は、8月27日5時40分にTwitterでDMを頂いたからです。その内容は、

(以前略)長野の蚩尤発生から、ダブル蚩尤収め終了までって、全部で何日間でしたっけ???ナレーションに書こうと思いまして…。原稿完成まで差し替え可能なので急ぎませんが、教えて頂けたら助かります!!(以下略)

でした。ぼくの作成したハニワット・タイムラインは、すでに武富先生に何度かお渡ししていたので、改めての質問に緊張しました。これは間違いが許されないやつだ!(笑)。調べ直しましたよ!しかもなるべく簡単に、武富先生が検証できるヴァージョンを作成しました(笑)。第47話には、凛が同じ場所に留まれないという問題で、凛の戸隠神宮の滞在期間が書かれていて、びっくりしました。最終話だけかと思っていたのです。

 そして最終第48話では「ホデリ(火照り=燃え始め)の十日間」というナレーションが入ります。これは第1部から第2部の旧出羽三山の噴火までを指す言葉。これか!!!最初のタイムライン(第1版)を作成したのは、2021年11月23日で、これは武富先生からも欲しいと言っていただいいたので、即日送らせていただいた。これは単行本第8巻の修正のためでした(結果的には第8巻は修正されていません)。それから約1年。タイムラインは「ホデリの十日間」に結実しました。冷や汗をかくと同時に、ほっとしました。ちなみに、上記のDMが来た段階ではぼくは旧出羽三山が噴火するとは知らなかったので「ダブル蚩尤収め」まで9日間でした。洒落のつもりで、武富先生に送った最新版には副題を「始まりの9日間」(8月31日送付、ぼくのは『風の谷のナウシカ』の「火の七日間」のパクリです)と書いたのですが、武富先生の返信は次の通りです。

似たような記述がエピローグのラストナレーションに入ります(笑)正式名称はお楽しみに!!

 1日多い!!(笑)。タイムライン作成してて良かった。『ハニワット』にささやかでも役に立って良かった。もうそれだけです…。ただ、今でもぼくのタイムラインに間違いがないのか、ひやひやしております(苦笑)。間違っていたら『ハニワット』を愛するみなさん、申し訳ない!そして武富先生、「ホデリの十日間」最高でした。

第4節 拝啓 武富健治先生3

 最終第48話ではっとしたエピソード。それは「ユッコ」…。これも第48話のゲラチェック段階で武富先生からDM(10月5日)が来ました(これ想い出というよりも暴露話になっていて、怖くなってきた…)。依頼内容は、戸隠神宮の巫女の名前に関するもので、今回「ユッコ」と名づけられた女性は以前に名前をつけていたのか、戸隠の巫女たちの名前でマイナーなものがあったら教えて欲しいというものでした。このDMは生々しいので引用できない(苦笑)。これは現在作成中の『ハニワット事典』の検索機能を使って調べました。唯一登場するマイナーな巫女の名前は「ユッコ」で、今回の「ユッコ」と同一人物なのか自信がない、と返信しました。因みに、今回の「ユッコ」の登場回は第5巻第6話(5.2.6)に登場します。そして「ユッコ」という名前の巫女の登場は、第3巻第16話(3.1.16)です。探してみてください。武富先生の返信は、

これをユッコとします!!!

でした(苦笑)。『ハニワット』を愛する読者のみなさま。夢を壊して申し訳ありません…。彼女は「ユッコ」なんです。武富先生が決めたんですから。武富先生、ぼくは一生「ユッコ」を応援し続けます。山形からくる新入りヤンキー女との交流を楽しみにしています!

第5節 拝啓 武富健治先生4

 「ホデリの十日間」「ユッコ」とは別の意味で、感動してしまったエピソードは、コトが天硯坊に置いておいた「コンセントに差してたスマホの充電器‼」です。

 同人誌に武富先生のロングインタヴューの掲載が決まり、2022年1月から合計三回、先生のご自宅にインタヴューにうかがうことになりました。機材は何もないので、ICレコーダーとスマホでの収録。とにかく先生が京都に引っ越す前に収録を終えたかったのですが、結局、最後の収録はつい先日の10月8日でした。漫画家を肩書に持つ方の自宅に行く人生になるとはまったく想像外でしたが、一生の記念になりました。二人で毎回6時間も収録したのは、とても良い記憶です。コトのエピソードは、ぼくのために描いてくださったわけでは無いとは思っていますが、毎回、ぼくは先生のご自宅のコンセントにスマホの充電器を指したまま帰る失態!(苦笑)。つい先日も、先生のご自宅のコンセントに差したまま帰宅し、DMで確認をいただきました。コトの充電器のエピソード、ぼくは忘れないし、ちょっぴり泣けました。おそらく『ハニワット』には、先生がかかわった読者たちとの交流にヒントを得たエピソードがあちこちに散りばめられてるのではないでしょうか?晴れ女のエピソードはyuukiさん、ディレッタントの親父はペリメニさん、シトロエンのタイプHの車に詳しい巫女シマはkaninchentanzさん、奴奈姫神社・糸魚川(これは実在の地名ですかね…)はけさん、コトがオグナに「イヤ」というエピソードは…を思い出します。これらひとつひとつが物語に溶け込みながらも星屑のように輝いている。『ハニワット』はそんな作り方なのかな、と思っています。

第6節 拝啓 武富健治先生5

 第47話が深刻なテーマが多かった分(『ハニワット』唯一、雨のシーン)、第48話は明るい物語になりました(第47話と続きで読むと、今回が晴れであることがより強調されます)。軽めのギャグシーンも多く、いきなり始まるコトとオグナのやり取りは、第1部第1話以来のコメディーリリーフとしてのコトを見せてもらいました。クチャっと丸まったコトの靴下も可愛い。一転して、四年前の高千穂合宿に関する記憶を取り戻す凛に、ほろっとさせられます。この辺りの緩急の塩梅が武富演出の妙味ですね。続く晴れ女・晴れ男のエピソードで、賑やかなムードに転じて、陣九郎の「本当は…私も同行しよと思っていたんだ」発言!ドン引き柔里の「⁉はああっ⁉」もいいですね。ここでも一転して、初老を迎えはじめた陣九郎の苦しみ、弱さに急展開(柔里、話は最後まで聞こう)。

 自宅で凛と柔里の絵葉書を受け取り、水谷家にかけこむ陣九郎、「息子」仁と一緒に「カエルの声でも聴きながら一服しないか」と、声をかける陣九郎、孫に髭を引っ張られる陣九郎。そんな幸せな生活も期待しています。

 伸ちゃんも久しぶりに登場しましたね(6.2.11)。凛にこごみを渡す大役です。次世代の埴輪徒たちも、子供の頃、真具土の凛に稽古をつけてもらった記憶を、さらにその次の世代に受け渡してゆくのではないでしょうか?そんな未来を想像するエピソードになりました。「ワラビだっけ?」「フキじゃね?」「こごみだろ!」。管理人のおじさんの葬儀でも、みんな酒を酌み交わしながら「こごみ問答」を懐かしそうに語るかもしれませんね。

第7節 拝啓 武富健治先生6

 もうモルカーでいいじゃないですか?(笑)みんな「モルコー」って読んじゃいますから(笑)。ただ、キャンピングカーの登場は意外でした。どういう旅になるのか、ちょっと「大人の修学旅行」みたいな感じですよね。

 ここでもコトの魅力全開で、顔の半分は口ですよね(時々上の歯があるものかわいい)。コトは決して明るい場面が多いわけではないのに、登場すると物語をさらってゆく力をもってます。まさにピノコ!オグナとコトのコンビは、B・Jとピノコの感じにも似てますよね。冷静なB・Jがピノコの前ではたじたじになる感じとか。いつかコトのピンチをオグナが救う展開も期待したいですね。

 それはともかく、コトは「井中門丁のトンデモ委員会」の古参感にあふれていて、放浪の旅、大丈夫でしょうか?このままハイテンションのままで旅をしていたら、口から頭蓋骨でちゃいそう(小山田いく『すくらっぷブック』のギャクです。『週刊少年チャンピオン』ネタが多いですね)。コトの「生」発言を見ると、彼女は丁さんの地方の長期ロケには同行したことないようです。

 その他にも今野の「キモい」発言と、今回はかなり、男性キャラクターはドン引きされる展開多いですね。個人的にはランドセル程度で、ほっとしています。

 そして、最後の部分『ハニワット』という物語の語り手が、かなり前景に登場します。ちょっと『火の鳥 未来編』を思い浮かべました。とくに「ここでも」。素敵な謎であり、青空に響きわたるような余韻でした。

第8節 拝啓 武富健治先生7

 最後に凛と柔里について語り、第2部の完結をお祝いさせてください。石段上がってきた柔里が、最初に語りかけるのがコトだというのが、いいですね。本当は凛の体調が心配なのに、中宮の前庭にいることがわかったから大きな心配はいらないとふんで、照れ隠しにコトに話しかけたのでしょう。

 柔里「おはよう!よく眠れた…?」。凛「ああ…包帯ありがとな」(「エピソードⅡ 旅立ち」)

 このくらいの距離感がいいですね。その後に、陣九郎の「晴れ女検定」で、二人一緒に手をあげるシーンも微笑ましい。この二つのシーンがあるから、みんなで石段を下りるシーンでは、どうしても凛と柔里に目がいきますね。このシーンに添えた剱持さんのキャッチコピーも最高でした。

 引き寄せた晴天が 旅人の背を押す。 さあ、さすらおう。(「エピソードⅡ 旅立ち」)

 粋ですね。

 そして丁から自転車をプレゼンとされたシーンでは、二人とも、

!! (「エピソードⅡ 旅立ち」)

ですから。これは「解藁の姉妹」(5.2.4)のラストエピソード、二人で夜道を歩くシーンに接続されて、見事に伏線回収しましたね!!きっと、凛と柔里の脳裏には、あの夜道の会話が甦ってきたのでしょうね。

 柔里「ねえ…旅って…自転車もありかな?」。凛「…考えたこともなかったな… …………ありかもな…」(「解藁の姉妹」5.2.4)

 『ハニワット』はドラマパートの多い物語ではないし、ドラマパートがあったとしても、必ずしもメインキャラクターだけに頁を割いていません。凛と柔里の物語でさえ少ないのです。それにもかかわらず…。第2部の完結で「!!」で、「解藁の姉妹」のエピソードを回収してしまうとは。こういうさり気なさを読むのが、『ハニワット』の醍醐味ですね。

 「柔里編」では、下記のように「解藁の姉妹」をまとめましたが、「エピソードⅡ 旅立ち」では、柔里の解放感が全開になります(おそらく陣九郎から離れられたことも一因でしょう!冗談です)。

 そしていよいよ「解藁の姉妹」。このエピソードは『ハニワット』屈指のラブコメなのですが、柔里の解放の物語でもあります。(「柔里編」)

 柔里の解放感を示すコマ。凛と柔里が自転車で坂道を下るあのシーンです。このシーン!描かれている全キャラクターが希望に満ちています。そして柔里の躍動感にあふれた美しさ!アシスタントさんの自転車が上手すぎるからですね!(冗談です!!)。おそらく、武富先生が希望の物語として、第2部まで描き上げたからではないでしょうか!!その希望を柔里に託して。

 第1部「長野善光寺編」は柔里と仁の別れ、第2部「妙義横川&庄内飛鳥島編」は柔里が凛と共に生きることを決意する物語です。(「柔里編」)

 これも「柔里編」で書いた文章なのです。結局、第2部は、柔里が凛と共に生きることを決意し、解放され、希望に満ちて凛と共に旅立つ物語だったようです。実にシンプルであり、キャラクターが動く/動かすというエンターテイメントの基本に忠実な物語。あれほど「難解」な『わたしは慎吾』が、最後まで読者を引き離さないのも、マリンと悟の友情とも恋愛ともいえない感情を描ききったからでしょう。とすれば、第3部・第4部は凛が希望に満ちる物語になるのではないでしょうか。

 たとえ凛が命を落としたとしても…。

                                                                                                               敬具 

                                   2022年10月19日(水) 午前2時55分  easygoa46

第9節 追伸

 おそらく『ハニワット』のラストシーンは、月夜に柔里が独りで自転車に乗り、旅立つのではないでしょうか。その時、柔里はお腹に凛の子どもを宿しているかもしれません。(「柔里編」)

 健治、待ってるよ!(ニコッ)


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