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Audible探訪記1「蹴りたい背中」綿矢りさ著

-若さ故の栄光と過ち-

無料体験ですっかりハマってしまった
Amazonの朗読サービス「Audible」

一番のオススメポイントは
“何かをしながら作品を鑑賞できる”こと

昨今やかましいコスパやのタイパやの
といったもの以前に
身体的にも読書というものがしんどくなってきてる
オッサンには非常に有難いサービスである

20代の頃、気になる小説をひたすら読み漁り
長年朗読に限らずラジオなどの音声コンテンツに親しみある私にとって
「Audible」との出会いは必然ともいえる。
そして“無料”ともなれば利用しない理由がないのであります。

唯一心配していたのは朗読者であるが
今のところ、
作品にそぐわぬような朗読には出会っていない。
キャラクターを巧みに読み分けるなど
プロフェッショナルの技術の高さに感動することのほうがむしろ多い気がします。


いまや
なくてはならぬ

とはいかないまでも(ゴメンねAmazon)

基本無機質な日常を彩る
サポーターのような役割を担ってくれている


そんな「Audible」の世界を探訪していくなかで
出会った作品達を紹介していきましょう

記念すべき1作品めは
「蹴りたい背中」
綿矢りさ著 朗読:金丸由奈


です。
何故この作品なのかは後ほど説明するとして

作品内容をさらりと

主人公は
中学のときはそれなりに周囲とうまくやれていたものの
高校に上がって気付いたらクラスに居場所がなくなっていた女子高生
初実
同じくクラスで浮いていた男子の
にな川

にな川がファンだという女性アイドル(!?)と初実が偶然出会ったことを切っ掛けに
二人に奇妙な繋がりが出来て・・・

『最年少芥川賞受賞女性作家』
として、その端正な容姿も相まって
当時ニュースやワイドショーにも採り上げられてたのは覚えている

選考委員も
“若いから”“女性だから”
選んだわけではないだろうが

正直内容はそこまでではない。

初実とにな川の関係性はドライすぎてリアリティに欠けるし

オリちゃんなるアイドルなのかモデルなのかよくわからん女性タレントの人物像が歌はあまり上手くなさそうという以外に思い浮かばず、
なぜそこまでにな川が夢中になるのか全く共感できない

“蹴りたい背中”のシーンはタイトルにするくらいだから重要なシーンのはずが、かなりアッサリして拍子抜けする。

作中唯一の良心的存在である初実の中学からの同級生絹代が報われない

※wikiに書いてあった評論の
「安直にいじめ問題を描いたりや安っぽい恋愛にならず…」はまだわかるとしても
(上手に手放してるというより放り投げてる風に感じたのは解釈の違いだな)

「容姿に恵まれた人が書ける小説じゃない」
は罪のない発言だろうが完全アウトである。

作家と作品の完全分離は不可能としても
できる限り分けるべきで
10代の美少女が書こうが40代のオッサンが書こうが100歳の婆ちゃんが書こうが

それを評価の基準にしてはいけない!



と受賞作故当たりもキツくなってしまうけど

目を見張る文章もチラホラあり

「桐島、部活やめるってよ」の朝井リョウなどと比べると実体験からというより
あくまで想像からという印象が強いとはいえ、思春期特有の空気は見事に表現されている。

結局若さを理由にしてしまうけれど
10代の娘がいたとして、こんな文章書けたら
「ウチの子天才!」とモロテをあげて絶賛したに違いない

金丸由奈さんの朗読については
登場人物全てがあやふやでとりとめない物語(賞の選考においては高評価になった点)
の中充分及第点でありましょう

作品:☆☆★★★
朗読:☆☆★★★
おすすめ度:☆☆★★★


そう
この作品をはじめに選んだ理由
は良し悪しの基準になるかと思ったからに他ありません。


出版社や担当編集者が“成果”としたこの作品
作者として
日々強まる逆風を一身に受ける辛さは我々には想像がつかない

賞に潰される作家も多々居られるなか
現役で作品を創り続ける著者は
賞賛に値します。

いずれ最新作も取り上げられたらと思ってます
(Audible公開していればですが)




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