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売れるのは漫画かイラストか

くわい屋です。
投稿前に結野ともえさんに軽く校閲してもらってます。

以前、Twitterにこのように投稿しました。
Xユーザーのくわい屋@さん: 「正直どっちも一長一短。 天井が伸びやすいのは漫画。 底堅いのはイラスト。 漫画はキツイ。 本が売れなかったら終わり。 本1冊が完全に徒労もしくは財布にダメージで終わる危険がある。 イラストは本で爆死してもタペストリーが売れれば問題ない。巻き返せる余地がある。…」 / X (twitter.com)

これについてもう少し書きたいと思います。
要するにイラストと漫画は一長一短だけど具体的なメリットとデメリットをもう少し書きます。

イラストのメリットとデメリット

メリット
・単発
・グッズ転用が容易

デメリット
・なかなか売り上げが伸びない場合がある
・純粋な画力勝負
・ライバルが多い

以前は、イラストソフトというと非常に高価なフォトショップ一択でした。それがクリスタなどの非常に安価で高性能なソフトの登場でデジタルカラーイラストを描くハードルが下がり、SNSの発達によってプロアマ問わず世界へ作品を発表できるようになりました。言語の壁が無い分、多くの人に知ってもらえますが、それだけライバルも多いです。
一枚絵5万円くらい取れる人でも、シンプルなイラスト本ではなかなか売れなかったりします。

しかし、イラストのメリットは様々なグッズ展開が容易な事にあります。
特にタペストリーは1本から製造可能で受注生産も普通です。本と違って在庫リスクが低く、利益を出しやすいです。
タペストリーの製造費用は1本1000円程度で、売値は2500円から3000円が相場でしょうか。
そんなに数多く売れるものではありませんが、売れると大きいです。10本が売れれば粗利2万です。

事業を成功させることに於いて「客単価を上げる」というのは非常に重要です。
売り物が1冊500円の本しかなければ、客の会計は1度に500円にしかなりません。
しかし、そこに3000円のタペストリーや10000円の抱き枕カバー、コミケなら数千円の新刊セットが加わればどうでしょうか。客一人の平均会計額が大幅に上昇します。

品数を増やす、という意味でもグッズは非常に重要です。
メロンブックスのように膨大な量の商品を取り扱う店に自分の本が1種類だけしかないのと、いくつものイラストがとりあえず並んでいるの(通販ページの事です)、どちらの方が売れる可能性が高いでしょうか。
品数がある程度あれば誰かの目に留まって誰かが買ってくれるかもしれません。
何万冊もある同人誌の中からピンポイントで特定商品を買うとか、なかなかの奇跡ではないでしょうか。

イラスト本の売り上げを増やす簡単な方法はまず「表紙を複数人にする」事です。「光の当たり方が違う」とか気にしてるのは描いてるあなただけです。購入者の殆どはイラストレーターではありませんから、そんなところ見てません。

別の記事でも少し書きましたが、本を敢えて少なく印刷しておいて早めに売り切り、「リメイク本」を出すという方法もあります。ただ、最初の本を購入した人が損をしないよう工夫しましょう。期間を空けるとか、差分を使うとか、新規絵を追加するとか。

印刷費用が上昇していますので、本は1冊20ページにしておいて、イラストが揃ったら割引を駆使して本を出していくのが利益を出すコツです。
まず同人商品は生活必需品ではありませんので「高い」と購入者が感じたら買いません。つまり、ページ数を増やして内容を充実させ、それに見合う価格で買ってもらおうというのはちょっと難しいです。
この「高い」というのは「×価値と価格が合ってない」「〇自分の予算オーバー」です。
つまり、1500円の厚くて高価な本を1冊買うより、500円の薄くて安価な本を3冊買う人の方が多いです。
作者のファンなら前者の本でも買うと思いますが、そうでない場合は買う側からしたら博打になってしまうのです。

何度か薄い本を出して本が売れるようになったら「総集編」としてページ数の多い厚い本を出してもいいと思います。
いまはオンデマンド印刷もオフセットとそんなに変わらないので、最初は無理せずオンデマンド印刷にしてとにかく赤字を防ぎましょう。

漫画のメリットとデメリット

メリット
・本が売れやすい
・世界で億万単位で売れる可能性があるのは漫画

デメリット
・売れなかったら悲惨
・グッズ転用不可

漫画は当たるとデカいです。
売上の天井が伸びやすいのも漫画ではないでしょうか。
でも、売れなかったら大変です。
本だけで採算をとらなければいけないハードルの高さをちょっと考えてみましょう。

例えば本1000冊を8万円で製造したとします。
本1冊500円なので、全部売れたら50万円です。製造費用を覗いて粗利42万円です。
これを多いと見るか少ないと見るかが問題です。
率直に言って粗利42万円は決して多くありません。だって、その本1冊を描き上げるのにどのくらいの時間と労力が掛かっていますか?
42万円は決して純利ではありません。日本の税負担率は50%に近いですので手元に残るのは単純計算21万円です。
もしイベントに参加するならその参加費と交通費・宿泊費で10万円が飛んだら利益は10万円まで減ります。

では、本1000冊を売るのは簡単かそうでないか。
これはたとえ漫画でも非常に難しいと断言できます。
商業作家の画力が必要です。

そして、売れなかった時の漫画は悲惨です。多少なりともグッズで巻き返す、という事が出来ません。
印刷部数を読み間違えて多量に余って赤字になってしまった場合は破棄するしかなく、製造費用が財布にダメージを与えるだけでなく、精神的なダメージもかなりのものです。

売れるようになったら十分に生活していけるかもしれませんが、それまでが大変、というイメージでしょうか。
イラストと違って漫画は話1本を仕上げないと売り物にならないので、それもハードルが高いのではと思います。
イラストなら没案も本の余白を埋めるのに使えたりしますが、漫画の没案を余白に描いてる人っていない気がします。

商業で漫画を描けばシリーズ累計何千万部とかの夢があるのは漫画ですね。
私は寡聞にして一人の作家が定期的に画集を出して何千万部とかの例を知りません。
ですので、漫画とイラストはどちらも一長一短といった感じでしょうか。
話が逸れるのであまり書きませんが、個人的には同人のピークは終わったと思います。
コミケの申し込みが緩和されたのがその理由です。
日本は今後、人口は減少の一途を辿ります。
今、晩年を迎えている人は逃げ切った、と言う感じでしょうか。
商業より同人の方が儲かる、というのもそろそろ終わりだと思います。
商業なら海外に自分の作品を売ってくれます。
海外で日本の漫画が売れる下地は既にできており、いくつもの漫画が大成功しています。
日本の同人でチマチマ売っていくのは今の時代が限界で、将来的にはこれで生活していくのは厳しくなっていく一方だと思います。

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