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四季折々の俳句 55




「 桜咲く 」

初蝶が飛んでもとんでも春日野よ

ひとつ行くはながらの傘菜種梅雨

酒酌んで三月のゆめまっただなか

おとこらがひかりゆびさす観潮よ

行くふねはゆめかうつつか蜃気楼

ひとり聞くからだのなかの春怒濤

ふる里を去った人からかげろうよ

遍路杖こころのみちをどこまでも

野やまからかえってきた夜嫁菜飯

子どもらのふるさととして母よ春

寝てもゆめ覚めてもゆめの蝶の昼

空の鳩いのち見あげるあたたかさ

質屋ひとつかげろうとして街の中

あたらしいくつ履いてさて春の泥

ほんとうのうたげはしずか桜どき

花見して言うことのない静けさよ

顔あげてにっぽんじゅうが花見客

おんならのきょうがふぶくか花衣

つかのまのへいわながらも花の宴

観るひとのおもいそのまま桜咲く

平成がさくらとともにはらはらと

いつまでも去れないままに花の宴

一人仰ぐひとりはしずか山ざくら

将来のあかるさほどの夜ざくらよ

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