なぜシセイクラブは石丸市長と対立してしまうのか

最近の安芸高田市の情報を集めていると、「シセイクラブは石丸市長を裏切った」「シセイクラブは清志会の一部に成り下がった」そんなコメントが目につきます。
実際、シセイクラブはここのところ石丸市長の進める政策、行動へ反発するように見える機会が多くなっています。
しかし当初、シセイクラブは石丸市長の味方として取り上げられていたことも多く、一部では「市長派」とも呼ばれていました。
そのシセイクラブが、なぜ最近は反市長とみなされるような行動を多くとるようになってしまっているのでしょうか。
ネット上にはあまりにも短絡的なコメントが多いため、自分なりにいろいろな情報を冷静に整理してまとめ、考えてみたいと思い、今回の記事を書くに至りました。


そもそもシセイクラブは市長の味方だったのか?

まずは前提条件を整理します。
これは多くの人が誤解していることですが、シセイクラブは最初から市長の味方でも何でもありません

立候補当時、居眠りだの恫喝だのでゴタゴタしていた議会と市長の関係に新しい風を吹かせたいと思っていたでしょうが、市長の味方になりたいとは思っていないでしょう。

例えば、南澤議員は選挙の際に以下のような言葉を述べています。(下記動画5:51~)

「(今回の選挙は)どう考えても現/元職の議員が大半残ります。そんな中に私ポーンと入ってその中でみなさんと衝突することなく、なんとかうまく進めていけるんじゃないかと私は自分に期待しています」

こんなこと言う人が市長派のわけないですね。明らかです。
そもそもほかの議員と衝突するつもりなんて初めからなかった、自分達が間に入って取り持ちたかった、とみるほうが自然だと思います。

要するに、シセイクラブは勝手に「市長派」として祭り上げられたあげく、一部議案について石丸市長に反対した結果、石丸ファンから手のひらを返して総叩きされているという状況でして、そういった意味では彼らは少し気の毒だなと思います。

シセイクラブの政治観に関しても、市長とは大きく異なると思います。
石丸市長はどちらかというと「生き残るために切り捨てる」「自分が正しいと思ったことをやる」戦略を推していますが、一方でシセイクラブは「とはいえ市民の要望は反映するべき」という考えが強く、一般市民からの要望に割と応えているように思います。
一般質問などでも、そのような周りからの意見を集約して質問していることも多いと思います。
特に私が印象に残っているのは、田邊議員が副市長定数削減議論の際に賛成理由として述べていた「実際にアンケートを取ってみたらそういう意見が多かった」というものです。
要するに、自分自身の考え方というよりも、周囲の市民(支援者?)の意見をそれなりに聞く人なんだろうなと思っています。

これはどちらが良いかどうかという話ではなく、議員としての考え方の違いなのでそんなに問題視する場面ではありません。
二元代表制という言葉の通り、シセイクラブと石丸市長が対立したとしても別になにも不思議なことではありません。

市長とシセイクラブの対立内容の整理

では具体的にシセイクラブのどのような発言が問題とされているのでしょうか?
シセイクラブが直近の議会で市長と大きく対立しているのは以下の3つです。
1.認定こども園の移転事業
2.控訴における専決処分
3.議会だより

1に関しては、この問題が持ち上がったのは2023年頭であり、そこからこれまで特に彼らの意見は変わっていません。
安芸高田市がバズったのは2023年の7月~9月あたりですから、いまさらになってシセイクラブが叩かれるのもよく分からないと思います。
内容としては「移転事業や移転先が結論ありきで決まっているのはおかしい」というものです。
細かい議論の内容の詳細は省きますが、最終的には2023年12月議会においてシセイクラブは石丸市長案(まず基本構想を策定する)に賛成しているのですから、むしろ市長側ということにはなります。

2に関しても彼らの意見は別に変わっていません。
無印良品の際の専決処分に関してもシセイクラブは議会に事前に諮らなかったことを理由として不認定としていますので、今回と全く同じ意見です。
従って、いまになって急に叩かれるのもよくわかりません。

そして3に関して。
これは唯一直近の内容ですし、シセイクラブが目立つ形で反対をしています。
清志会よりも目立って反対をしているので、全ての矛先がシセイクラブに向かった形です。
つまり、多くの人は議会だより問題にシセイクラブが反対したこと、そしてその反対内容に納得がいかないことで叩いているということです。

つまり、議会だより問題を除けば、「シセイクラブは変わってしまったのではなく、見る人の印象が変わっただけ」ということになります。
私個人としても、割と一貫して同じような主張をしているというイメージをシセイクラブには抱いています。(その主張が正しいかどうかはまた別の話です)
では気になるのが、なぜ議会だよりに関しては彼らはここまで矢面に立ってまで反発しているのでしょうか。
反対の根拠についてもかなり無理筋のものが多く、ちょっとおかしいなと思ってしまうわけです。(だからこそ石丸派は叩きまくっているわけですが)

なぜシセイクラブは議会だよりにこだわるのか

シセイクラブは今回の議会だより問題に異常にこだわっており、無理筋な討論・主張であっても議会だよりの存続自体は途切れさせないぞという意思が見えました。
ではなぜ彼らがこんなことをしているのかというと、それは彼らにとって議会だよりがそれだけ大事だということです。
この段ではその部分に踏み込んでいこうと思います。

この段以降は多分に私の主観的な穿った見方が含まれていることをご承知ください。

なぜ彼らが議会だよりを守りたいのか。
私が思うに「議会だより(広報委員会)が唯一多数決の及ばない場所だったから」ではないでしょうか。
現在、広報委員会は武岡議員の死去に伴い、委員の数が2:2という状況になっています。
内訳は、新田議員(委員長)、田邊議員(副委員長)、南澤議員、山本数博議員、宍戸議員の5名です。
委員長は多数決に関与しないので残り4名が2:2に分かれたということです。

この状態であるがゆえに、広報委員会では「多数決で押し切る」ことができなくなっています。
例えば今回の「議会だよりの要約が間違っていたか」の結論が広報委員会の時点ででなかった理由は、この2:2になっていたことが大きいでしょう。
また、1月29日付の議長の声明において「議事録には指摘部分の記載はありませんでした」という文言があるのですが、これはシセイクラブが粘ったことによってなんとか掲載された文章だとのことです。(シセイクラブyoutubeライブより)
youtubeライブでは「この文言を付け加えるために相当頑張った」「ほかの議員から褒められた」と話していたこともあり、通常であればまずできなかったことだと分かります。
私の感覚としても、議会が間違いを認めたという点で違和感がありましたので納得です。
ではなぜこのようなことができたかといえば、シセイクラブが粘りに粘ったことはもちろんですが、2:2になっているおかげで議論が多数決で終わらなかったからだろうと思います。
どれだけ議論が論理的で明らかだったとしても、多数決をとってそのまま終わりにされればそれでおしまいですからね。
多数決で終われないというこの状況は、少数派からすればとんでもないチャンスなわけです。

私が思うに、この2:2の状況においては、シセイクラブのやりたいこと(話し合いによる決定や提案の議論)がある程度できていたのではないか、と思います。
以前、田邊議員が議会便りの更なる活用について語っていたこともあったので、そこは間違いないと思います。
そして今回、この重要な手段である議会だよりの発行が止められてしまうのを危惧して無理やりにでも反発したと考えると比較的納得できます。

安芸高田市議会における多数決の闇

ご承知の通り、現在の安芸高田市は最大会派の清志会が過半数を占め、中立議員をも巻き込んで自分たちの好きなように、やりたい放題しています。
議事の運営やもろもろの議決、市長との対話への無視など、およそ議会といってよいのかというレベルで無茶なことが起こっています。
一方で、なぜこれが許されているのかというと、彼らが過半数を取り、ほとんどの議決を自分達の好きに動かせているからです。
議会におけるあらゆる決め事は多数決ですので、このように過半数を取ってしまえば思ったようにできてしまうのです。

シセイクラブもこの多数決に苦々しい思いをしており、様々な改革案は議論のテーブルにすら上がっていません。
市長との意見聴取の際に、委員会開催日程を決めるための意見すらできないということがうっすら透けてきたのも記憶に新しいところです。
このような状態ですから、少数派議員は相当苦しい思いをしてきたはずです。
石丸派として議会と正面切って対立した熊高議員は自身のyoutubeで「ひとりぼっちになってしまった」と苦しい胸の内を明かしていました。
議会運営委員会でも内容が共有されておらず、聞いていないことが勝手に決まっていたりというのもありましたね。

特に若手で地盤も小さいシセイクラブにとって、この3年間はとても難しかっただろうと思います。
だからこそ、せっかく手に入れた力(=議会だより)を失いたくないという気持ちが今回の議決にはあったのだと私は思います。
もしかしたら選挙へ向けての仕掛けをしようとしていたのかもしれません。

だからといって、今回の彼らの主張が正しいとは全く思いませんし、それはそれ、これはこれといった感じです。
批判されても仕方ないなと思いますし、彼らも覚悟の上だと思います。
ただ、個人的にはそこまで叩かなくても、と思っています。
どう考えても、議論も話し合いもせずに決めている議員のほうがダメだと私は思うからです。

シセイクラブとの向き合い方

シセイクラブはシセイクラブであり、石丸市長ではありません。
自分だけで好きに仕事ができる市長、議会以外にも仕事の場がある市長と違い、議会内での根回しをしない限りなにもできないのが議員なのではないでしょうか。
そのような彼らに、「常に石丸市長の味方をしろ」というのはなかなか酷な話です。
今回の件に関して言えば、シセイクラブがどのように動こうが、結局修正案は多数決で可決されており、そこまでシセイクラブに文句を言っても、ある意味仕方ないとも思います。

そしてこれは今後の記事で書こうと思いますが、重要なのは選挙です。
今後安芸高田市は秋の選挙に向けて大きく動き出していくでしょう。
その際にどのように議会が新しくなるのか、それとも元に戻るのか。
シセイクラブはかねてよりこの選挙に懸けることを言ってきました。
そのために現在の立ち回りがあるのは明らかです。
石丸派として意見を述べたほうが良いのか、反石丸の票を取り込めるように意見を述べたほうが良いのか。
どのような戦略でどのような議会を作ろうとしているのか、注目して見守っていきたいと思います。

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