ノーサイド・ゲーム (池井戸 潤)



池井戸さん得意の会社物で、更にラグビー部の再建ときたら読まない理由がない。
仕事の超繁忙期である6月ですが、電車での移動時間や5分10分のちょっとした隙間時間を使って、ほとんど一気読み。

ラグビーを知らない人でも十分楽しめます。
TBSテレビがドラマ化、というか、ドラマ化前提の作品であり、今年のラグビーワールドカップの盛り上げ役にもなっているのでしょう。

ネタバレ注意

冒頭の役員会議で、滝川常務の提案を否決させたことで左遷人事(?)で横浜工場総務部長へ事異動を命じられた主人公、君島。
横浜工場総務部長というのはラグビー部(アストロズ)のゼネラルマネージャー(GM)も兼務しており、ラグビー素人の君島の奮闘が始まります。

アストロズは、昨年のシーズンは何とか1部(プラチナリーグ)残留を決めたものの、監督が退任して、会社からの理解が得られるかどうかの瀬戸際。ラグビーに理解がある島本社長の一声で何とか乗り越えるたものの、将来展望が見えず、ラグビー部員に動揺が広がるなかで、君島のGMとしての最初の仕事は新任監督探し。

ラグビー界に何のつながりがない君島でしたが、大学の友人に一人だけラグビー人がいました。監督となる柴門です。

柴門は大学ラグビーの監督として3連覇を果たしたものの、最新の組織論を構築し、伝統を排除した指導内容がOB会の協力が得られずに、無念の更迭。実はそのOB会で力を持っている人物がアストロズのライバルであるサイクロンズの監督の津田。柴門を更迭したのも津田の意向だった。

そこに目を付けたのが君島GM。
学生時代は特に親しいこともなかったが、少ないつながりを手繰って手繰って、何とか監督就任までこぎつけた。

それからは、何度か訪れる、役員会議でのラグビー部の予算問題を君島が乗り越えて、最終的には就任2年後に、ライバルである
サイクロンズに勝利しプラチナリーグ優勝を達成します。

ストーリーとしてはこんな感じですが、今回の作品は組織論を展開しているところが注目です。

組織論

監督を選ぶときの、優勝実績がない監督は、優勝させられない、という考え方は他のスポーツでも共通しますし、仕事の組織でも共通します。

また、優勝争いができるチームと優勝するチームの間には大きな隔たりがある、といっていますが、それもよく分かります。
Jリーグで言うと優勝争いできる浦和と優勝できる鹿島の間には大きな大きな隔たりがあります。

池井戸物の見どころ

池井戸さんの作品でワクワクする会議の場面も健在で、冒頭の滝川常務と島、のちに常務となった脇坂との経営会議での対決は必見。

目まぐるしく変わる人間関係も楽しみの一つ。
当初のラグビー部の天敵とみていた滝川常務は、実はラグビー部の味方。
ものわかりの良い温厚な上司であった脇坂こそがラグビー部の本当の敵。
日本蹴球協会内でも専務理事が本当は改革派だったこと。

余談ですが

それと余談ですが、日本ラグビー協会の人事異動があり、、森本総理大臣が退任して、若返りを図るようで、指導者として実績十分の清宮が重要ポストに就くとの報道がありました。
期待してます。

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