マニ車戦争

「マニ車を回すことで徳が溜まるのであれば、徳を消費することでマニ車を回すことができるのではないか?」

ある学者の唱えた言説は数年後に証明され、実用化された徳力発電は既存のあらゆる発電方式を駆逐した。

中東の油田は単なる黒い沼と化し、東アジアは一転して産徳国となり繁栄を享受した。なにせ正式な作法に基づいて成った一般的即身仏ならば一体で原発数基分の電力を十数年にわたり得られるのだ。


学生たちの希望職種は6割が仏僧、尼となり、都心には寺が立ち並び、スカイツリーは百重塔に建て替えられ、テレビで芸能人の髪の毛を見ることもほとんどなくなったある日、突如人民解放軍がチベットへ電撃的侵攻、ラマをはじめとする高僧たちと多数の異物を略奪した。露を除く各国はこれを激しく非難し、やがて世界は徳で徳を洗う全面戦争に突入していった…

【続く】


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