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非定型骨折の話 ⑦救急の待合室で

救急の待合室には、家族らしい2、3組の人がいた。時折小さな声で何か話しているけれど、ほぼみな無言。交通事故もあったようだ。そんな中、窓口の職員から保険証の提示を求められた父が、「持ってきていない」と私を見る。私が取りに行っても良かったのだけど、「俺が行ってくる」と立ち上がったので任せることにした。そしたら―
 
ブー! ブッブッ!
 
いきなりのオナラ音。父が歩きながらオナラしている。驚いて顔を上げる女性と、後ろの隅で吹き出す10代の子たち。私は、知らないふり知らないふり。誰? あの人。今何かあった?
 
そういえば、以前同窓会で受付をしていたら、特別講演の高齢講師が談笑しながらオナラしていたっけ。こちらは椅子に座っているので、ちょうど顔の高さにお尻があった。受付付近で懐かしい顔に出会って、握手しながらブッブッブッと。あれって、もしかして自分で気づいてない? それとも自分は聞こえなくて人も気づかないと思っている?
 
そしてタクシーで家を往復し、父が持ってきた保険証は、何と父自身のものだった。窓口で「ご本人のものが必要なんですが」といわれて、そりゃそうだよね、と思う。昔は、保険証って家族一緒だったし、父も落ち着いているように見えてかなり動揺しているのだなと感じた出来事。

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