続・カナダの教育。合う人・合わない人。
引き続き、カナダの教育レベルの話。
「カナダのレベル低いよね」
対して住んでいる人とかが「いえいえ、こんないいところがありますよ」
「いやでもやっぱり他国に比べたらねえ」みたいの読んでいて…
なんかハナシが平行線だなって思いました…
ていうか!
「学力」の捉え方が違うから平行線なのでは~、と。
たとえば私や私の友人なんかにとって、学力というよりは「生きる力」のほうが重要であって、学力はその生きる力のうちのひとつに過ぎないのです。
私がかつて働いていた託児所では…火を誰よりも早く熾せる、釣りがうまい、ダンスがうまい、太鼓がうまい、将棋が強い、赤ちゃんの面倒見がいい、リーダーシップがある、いつも優しい、虫についてだけは異様に詳しい、笑顔がすてき、字がきれい…(ああ、もっと言いたい)、そんな子たちがそこでの「優等生」でした。
彼らの多くは学校の勉強面ではできない子だったりするのだけど、その託児所では「かしこい子」でありヒーローなのです。
でも学力を、「どれだけ難しい問題が解けるか」だとすると、やっぱりカナダの教育ではダメだし、その託児所でいくらヒーローになれてもダメなんです。
さらにそれは、いまあなたが住んでいる社会によっても違います。
やっぱり先進国になればなるほど、学力重視になります。というのも、先進国というのは、社会が(一応)安定していて、紛争地域と違って命の危険も少ないので、生きるための努力をしなくても、生きていけます。そのぶん余裕があるから、もっと科学的・学術的に専門性を高めようよ、ってなります。
カナダは、広いけど人口は少ないし、ほとんどが田舎だし、とくに私の住むところは、学術的な知識より防寒知識がないと生きていけないし笑、そういう意味では、学校の勉強は最低限を、余裕のある子や希望する子はさらに勉強を、というふうになると思います。
とくにこの町では、仕事を見つけて生きていくほうが大事なわけで。勉強ができても、働けなきゃダメ。お釣りを間違えても、お客さんとコミュニケーションとって対応できればいいし、九九ができなくても、電卓つかえればいい。
と!
ここまでカナダ、どんだけバカやねん、みたいな書き方しちゃいましたけど、
この田舎でさえ、小学校からフランス語に力を入れている学校もあり、そこに通う日本人の子はまだ低学年だけど、日本語・英語・フランス語がペラペラっとでてきます。
娘のハイスクールも、数学は公文みたいな感じなので、先の学年の問題を解いている子もいます。娘が日本で一番得意だった理科も、こっちではほかの子のほうがよくできます。
さらに前回の記事で、娘は今度、1タームまるまるアウトドアクラスを取ると書きましたが(ほかの授業はなし)、そこでは16人のチームで過ごし、キャンプをし、カヌーをし、北極まで遠征し、全力で野外アクティビティに挑み、その中でいろいろな勉強をします。当然リーダーシップなどが育ちます。
こういったことは、ここで生きていくだけでなく、どこに行っても役立つ勉強です。
もちろん、将来この土地で楽しんで生きていくためにも、大事な教育。
というのも、長く暗い冬に、閉じこもってアルコールや薬物におぼれないように、という意味で。
でもとにかく、「学力重視! みんなができない難しいことができてなんぼ!」の人には合わないと思います、カナダ。
まあ、今回の話しは…
誰だって、自分が住んでいるところについてディスられたら、嫌だよねえ、と。
でもまあ、「ああ、この人にとってはあっちのやり方が合うのね~」と思えることも大事ですけどね。
ちなみに、若干ここでの話題とはずれますが、学力をつけさせたいという親のみなさんには、ちょっと古いですけど、「見える学力、見えない学力」という本を全力で推薦します。
おためしあれ~。
はい、ここで終わりです。
終わりですけど~
ちょっとだけ~
基礎学力(読み書き計算)ってやっぱりすごいんですよ。
たしかに、小さいうちから難しい問題ができてると、すごいな~って思うし、自分の子と比べてあせったりしちゃうんだけど。
それで基礎学力をおろそかにしては、絶対いけないと思うんです。
人生なにがあるかわからないなかで、頼りになるのはその基礎学力です。
自分の話しになりますが。
私は高校、ろくに行ってなくて、数学・化学・物理とかやってないんです。
でも縁あって、30歳でその分野では国内研究では先端にいるような研究室に入りまして、周りはみんなそれこそ学力!の道をまっすぐきた優秀たちで…
統計をやるときに、私が扱う手法は、まだ国内でやっている人がほとんどいなくて、さらにそこで使う数式は当然私が習ってないものばかりで…
でも私はひとつひとつ調べて、そこをやったんですね。
そのとき私を支えたのは、中学までの学力でした。基礎学力です。
そこに、「すぐ投げ出さない」とか「興味を持つ」とか、なんていうかこれまた大事な「見えない学力」がですね功を奏したのか、乗り切ったんです。
だから、子どもに関しては、あまり先を見ないで、いまの土台作りを大事にしてほしいなーと思います。
おわり。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?