四季折々の俳句 55
「 桜咲く 」
初蝶が飛んでもとんでも春日野よ
ひとつ行くはながらの傘菜種梅雨
酒酌んで三月のゆめまっただなか
おとこらがひかりゆびさす観潮よ
行くふねはゆめかうつつか蜃気楼
ひとり聞くからだのなかの春怒濤
ふる里を去った人からかげろうよ
遍路杖こころのみちをどこまでも
◇
野やまからかえってきた夜嫁菜飯
子どもらのふるさととして母よ春
寝てもゆめ覚めてもゆめの蝶の昼
空の鳩いのち見あげるあたたかさ
質屋ひとつかげろうとして街の中
あたらしいくつ履いてさて春の泥
ほんとうのうたげはしずか桜どき
花見して言うことのない静けさよ
◇
顔あげてにっぽんじゅうが花見客
おんならのきょうがふぶくか花衣
つかのまのへいわながらも花の宴
観るひとのおもいそのまま桜咲く
平成がさくらとともにはらはらと
いつまでも去れないままに花の宴
一人仰ぐひとりはしずか山ざくら
将来のあかるさほどの夜ざくらよ
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