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スピッツコードその1「ウサギのバイク」のAadd9


日本を代表する人気ロックバンドだけあって
スピッツの歌詞の考察をされている方は多々いるご様子
しかし、その曲調、コード進行にまで深掘りしている記事はほぼないのでは…

じゃあ、誰がやるのか?



俺でしょ!

ってことで
早速始めたいとおもいます

「ウサギのバイク」概要

2nd Album「名前をつけてやる」(1991)
M1

作詞作曲:草野正宗

まずはじめに

「ウサギのバイク」が収録されたこのアルバム「名前をつけてやる」

タイトル通りの!?なかなかのクセ強で
アルバムの評価によって
その人のスピッツファン度まで測れてしまうのは
ここだけの話…
(*ちなみに藤井聡太八冠は以前何かのインタビューで好きな曲を聞かれた際
このアルバムをあげ、特に最終曲「魔女旅にでる」がお好きだと語っていた
やはりただモノではない)

なので当然
その1曲目である本作から
フルスロットルでぶっ飛ばしており

我らフリークはココロオドル曲なのですが
にわかファンは置いてけぼりの憂き目にあうこと必至

カラオケ含め、使い所が非常に難しい!

実際スピッツのライブでも
ほぼ演奏された形跡はありません

そんな
「ウサギのバイク」はこんな曲

そこそこ長いイントロが終わり、
ようやくボーカルパートに入ると思いきや
歌い出されたのはまさかの

ラララ〜

サビ

いよいよ歌詞が歌われるのかと思えば

トゥトゥトゥ〜

いや、歌わないんかい!
(ってツッコんじゃったあなたは水見式診断を持ち出すまでもなく“ツッコミ系”)

そして
仕切り直すように(何事もなかったように)
2番(といっていいものか)から普通に歌詞が歌われ、何事もなく終わり

“ガゴ、ガゴ!”とパワーコード全開の次曲「日曜日」に移るため
なぜ1番がラララ、トゥトゥトゥ
(ハミングではなくスキャットでもなく”ボーカリーズ”というものらしいです)
だったのかなど意味や理由を反芻する暇もない

まさに脱兎の如き曲!(上手いこと言った(汗))


近頃流行りの
“ボーカル歌い出しスタートじゃなきゃスキップしちゃうよ”
といったタイパ重視の
サブスクシャバ僧野郎たちなどは当然知る由もなく

90年代J -POPで凝り固まった我々ロスジェネ世代の常識をも軽く笑い飛ばすような
ある種爽快な裏切り感で
肩透かしを喰わされつつ度肝も抜かれ
そのことにほとんどの聴衆が気づかないという
マインドアサシンなトガり曲

しかしながら
聴けば聴くほど味が出まくるアルバム「名前をつけてやる」において
1曲目はこの曲以外あり得ないと
気付けば思わされてしまっているという
なんとも草野マジカルな曲なのであります。

歌詞について

スピッツの曲(特に初期~「漣CD」以前くらいまで)を紐解く上でのキーワードがある
それは、音楽誌のインタビューでマサムネ氏が語っていた

“俺の曲は、SEXか死”

というものである。
この
ロックンロールの髄のような言葉こそ
実はスピッツの根幹であるのです。

巷に溢れる
一見、激しいロックのようでいて
くだらぬ自家撞着やありふれた恋愛が世界を覆すんだといった薄っぺらい曲の
(そんななかにも名曲があったりするのですけどね)
いわば対極が
スピッツの曲だといってもいい。

一見爽やかに聴こえるポップスロック
(その主犯は誰あろうマサムネのハイトーンクリアボイスであることも明記しておく)

だがその実は
罪を隠して生きるアウトロー

“外道”の歌であったりする

「ウサギのバイク」
もそんな外道の歌の一つと考える。
それは初っ端の

ウサギのバイクで逃げ出そう

からも窺い知れるわけで
この“逃避行”はスピッツの曲のひとつの隠れたテーマである。

例えば
「猫になりたい」(花鳥風月)の“広すぎる霊園のそば”のアパート

「ロビンソン」(ハチミツ)の“誰も触れない二人だけの国”
あたりは逃避臭ふんぷん

「スパイダー」(空の飛び方)なんて
“もっと遠くまで君を奪って逃げる”
とモロ逃避行の歌である

(※この“逃げる”というワードはスピッツ外道曲の随所に垣間見えるので
よいこのみんなは是非探してみてくれよな)

しかも大抵は相手の気持ちはお構いなしで
「とにかく俺について来い!」という
強引グマイウェイっぷり。

「ウサギのバイク」
においての逃避行は

枯れ葉を舞いあげて

スタートし

氷の丘を越えて

行こうとしている

枯れ葉=秋、氷=冬
秋冬を越え
春という輝かしい季節に向かって
行くという願望あるいは妄想
の曲といえなくもない。
アルバム「名前をつけてやる」には季節感を感じる曲が他にもあるが、
そのリンクに着目するのも
この一見とりとめのないアルバムを紐解く鍵になるやも

前述の
“SEXか死”について

「この曲はSEX、この曲は死」

といった単純な二元論では当然ない。

SEXについてはモロその曲ってのもなくはないけど
性(SEX)というより生(LIVE)かなって気がする

「ウサギのバイク」はこのLIVEの曲かなと
まぁ、アルバム最初の曲が死の曲なんて気が滅入るもんね。

ただし、
氷の丘を越えて
とあるように常に死の香りはあるし

脈拍のおかしなリズム 喜びに溢れながらほら

はかなり危うい精神状態を如実に表しており
極めつけは

今にも壊れそうなウサギのバイク

であり
常に死と隣り合わせなのは明らかなのだ。

この雰囲気はじつは前作である
デビューファーストアルバム「スピッツ」のラスト曲
「ヒバリのこころ」に
非常に近しい感じがするのではないかなと
今思いついたんだけど
今度別に分析してみようかな

曲調について

解説上、verse(Aメロ)やchorus(サビ)と表記するが
むしろ曲のテーマ(主題)は
intro、verse、bridge
でchorus部分はverseである
というのが筆者の主観であることを
ご留意ください

キーは煌めきDメジャー
introからverseまで
逆に不安になるほどのひたすらメジャー

chorus(サビ)は
歌詞の内容は精神不安定になる反面
ようやくBm(代理主演?)が登場し、
コード進行もダイアトニック(*そのキーにおける主な住人達)圏内で安定する
のが面白い

複雑なコードも無く
ほぼ3和音(スカした言い方をすれば“トライアド”)で構成されているため
ギターの弾き語り難易度は低めである。
(※はじめに書いたように使い所はまず無いが)

chorus以外で使用され
唯一のノンダイアトニックでもある
ギター初心者が真っ先に覚える
ビギナー御用達コードの「C」
これがDメジャーキーである本作では
ちょっとしたスパイスの役割をしている。

モーダルインターチェンジだのなんだのと
小難しい理論は俺自身よくわかってないけど

この「C」があることによって曲に深みがでて
この違和感は
chorusの“脈拍のおかしなリズム”に呼応しているのでは
と勘繰るのは俺の深読み

そして、
この曲の個人的最重要コードとして
全体のイメージを決めるのが
「Aadd9」コードである。

“add”は付け加えるといった意味らしいが
「味つけ」というほうがニュアンスとしてはわかりやすいかと

「Aadd9」コードは「A」の3和音(A、C♯、E)に9番目の音(B*オクターブ上)を加えた
4和音(テトラッドっていうらしいけどあまり聞かない)コード
付け足してるのに引いてるような透明感や伸びやかさがでるのが
「add9」の不思議な魅力。
アコギとの相性抜群なので
ギター弾き語りメインのアーティストは重宝する無敵コードであります

「ウサギのバイク」においてはintro終わりに使われていて
弾き語り譜には表記されないがサビ終わり(曲の終わりでもある)
「A」コードをジャラン〜とストロークしたあとの
チャララ〜ンの3音はadd9のBが含まれているので
細かくいえば「A」→「Aadd9」なのだ

このちょっとした味付けにより
intro終わりではこれから始まる曲への期待感を盛り上げ
(前述のように小気味よく裏切られるのだが)

曲終わりではアルバムの1曲目のスタートダッシュを維持したまま
次に繋げる襷の役割まで
この「Aadd9」は果たしてしまってる

故に
この曲におけるMVPが「Aadd9」だと考えるのです

spitz chord(*ここは弾き語り用備忘録です。実用性はあまりありません)

key:D
①D ②E ③F♯ ④G ⑤A ⑥B ⑦C♯

intro
①-④×5
①-④×2-♭⑦-⑤add9

verse
①-④/①×2-♭⑦-⑤

chorus
⑥m-④-⑤-③m
④-②m-⑤-⑤
×2(⑤add9)

bridge1
①-④/①
bridge2
①-④×3-♭⑦-⑤


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