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全宅ツイ不動産チンパンジー情報 第103号

【特集】はじめての借地権

東サンドバック(以下、東):トリッキーな物件ばかりを扱うアラフィフ不動産ブローカー。ちゃんと数えてないけど、借地物件なら50件以上取引したぜ。

どエンド君(以下、エンド):専業のアパート大家さん。安さにつられて借地物件を買っていたら15人もの地主さんに地代を納めるようになってしまいました。一度借りた土地は返さへんで!

東:今回のテーマは「はじめての借地権」。完全に自分本位なお勉強会です。グリップ君に企画を直訴したところ、「ちゃんと数字の責任負えるんだろうな!なぁあ!!」と詰められて日和ったので、スペシャルな用心棒に助けていただくことにしました。どうか一人では何もできない哀れな子羊をお助けください、よろしくお願い致します。
エンド:東サンドバック大先生から借地権の講義を受けられると聞いて馳せ参じました。
東:そんな大そうなことは話せないのでハードルを上げないでくださいw
エンド:大先生、よろしくお願いします!
東:できる範囲で頑張ります!!

東:さて、皆さんは「借地権」についてどんなイメージを持たれていますでしょうか。
エンド:アパートを探してて、「お!安い!」と思って慌ててクリックすると、だいたい「借地権」って書いてあってがっかりするイメージです。
東:そう、安さに釣られて見に行くと借地権。誰もが通る道です。簡単にお金落ちてないの。
エンド:やっぱり借地権の物件って敬遠されがちなんでしょうか?
東:今でこそ取り扱う業者が増えてきましたが、10年以上前は「売れないんじゃないか」とか「返さなきゃいけないんじゃないか」とか、酷いと〝準瑕疵物件〟とか言われることがあったりしました。
エンド:準瑕疵…。
東:確かに借地権の物件は扱い方を間違えると大変な目に遭うこともありますが、どちらかというと、さわってる人が少ないので、分からないから怖いということではないでしょうか。ということで、まずは「借地権とは何ぞや」というところから一緒に勉強できたらと考えております。
エンド:わくわく。
東:借地借家法によると、借地権とは「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」のことを指します。つまり、建物の所有が大前提なので、建物のない土地には借地権は設定できません。
エンド:宅建の問題でお馴染みですね。もってないけど。
東:この分野も、地上権とか登記されてる借地権とか定期借地とか色々あるんですが、今回はマーケットでよく流通している「登記を伴わない普通借地権」のお話をさせていただきます。
エンド:ぼくにとっても、平成4年の借地借家法改正以前から土地を借り続けている「旧法借地権」の物件がいちばん馴染みがあります。
東:ですよね。現在流通している物件は「旧法」の物件が殆どではないかと。借地権は明治時代に借家人保護を目的に制定(建物保護ニ関スル法律)され、大正時代に「借地法」と「借家法」が成立しました。これが先に挙げた「旧法」です。そして、平成4年に借地借家法(新法)が施行されました。旧法と新法の違いは期間です(下図参照)。

旧借地法と新法の借地借家法の違い | 日本地主家主協会

エンド:頭に入ってこない…。
東:ざっくり言っちゃうと、旧法では、堅固建物(RC・鉄骨)は30年もしくはそれ以上の年月で更新でき、非堅固建物(木造)は20年以上の契約期間で20年もしくはそれ以上の年月で更新できる。
エンド:ふむふむ。
東:新法は堅固・非堅固ともに当初契約期間は30年以上で契約締結し、更新後の契約期間は初回更新時は20年以上、2回目以降の更新は10年以上で締結できるって話です(と、僕は理解しています)。では期間が違うと何が違うのか。更新料の支払いと事務処理の手間ですかね。
エンド:更新できるということは、永遠に土地を借りパクできちゃうってことで、ぼくの借地権は孫子の代まで安心ですよね?
東:契約の解除には、「正当事由」という大きな壁が立ちはだかるので、実質、貸した土地を取り返すのは無理だと思うんですよね。正当事由が成立するためには、「どうしてもそこに住まなきゃいけない」事情が必要ですが、土地を貸してる地主さんには普通ありえないですから。
エンド:一度、土地を貸したら永遠に返してもらえなくなる。。
東:なんか、定借以外は貸し損のような気がしますよね~。なので、これから新規の普通借地権で土地を貸すなんてことは、よっぽどのことが無い限り無いような気がします(僕個人の意見です
エンド:おなじみの酒チャンスは事業用定期借地権です。
東:目の前に事業用定期借地の実例があった…w
エンド:あと8年後には酒チャンスを壊して地主さんに土地を返さないといけません。
東:大丈夫かな、この土地は返さない、俺のもんだッ!!ってゴリラ暴れないかな。
エンド:土地って借りてるうちに自分のモノのような気持ちになってきますからね。
東:ちなみに、新法の普通借地で事業やったことがあるのは一度だけですね。その時は地主さんがお金に詰まってて、でもどうしても先祖代々の土地だから売りたくないとかって感じでした。
エンド:あるんですねー。プライドだけの世界だ…
東:なので、現在取引されている借地の物件は、旧法の契約をそのまま引き継ぐ形になるのが殆どだと思います。令和の契約であってもこんな感じで旧法が適用されるケースが多いということは覚えておいた方が良いかと思います。
エンド:しかし土地を借りる権利なのに売買取引できるの不思議な感じですね。
東:そうなんですよね、だから複雑で分かりにくい。借りるのに売る??ってなっちゃう。ある程度さわったことがある人がそばにいないとホントに分かりづらいです。

東:さて、借地権の場合、所有権と比較しメリット・デメリットがあると言われますが主だったものは下記の項目ではないでしょうか。

【メリット】
・取得費用が所有権と比較した場合に安い
・立地の良い物件がある
・土地の税金が掛からない

【デメリット】
・所有欲が満たされない
・自由度が低い
・地代他、支払わなければならない費用がある

東:どエンド君も先ほど言っていたように、やっぱり安さは感じますよね。
エンド:やっぱり安さですよね!収益物件の場合は利回りがぜんぜん違ってきます。
東:ですよね~。融資の問題はあるにせよ、収益物件の場合はこの安さが断然の魅力。
エンド:利回りにつられて買った借地アパートが4棟ほどあります…。
東:4棟も!!一昔前は借地の古めの木造アパートで利回り20%超えとか普通にありましたよね。たいていはおじいちゃんおばあちゃんと外国籍の方が入居者のやつ。
エンド:ありました、ありました。うちの借地アパートもおじいちゃんとおばあちゃんと外国の方を満載しています。
東:建物築年数=入居期間のおじいちゃんおばあちゃんがいたりしますよね。
エンド:最近は23区内の借地アパートも値上がっちゃって10%もいかなかったりしますが…
東:借地で10%ぐらいかー、良さがだいぶ薄れてきちゃってますね…

エンド:昔から開発されている=立地がいいことが多いのも嬉しいですね。平民には手が届かない立地も借地なら手が届く!
東:地主さんが手放さないのは先祖代々うんぬんもそうですが、立地条件というのはあるなと、いろんな地主さんの話を聞いて思いました。
東:借地で貸してるとはいえ、良いところの土地を所有していることで他の地主さんにマウントを取りたいという地主さんもいたりするので。
エンド:人はどこまでいってもマウントから逃れられない…
東:ホントかどうか、地主同士の我慢比べで駅前が発展しないとか聞いたこともあります。早く売るなり貸すなりしてお店作ってくれよと。

エンド:あとは地主さんがお寺だと絶望的ですが、個人だと何かの折に底地を買えると、所有権に化けるチャンスがあるのもギャンブルっぽくて楽しいです。
東:確かに、地主個人だと底地ギャンブルありますね~。
エンド:地主さんが代替わりしたり、測量をはじめたりするとワクワクします。
東:今なんか土地が値上がってるから、底地売るか借地買うかで戦ってる人いるんじゃないかなー。

東:ちなみに、底地と借地の割合はこれを参考にするのが一般的です。
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