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兄弟?姉妹? 地域ネコの穏やかなある日

わたしの地区は地域ネコが何とか生きていける最後の砦だと思う。元々は市街地のそのまた外側の農村植樹地帯だ。区画整理でどんどん都市化が進んでいるが、まだ空地がある。大きな農家は農業をやめても大きな土地がある。

野良ネコ、外ネコ、地域ネコが生きて行ける隙間が残っているのだ。都市部や新規開発された団地ではネコ飼育禁止もあるという。

イヌは野良も外も地域もない。飼い主が判然としないイヌは生存さえ許されない。即、保健所行き、処分だ。多分,イヌは野生化すると人間に危害を加える恐れがあるからだろう。

その点,ネコの方が幸せか。いや、そうとも言えない。外で飢えに苦しみながら死ぬネコはたくさんいる。イヌは完全飼育、完全庇護されているから、飼い犬は苦労というものを知らないのだ。不幸にも捨てられた犬は処分されるだけのこと。ネコのように隙間で生きてゆくことさえ許されない。

人間は、ネコもイヌも人間の許可と庇護なしには生きられない存在にしてしまった。人間から完全に自由な生き物は鳥と魚だけかも知れない。

今日も、二匹の地域ネコに出会った。どう見ても飼ネコではない。誰かが食事を与えているのだろう。やせ細ってはいない。二匹で仲良くのどかに寄り添っている。

「この辺のネコですよ。誰かが餌をやってるみたいですが、うちの門の前が好きみたいで」

二匹が座り込んでいる家のおじさんが言った。このテキトーさがいい。家の近くに現れることを絶対許さないとかではなくて、誰かが餌をやっているんだな、とテキトーに見逃すこと。

これが地域ネコが生き延びられる条件だ。わたしはこの町がスキ。バスは一時間に三本しかない。最寄りのJR駅まで歩いて20分。近くにスーパーも病院もない。

でも、わたしは、ピカピカに磨き上げられて、ネコ一匹出歩くことを許さないような新都市より、地域ネコが何となく生きて行けるテキトーな田舎町、ここが好き。

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