AV人権倫理機構へ「作品販売等停止依頼」をしました。

 2018年の11月、以下サイト内にある「作品販売等停止申請」を通して、私が過去に出演したアダルトビデオ作品の販売停止の申し入れをしたことにより、2018年12月下旬までに当時専属契約をしていたSOFT ON DEMANDとDogmaの販売ページ、総合アダルトサイトFANZA(旧DMM.R18)から作品が取り下げられ、一般販売および配信が終了しました。

 AV人権倫理機構というと、「出演強要問題」などトラブルの件が先に思い浮かぶと思いますが、私の場合はそれと全く関係のない理由です。

 では、なぜこのタイミングで販売停止申請をしたか。

 作品販売等停止申請をするにはまず、「作品販売等停止申請書」に必要事項を記入しなければいけません。
 ここに、「販売等停止を希望する理由」というチェック項目があります。

 私の販売停止申請の主な理由は赤線の部分、「販売等の期間が長期に渡るため」です。SOFT ON DEMANDから出たデビュー作は1998年9月の発売、Dogmaから出た事実上の引退作が2008年1月の発売なので、最低でも10年、一番古いものは20年以上経過していることになります。

 現役時代にリリースされたのはVHS、DVD合わせて50数本。DVDなどはほぼ廃盤となっているものの、在庫管理のいらない動画配信ページで作品が販売され、月額動画などにも作品が使用されています。

 20年前の出演作が有料配信されたり二次使用され続けている件について、今までは黙認していました。私生活には特に支障ないですしね。「一体いつまで販売され続けるんだろうか」とぼんやり疑問がわいたのは、結婚&出産後、物書きとしてのお仕事をする中で、森下くるみとしての活動が丸20年になったときです。
 利益を生まない旧商品でも、放っておけば「超懐かしのあの女優!」みたいな感じで5年後でも10年後でもだらだら残るのだろうし、40歳手前の私がごく一部の男性の頭の中で未だロリやうぶやマグロやセルビデオ初の専属や永遠の素人など18歳のイメージでいるのもなんだかな……。引退して10年も経つと余計なことを考え始めるものです。

 モヤモヤしていた矢先、とあるお仕事で二村ヒトシ監督と偶然お会いし、
「引退して10年経ったんですけど、区切りをつける意味でそろそろ私の過去作をサイトから引き下げてもらいたいと思ってるんですよ」
 とこぼしたところ、
「うん、じゃあ、それはまずDogmaの三上(元マネージャー)に相談するのが早いよね。AV人権倫理機構を経由して申請を出すのでもいいと思うけど」
 素早く簡潔な助言に加え、「まぁそうだよなぁ、忘れられる権利というものはあっていいんだよ」と言葉をもらったことで、ようやく「過去作の棚卸し」への心づもりができたのでした。

 「出演強要問題」以降、AV業界にも規則やシステムがどんどん介入するようになりましたが、私のデビューした1998年はそれがなく、契約に関しての書面など存在していたのかどうかわかりません。
 20年前とはいえ業界内もそれなりに広いので女優と(少なくとも所属事務所とは)契約書を交わすメーカーもあったのでしょうが、私の場合、撮影前に監督と綿密な打ち合わせをすることがあっても、出演承諾書に名前を書いく機会はありませんでした。専属女優という立場でいたし、不信感を抱くような場面もなく、今でも「出演させる側であるSOD、Dogma」と「出演する側の私」の関係は健全に機能していたとはっきり言えますが、とにかく公的な遣り取りがなかったことは確かです。
 出演の承諾は常に口約束(この場合は法的な書類によって契約を結んでいなくても、の意味)のような形でしたが、当然、撮影は自分の意志で「やる」と決めて挑むわけで、撮影内容に不明な点があったり、怪我をしたり気分がすぐれなかったりと体調面に異変が出たときには、すぐに監督やスタッフに報告し、トラブルを後回しにせず現場内での話し合いで解決していました。ひと口に「現場」といっても色々あるので、それが当然だと言って良いのかわからないけれど、私は出演者として十分に配慮されていたと思います。
 
 しかし、どんなに自覚を持って仕事に打ち込んでも、「実際の権利」とは別です。
 撮影した映像素材の権利はメーカーが持ち(制作費を出しているので当たり前ですが)、出演料が支払われた以上はロイヤリティ契約もなく、二次使用料の支払い権利もなし、女優が引退した後の作品の取り扱いについては曖昧のまま――当時の業界の仕組みを考えるとまったく仕方がないことですが、それが通例であり、現実でした。だから、まぁVHSやDVDがどれだけ売れて何十億の利益がどうこう言われても、「そうですかー」です。結局、何の権限もないのですから。
 
 それが数年前に湧き起こった強要問題をきっかけにAV人権倫理機構が発足し、窓口の通った正式な申し出(申請書類とともに、やはり「正当な理由」が必要です)をメーカー側が承諾すれば、販売サイトに掲載されっぱなしの過去作は速やかに取り下げられるようになりました。
 私にとって作品販売等停止申請は、20年前は持つことのできなかったひとつの「権利」です。それも、至極真っ当な。だって数年前までこういう規定は不明瞭だったのですよ。

 引退して10年以上経っているにも関わらずこのような権利を行使できたことを素直に喜びたいし、快く協力くださったSODクリエイト、Dogma、KMPプロデュース、FANZA様方には改めてお礼申し上げたいです。
 ※補足として。AV人権倫理機構事務局によれば、第三者がオークションなどで販売している中古商品、違法サイトに投稿された動画、コピー商品などの海賊版DVDまでは対応しきれないので了承くださいとのこと。
 ちなみに平成30年12月31日までの総申請数は158件、手続終了は119件 ↓ 今後も着々と増えていくはずです。

 長々と書いてしまったのでまとめに入ります。

 私は今回の件で、「過去を消したい」などとは微塵も思っていません。これから出会う人にAV女優だったことがバレたらどうしよう……と不安になったことはないし、バレたところで噛みつかれるわけじゃないので怖くありません。過去について聞かれたら、「はい、そうですよ」とばかばかしいほど当たり前の返事をすると思う。世間の評価とやらに鈍感なのです。だから、基本的には、私の過去の記録が他人から忘れられようが忘れられまいが、どちらでも可。

 ただ、やはりひと区切りつけておきたい、自分の今後の活動のために。というわけで、「10年以上前に出演したアダルト作品を販売サイトから取り下げてください」と意思表示し、しかるべき対処をしたのち実行されました。というだけの(?)話です。
 理由を明確にして書類を揃えて申請すればできるので、現役で活躍している女優さんには必要ないけど、引退してずいぶん経っている方は検討してみてもいいのではないでしょうか。もちろん啓蒙する気は毛頭ないので、それぞれご自分の判断でなさってください。
 
 

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(^^)/ありがとう
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森下くるみ

AV人権倫理機構への作品販売等停止依頼の件

AV人権倫理機構への「作品販売等停止依頼」の件について、経緯、具体的な方法などを。
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コメント4件

100番目頂き!!!
私は「映画」を分け隔てなく愛する人間ですので、AVを取り巻く環境を考えればやむを得ないと同時に寂しい気持ちがあります。
一般作で作品販売等停止はあり得ませんし、仮にあるとしても簡便な手続きではなく煩雑な訴訟という形をとります。さらに検閲や言論弾圧につながる恐れから外野の表現の自由信徒やや作品支持者からの猛烈な抗議も発生するでしょう。
江戸時代の春画もかつては使い捨てに近い大衆メディアでしたが、今や世界が認める古典藝術です。人類が滅亡しない限りAVもやがては藝術となり生き残った作品に付加価値がつくことになるでしょう。
行政書士です。あなたの作品(といって失礼かもしれませんが)みたことがあるかもしれません
契約についてご相談に乗りますのでよろしくお願いします。
08059316406
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