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おい!誕生日に宗教勧誘すんじゃねーよ!


誕生日がきた。
また年を取った。
おめでとう。
ありがとう。


俺は年に一度しか誕生日がない。
だから誕生日が好きなんだ。
他の人からすれば何でもない日だが
自分だけは少し特別な気分に浸れるから。


特別自分にプレゼントをあげる予定はなかったが
せめてもの褒美として寿司を食べに行った。
もちろんクルクル回るやつね。
散歩に行くついでに寄ろうかな。


食べた。
マグロのみを8皿。
美味しかったです。
感想終わり。
プロローグも終わり。
ここから本編に入る。


支払いを済ませて店を出る。
誕生日という特別な気分と
好物の寿司を食べられた事により
俺の幸福度はこの日Maxに達していた。
「春の風でも感じますか」そう言って散歩の続きを始めようと
大地を踏みしめた瞬間、後方から声が聞こえた。


???「あの~すみません~?」


性別はおそらく女性
年齢は45~50歳
恰幅や良し
髪の毛は101匹わんちゃんに出てきそうな白黒のまだらな斑点模様
身長は157ぐらいかな
顔は不敵な笑みを標準装備している
そんな人物が後ろに立っていた



俺にはわかる!
こいつは関わるべきでない奴だとッ!
見た目で判断したわけじゃあないぜ?
経験だ。俺にはこれと似た経験をした記憶がある!
その記憶は鮮明に脳にこびりついて離れない!
その記憶が言っている!
こいつは""だと!
こいつは…こいつはァ!


こいつは宗教の勧誘だ!!



この間、僅か3秒。
俺は冷静だった。
こいつは宗教の勧誘を今から俺にかけてくる。
クソが、胸糞悪い。
だが、チャンスでもある。
こいつらが、どのエリアで活動しているのか知る事ができる。
いいぜ。話を聞いてやろう。
万が一にでも宗教関係無ければ
話を無視するのは失礼だしな。
「どうしました?」と、返答すると


???「今って、幸せを感じてますか?」


俺(勧誘下手すぎるだろッッッ!!!!!!!!!!)


おいおいおいおい!!
ほんの僅かでも宗教じゃない可能性を考えてた俺がバカじゃあないか!
こいつは""の中でもトビキリにヤバい奴だった。
多少なりとも会話のキャッチボールを楽しんだ後
おたくらの得意なフィールドに俺を誘い込むのが定石なんじゃねーのかよ。
いきなり剛速球ど真ん中とは随分とご挨拶だな。クソ。


宗教勧誘確定胸糞不可避
はぁ~…
心のため息
俺、誕生日だぜ?
何でよりによって1年で最高の日に声かけられるのかなぁ~…
酷いよ…


心の中でひとしきり悲しんだ後
今度は怒りの感情が湧き出てきた。
こいつは俺を食い物だと思っていやがる!
こいつは俺を利用して私腹を肥やそうとしている!
許せるか?いや、許せない!
だが!俺は何もできない。
俺は無力だ。
宗教団体の下っ端メンバーに対して何を言っても意味はない。
それどころか、話すらまともに通らない奴らなんだから。
暴力でも解決できない。誰にも助けを求められない。
宗教勧誘による恐怖と怒りは行き場を無くす。
喜怒哀楽、どの表情を作れば良いかわからなまま話を進めた。


俺「幸せ?うん、幸せ」
???「本当ですか?何も不満ないんですか?」
俺「そっすね」
???「でも、私たちとお話すればもっと幸せになれますよ」
俺「はぁ(は?)」
???「良かったら今からココでお茶しませんか?」


そう言うと手提げ袋から一枚の紙を差し出してきた。
そこには寺の写真と周辺地図が記されていた。
我が家から結構近い公園の横にある寺だと気が付いた。
もう一つ気が付いた。
紙の一番下の欄に小さく小さく有名な宗教団体の名前が書かれていた。


ほらね


どっと疲れが押し寄せてきた。
心のどこかで
ほんのちょっぴりだけど
違うかも?と
違ってほしいと
願ってた。
最後の1%希望は無くなった。
お前は人じゃない。


宗教勧誘に絡まれた場合の対処方法。
相手が人間だと思わないことだ。
人間によく似た生き物が
人間の言語を上手く真似して話しているんだ。
今の時代風に言うなら、AI自動生成された謎文章を淡々と話して来る
ヒトモドキとでも思えば良い。
目の前にいる生物がヒトモドキとわかった。
会話によるコンタクトを続けてみる。


俺「はぇ~ここでどんな話すんの?」
モドキ「みんなで集まって、お祈りしたりするんです」
俺「はぇ~」
モドキ「たまにお菓子とか持ち寄ってお話もします」
俺「はぇ~」
モドキ「行きましょう?」
俺「興味無いです」
モドキ「なんでですか?楽しいですよ」
俺「今、幸せなんで大丈夫です」
モドキ「なんで幸せなんですか?」
俺「!?(なんで幸せなのかだと!?こりゃ、難問だな。幸せの定義なんて人それぞれだろうが。俺の幸せをモドキに話した所でどうせ通じない。ならばこの不毛な会話を終わらせる言葉はなんだ?最初の!最後の!メッセージ!)」
モドキ「一緒に幸せになれる方法を話し合いましょう」
俺「寿司…食ったから」
モドキ「はい?」
俺「寿司食ったから幸せだわ」


""誕生日という特別な気分と
好物の寿司を食べられた事により
俺の幸福度はこの日Maxに達していた。""


俺「腹いっぱいだし眠いしで今日は帰るわ」
モドキ「そうですか。名前ってなんて言うんですか?」
俺「もっと仲良くなったら教えるよ」
モドキ「わかりました。じゃあ…」
俺「じゃあ」


会話によるコンタクトは半ば強引に終了となった。
俺が耐えられなかった。モドキとの会話に。
疲れた。帰ろう。
身体を翻して帰路につこうとしたその時
左腕をモドキに掴まれた。


モドキ「お家はどこなの?」


俺「うるさい」


適当に最後の会話を終わらせた。
どうにでもなれだ。
ストレスと疲労に限界に達する前に
モドキの前から消えたかった。
掴まれた腕を振りほどき
早足でその場から去った。


最悪だよ
誕生日に宗教勧誘に出会うなんて。
笑い話にでもしないと割に合わないぜ。


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