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ボーカルミックスについて(Hip-Hop編)

ビートメイカーのKUVIZMです。

普段、私がおこなっているボーカルミックスの作業につきまして、文章化することで、思考を整理し、自分自身のスキルアップにもつなげられたらと考え、私がおこなっている工程をまとめて記載します。

私がミックスするのはHip-Hopの楽曲、ラップミュージックがほとんどなので、他のジャンルの楽曲では適用できない部分があるかもしれません。
そして、「これが正解」や教科書といったものではなく、あくまでも個人的な作業工程をまとめたものです。
また、楽曲ごとに処理は変わります。汎用性がありそうな部分をまとめました。

私はシーケンサーソフトはAbleton Liveを使っています。
個人的にAbleton Liveはビートメイクに強く、ミックスやレコーディングに特化したソフトウェアではない印象があり、ソフトウェア自体の出音にも好みが分かれますので、他のソフトウェアを使用することも検討したほうがいいかもしれません。
私は現在、Ableton Liveが手足になっているため、使用しています。

①ディエッサー

Waves DeEsserのMale Essプリセットを選択

「さしすせそ」といった耳障りになり、音量が上がりがちな歯擦音を削ります。
かけすぎると、歯擦音以外も削れてしまって音が変わってしまうので、耳で確認しながら作業します。
1.大きな歯擦音だけにかけるディエッサー
2.中くらいの歯擦音だけにかけるディエッサー
と2段掛けすることもあります。

②Waves CLA Vocals

Waves CLA Vocals

すべてのパラメータをオフにして、通します。
通すだけで音が変わるので好んで使っています。

③手コンプ(オートメーション書き)


いきなり声が大きくなって耳障りな部分があったり、最後に楽曲の音圧を出すときの歪みにも関わってくるので、目(波形とメーター)と耳で確認しながらオートメーションを書いていきます。
ミックスで欠かせない作業です。

ボーカリストが意図したダイナミクスを損なわないよう細心の注意を払いながら作業します。

ボーカルチャンネルのフェーダーは楽曲全体のバランスを調整するときに使うので、チャンネル内に、Ableton Live付属のエフェクターのUtilityをインサートし、Gainにオートメーションを書きます。
1.ピークを抑える目的のオートメーションを書く、Utility
2.聴覚的な音量を抑えるためにオートメーションを書く、Utility
2段掛けすることが多いです。
分けることで後々管理・調整がしやすいです。

④ピッチ補正

ピッチ補正をかける場合、私はコンプレッサーの前におこないます。
コンプレッションが強すぎる場合は、コンプレッサーの後にする場合もあります。
私はWaves TuneのあとにMelodyneで処理をすることが多いです。

⑤コンプレッサー

Waves H-Comp

レシオを3、ゲインリダクション(かかり具合)はピークで-3db、リリースは16分音符か8分音符(楽曲のBPM次第)で設定します。

⑥イコライザー

iZotope Neutron

キックやベースの低域と被る80hz以下はカットし、声が厚すぎると感じる230hz以下をシェルフタイプで下げることが多いです。
近年のラップミュージックは808やキックを大きく聴かせるために、低域をがっつり削っているケースが多いです。
厚みのある声、低音ボイスと言われる声も、低域は削り歪みで厚みを出していたりすることがあります。

例えば声が引っ込んでいると感じるときは1000hz以上をシェルフタイプでもち上げたり、足りないなと思う周波数帯をベルタイプで持ち上げたりもします。

目(アナライザー)と耳両方で判断します。
Fabfilter Pro-Q3、iZotope Neutron、Sonnox Claroなど、EQとアナライザーが合体したものを使用すると効率的です。

⑦マルチバンドコンプレッサー

NeutronのCompressorで特定の帯域のみ処理

例えば「全体的にはローを削れてるけど、ところどころ声が厚くなりすぎるところがある」際に、230hz以下だけにコンプレッサーをかけたり、ディエッサーで削れきれていない歯擦音があるときに8000hz以上だけにコンプレッサーをかけたりします。

⑧サチュレーション

ここまでの作業で音を整えたら、味付けとしてサチュレーション(もしくはエキサイター)をかけます。
強めにかけることもあれば、差がわからない程度に薄くかけるときがあります。
耳で確かめながら設定します。

⑩イメージャー

ボーカルトラックが2本以上ある場合に、かぶせ、コーラス、にかけます。
プラグインにもよりますが、15~30程度拡げます。

⑪ダブラー

Waves Doubler

「エイッ」「フッ」「ヨー」などのフェイクに対し、ダブラーでLRマックスに振って、センターはミュートしてかけることが多いです。

⑫空間系エフェクト

ボーカルをなじませるために、リバーブ、ディレイ、ピンポンディレイをセンドで使います。
エフェクターの後にローを削ったり、キックのチャンネルに対してサイドチェインをかけます。
ディレイを歪ませたりすることもあります。
ディレイ類は演出的に使わない限りは、ビート(オケ)と一緒に聴いたときに、聴こえない範囲で鳴らします。
ディレイもリバーブにセンドします。

⑬ノイズ処理

ビート(オケ)と混ぜ合わせたときに、「チッ」や「プツッ」などのノイズが聞こえる際は、
オーディオリージョンをマックスまで拡大して該当箇所をカットしたり、iZotope RXのMouth De-clickで処理します。
かけっぱなしにすると音が変わってしまうので、オートメーションを書いてノイズがのっているところだけにエフェクターを有効化します。

⑭ビート(オケ)とのバランスを聞きながら微調整

楽曲としてどう聞こえるかが最重要なので、全体のバランスを考えながらバランスを調整します。
基本はモニターヘッドフォンで作業しますが、Air Podsで聴いたり、スピーカーで聴いたり、大きめの音量で聴いたり、控えめの音量で聞いたりして、中間値を探していきます。

⑮どうにもならないときはNectarのVocal Assistant

あまり適切ではない環境で録音されたボーカルデータが届き、どこから手をつけたらいいかわからない場合は、iZotope NectarのVocal Assistantを通すことで解決の糸口が見つかる場合があります。

⑯さいごに

コンデンサーマイクや、マイクプリアンプ、オーディオインターフェース、そしてエンジニアリングなどが良い録音環境で録られたボーカルデータはミックス処理が少なく済みます。

また、優れたボーカリストの方のボーカルデータは、波形が美しく、ミックスのゴールが見えやすく、感嘆とすることがあります。

以上が、私がおこなっているボーカルミックスを簡単にまとめたものです。

KUVIZM
https://twitter.com/KUVIZM

【ミックスを承っています。】

費用:5000円~(税込)/1曲

※オートチューン可
※MIXする音声ファイルの本数やご希望の処理により金額は変わります。

ボーカルのMIXのほかにビートのMIXも承ります。
可能な範囲で告知協力もします。

面識のない方も気軽にご連絡をお願いします。

kuvizm.booking@gmail.com

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