内館牧子作品を読んだ

今回は、ただの読書感想文です。


内館牧子先生の作品を初めて読んだ。
きっかけは連休中に時間があったこと。
普段ほとんど本は読まないんだけど、母が「とてもおもしろかった」と言っていたので、借りて読んだ。

それにしても「普段ほとんど本は読まない」って白状するときの後ろめたさというか、情けなさというか、恥ずかしさというか……どうにかならないものかね。
別に本を読む人がえらいわけでもないのにね。
きっと自分の中のコンプレックス的なものがそう思わせるんだろうな。

閑話休題。

「今度生まれたら」「すぐ死ぬんだから」「終わった人」の3作品を続けて読んだ。
発表された順とは逆の順番で読んでいたことには、後から気付いた。
結論から言うと、素晴らしかった。
えらそうに「素晴らしかった」なんて評価できるほどの知識も読書経験もないんだけど。

老人の描写とか、老後の過ごし方に対する考え方とか、3つの作品に共通する記述もあったし、やっぱりシリーズものなんだなって印象を受けた。
でも、それぞれにおもしろくて、どれも読みごたえがあって、読み終わってからスッキリした。

とはいえ一番のお気に入りはダントツで「終わった人」だ。
物語の展開が他の2作品に比べてダイナミックで、それでいて読者を置き去りにしないから、スルッと一気に読めてしまう。
最後が少しだけ「デキ過ぎている」気もするけど、読後感もさわやか。

こんな時代に性別でくくるのもどうかと思うけど、3作品の中で「終わった人」だけが男性が主人公なんだよね。
他の2作品は女性主人公の心理描写が(女性である)私には濃厚すぎて、ちょっとばかり胃もたれしちゃったんだけど、「終わった人」はそれがなかった。
一歩ひいて受け止められるというか、そういうところあるよねって客観的に読めた。

そして何より奥さん以外でよく登場する2人の女性が秀逸だった。
彼女たちの言葉や行動に対して「わかる〜!」「それは言わないお約束!」などと思いながら読んだ。
自分と近い感覚の持ち主に対して好感を抱いてしまうことは多いけれど、私も(彼女たちの生みの親である)内館牧子先生のことが大好きになった。

歯切れがよくてリズムのある文章が好きだ。
適度に散りばめられた毒が好きだ。
リアルでありつつもドラマティックな展開が好きだ。
押し付けがましくないところが好きだ。
読者に媚びていない印象を受けるところが好きだ。

そういえば「終わった人」が映画化されてことは知っていた。
内館牧子先生には「相撲の人」という印象しかなかったから、映画化のニュースで初めて先生の作品名を知った。
それは私が普段ほとんど本を読まない無知な人間だからで、先生が有名な作家さんらしいということは知っていたけれど。

映画は見ていない。
主演が舘ひろしさんだから見たいなって思ったけど、苦手な方がキャスティングされていたから絶対に見ないと決めた。
原作を読んで「やっぱり見なくてよかった」と思った。
あの方が演じているところを想像するだけで、作品を台無しにされたような気分になる……というのは個人の感想です。

読んで「なんだこれ」「読まなきゃよかった」などと怒りさえ覚える作品もあるし、読むのが苦痛な作品すらある中で、こんなにも穏やかな気持ちで読めたのは幸せなことだと思う。
こればっかりは相性だから保証はできないけど、「終わった人」とてもオススメです!!!