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お化けは嘘だけれども、居るのです

でもねえ。そう、又市さんがね、その昔、こんなことを申しておりました。
この世はね、悲しいんだ、辛いんだとね。
だから人は、自分を騙し、世間を騙して、ようやっと生きているんだと。
つまりこの世は嘘っ八。その嘘を真と信じ込むなら、そりゃいずれ破綻する。
かといって、嘘を嘘だとしてしまえばね、悲しくって辛くって生きて行けない。
ええ。だからこそーー嘘をね、嘘と承知で信じ込むしか健やかに生きる術はないんだと、又市さんはそう言っていましたよ。煙に巻かれて霞に眩まされてね、それでもいいと夢を見るこれは夢だと知り乍ら、知ってい乍ら信じ込む、夢の中で生きるーー。
だから、お化けは嘘だけれども、居るのです。
はい。
ものごとは、かたることで物語になるので御座いますよ。

後巷説百物語/京極夏彦 著(角川文庫)714頁より

推しメンは主にメディアを通して私の前に現れます。
ホールやスタジアムやそういった会場のステージの上に現れます。
でも決して私の日常生活には現れません。

私が知っている推しメンの外側はほとんどが(装飾や演出が施されていて実態とは異なる)嘘で、私は嘘と承知で信じ、それでいいと夢を見るわけです。

なのに現実はこうだとか、お前は知らないだろうが本当はこうだとか、余計なことを言ってくる人がいる。
私は嘘を真(まこと)と思っているわけではないのです。

邪魔をしないでもらいたい。

「アイドルだって人間だし、一人の女の子だから恋だってするし、彼氏がいたって不思議じゃない」

そんなことはどうでもいいんです。

大事なのは私の前に「どういうふうに現れているのか」なのです。
そして「こういう存在ですよ」と示されれば、それに従うのです。
その在り様が気に入らなければ推すのをよすだけです。
些細なことで気に入らなくなったりもしますが。

とにかく放っておいてほしいです。
私が知りたいのは、推しメンが提示するすべての情報であって、隠していることは知りたくない。
知りたい、気になる、と言いながら、知りたくないんです。

嘘を嘘と承知で信じ込む
煙に巻かれて霞に眩まされて
それでもいいと夢を見る
これは夢だと知りながら
知っていながら信じ込む

それが私の推し方です。

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