特別になったあなた
その日、あなたは特別な存在になりました。
特別になったあなたは荘厳で、静謐で、神々しささえ感じられるのです。
特別になったあなたは自然と人を呼び寄せます。
家族や友達、親戚や疎遠になった人までも。
そして、心地よく収まりのよい寝床を手配してもらえます。
集まった人々は次から次へとあなたを拝みます。
きちんと作法が決まっていて、そのとおりにやらないとたいへん失礼になるのです。
あなたへの挨拶は、
なんども、なんども、なんどもおこなわれます。
それもたいてい関係者はあわただしく。
いっぽう、あなたはずっと神妙な顔をするだけで、ひとことも言葉を発しません。
そんなある日、
ようやくすべての段取りが決まりました。
集会を開かなくてはなりません。
ところが、あなたに何度呼びかけても、返事はなし。反応する素振りさえ見られないのです。
周りはそれでも呼びかけ続けます。
「ナムアミダブツ」
そうして集会は終わりました。
あなたは心なしか安心しているようです。
今このときも、そしてこれからも。
なんといっても、あなたは特別なのです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?