見出し画像

四季折々の俳句 29




「 詩集より蝶 」

春一番目をみひらいて吹かれけり

わらうては春のひかりをはなつ君

蝶よりもかろやかに人ゆく野かな

富士といふにつぽんいちの山笑ふ

手にすくふ水やはらかき春ならん

早わらびや来てはすぎゆく人の声

東京をとほくはなれてのどかなり

一人住む庭はたんぽぽばかりかな

につぽんといふ国一つおぼろなり

ほほ笑んで平和な世なり雛まつり

踏んづけしひとつぶは花雛あられ

手をはなれそれつきりなり流し雛

いちばんに土筆の出でし荒野かな

ときに嵐ときに春かぜギターの音

ホワイトデーいよいよ近き放心す

卒業ののちのじんせいかたらふ夜

大き手で団扇をつくるさびしさよ

晩酌に酔ふほどにわれおぼろなり

たがやしてつくる故郷の歴史かな

野にひらく詩集より蝶舞ひあがる

ならびゆくはなうたのひと春日傘

どかと居る兜太そのものわらふ山

そのなかを白き龍ゆくかすみかな

真向かうて夕日に染まる遍路かな

しづまれる池の底より初蛙

いまにしておもへばこの世朧かな

たましひの話しとなりぬおぼろ月

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?