ソフトウェアの資産化について②
今回は、なぜ、そもそもソフトウェアを資産計上するの?みたいなあたりを考えてみようかと。
前回説明したように、資産化する、ということは一度にまとめて費用にするのではなく、何年かに分割して費用として計上する、というところです。
もうちょっと専門的に話すと、固定資産は、1年超などに渡って使用するものであり、その効用が複数年に及ぶので、使用度に比例して費用として計上するのが会計的な考え方、ということのようです。
例えば、自動車製造の工場を建設した時、おおよそ10年は使用する想定であれば、実際に使用開始してから10年間に渡って減価償却、すなわち費用計上していくことになります。工場建設時の支出を一度に費用にしてしまうと、建設時には費用がどんどん発生するのに、使用開始後はほとんど費用が発生せず、使用と費用の関係がズレてしまいます。
ソフトウェアについても同様に、3年使用する想定のものであれば3年間で減価償却することとなります。
ソフトウェアは工場などと違って、形に残らないので、資産計上するのはおかしいのではないか、という見解もあるかもしれません。
しかし、例えば、このように考えてはいかがでしょうか?
パソコンメーカーが、自社でパソコン製造装置を作りました。(パソコン製造装置なんてものはないよ、というツッコミはいったん脇に置くとしてヾ(・・ ))販売するのは「パソコン」であって、「パソコン製造装置」ではありません。しかし、パソコン製造装置を使用して、パソコンという商品を制作して販売するため、パソコン製造装置が企業の収益を生み出すものであることに変わりはありません。
こういった製造装置は、財務諸表上では、「機械及び装置」などという固定資産科目で資産計上されるでしょう。
これらは三菱電機と東芝の個別財務諸表です。「機械及び装置」として、約800億円の固定資産が計上されています。両社はその機械装置を使って、家電などの様々な製品を製造しています。
では、IT企業がECサイト・ECモール、フリマサイト、メディア、SNSなどを制作した場合、これは資産計上対象となるでしょうか?
それらのウェブサイト、アプリなどは直接収益を生み出すものではありません。しかし、それらのウェブサイトやアプリがあるからこそ集客ができて、多くの取引が発生したり、広告主が広告をだします。その取引手数料や広告掲載料から収益が発生します。
ざっくりと図解するとこんな感じですかね
プログラマーやデザイナーなどが制作したウェブやアプリを直接販売はしていませんが、それらを外部の企業・消費者に使用させることで、企業は収益を得ます。間接的に収益を産むものを作り出しているという点で、先ほどのパソコンメーカーで例示した「パソコン製造装置」と同じ位置づけになるかと思います。
ソフトウェアを資産化する、というのは直接そのソフトウェアを販売して収益をあげないとしても、間接的に収益を生み出すため、資産計上することは妥当ではないかと思います。
逆にソフトウェアを資産計上しない、としてしまうと、制作するものが機械装置の有形物かソフトウェアなどの無形物かで異なる取り扱いになってしまい、不公平になるのではないでしょうか?(使用期間の長短はあるでしょうが)
もちろん、そういった機械装置などの有形物も資産計上しないようにする、という方向性に統一することも一つの手段としてありかもしれませんが。
次回は、実際にIT企業がどのくらいソフトウェアを資産計上しているのか、などをみていきたいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?