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【詩】栄螺の村

ぼくの背中に背負った

栄螺の村

たくさんの命が

住んでいる


ぼくの背中に背負った

栄螺の村

ぼくの命を吸って

大きくなる


栄螺の殻には

たくさんのフジツボや

カサネカンザシ

貝や海藻やホヤ

そんなものが

たくさんついている


この重い重い栄螺の村を

背負っていくのがぼくの使命


たくさんの海水を浴びて

村の命を繋ぐ


ぼくの命は

この栄螺の村に

捧げて 捧げて

痩せ細る


ぼくの背中に背負った

栄螺の村

フジツボは楽しそうに

ぴろぴろと動く


栄螺自身は

ぼくの背中にくっついて

ただ ただ ぼくの

生気を吸い取る


栄螺がどんどん 大きくなって

ぼくはどんどん 萎む


ぼくが死んだらこの栄螺は

死んでしまう


ぼくが生きたら

栄螺の村は生きる


栄螺の村

大切なぼくの村

君たちが生きることが

ぼくの幸せ


栄螺の村よ

ぼくが死んだら

海に帰って

ぼくなしで生きろ


ぼくの背中に背負った

栄螺の村

ぼくが痩せたせいで

痩せてゆく


ぼくの背中に背負った

栄螺の村

ぼくが死んだら

人々に食われる


一緒に海へ行こう

一緒に海で生きよう

海へ行って海底で

海藻を食べよう


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