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シン小咄「I’m crazy about xx」

やぁ、ジョン。君も日本に来て1年か。
日本語も大分上達したんじゃないかい。

“クロさん。こんにちは。
いえ、マダマダ。日本語難しいデス。
特に
<て・に・を・は>ね。
たった一文字でマルデ違う意味ナリマス。”

いやぁ、てぇしたもんだよジョン。
俺っちがあんたくらいの時分にゃ、
外国で暮らそうだなんて思いも寄らんことだったし
学がねぇもんで日本語すらままならなかったもんよ。
競馬に狂っちまって
せっかく稼いだ日銭をぜんっぶつぎ込んで素寒貧になったり
全くバカでロクでもねぇ野郎だったぜ

“ケイバ、くるう? 
クロさんケイバのし過ぎで頭おかしくなったデスか”

おいおい、酷い言われようだな。
まぁ、頭おかしいのは生まれつきだけどよ。
ハッハッハ。
ただよ、ジョン。この場合の<狂う>は
おかしくなるってよりは夢中になるって方が近いかな。
つまりゾッコンってわけよ。

“ぞっこん。夢中になる。ですか…I See.
やはり日本語難しいデスね”

それから1カ月後
クロさんはジョンに再会しました。
ですが、何だかジョンの元気がありません。

おう、どうしたジョン。しょげちまって。
なんか嫌な事でもあったのかい。

“ああ、クロさん。ワタシふられマシタ”

何、好きになった日本人の女にふられたって?
ハハハ。
なんだそんなことか。
あ、いやすまねぇ。オメェさんにとったら笑い事じゃねえよな。
して、なんて告ったんだい

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