「私、R&Bシンガーじゃないんで」 /Kehlani『everything』

告知が遅くなりましたが、現在発売中の『ミュージック・マガジン』5月号の<ニュー・スタンダード2020sーー第28回日本のR&B>特集にて、DJ HASEBE『adore』、椎名純平『椎名純平』、JUJU『My Life』、三浦大知『Who’s The Man』(リリース順。敬称略)のレビューを書いております(+新譜レビューはフランキー・J『Back2Us』)

4枚すべて大好きなアルバムですが、中でもDJ HASEBEさんの『adore』を聴くと、ジャパニーズR&Bムーヴメント真っ只中だったあの頃(90年代後半)を思い出します。
雨後の筍の如く<R&Bシンガー>が登場し、色んなメディアで今までになくらい<R&B>という言葉が使われるようになり。12インチもガンガン出てたし、当然クラブでもあらゆる曲がかかってたし。MISIA「つつみ込むように…」の12インチを求めてCISCOに徹夜で100人くらい並んだとか、まさに<狂騒>というか<熱波>というか、瞬間最大風速は凄まじいものがありました。

けどブームはいつしか終焉し。<ジャパニーズR&Bシーン>というものは残念ながら確立しなかったのかなぁと正直思います。もちろん今でもR&Bを愛し、R&Bを歌うシンガーはたくさんいますけどね。<シーン>となると、なかなか難しいのかな……。

当時、ミュージック・マガジンで日本のR&B特集をやるっていうので、4人ぐらいのシンガーにインタビューしたんですが、<ジャパニーズR&B特集>で取材してるのに「私、R&Bシンガーじゃないんで」と面と向かってハッキリ言われたりして(全員にじゃないですよ)、結局R&Bムーヴメントってなんなんだろうなーと思ったりしました。
まぁ、今思えば宇多田ヒカルもUAもbirdも、なんならSPEEDも<R&Bシンガー>に括られたりしていたし、それはそう書いたメディア側が間違ってるとは思いますが。

なーんてことを、『adore』を聴いて思い出したりしました。
ちなみに、件のミュージック・マガジンのジャパニーズR&B特集号、当時大学4年生だった私にとって初めての長文特集で、かつ卒論執筆時期と丸かぶりで、卒論そっちのけで徹夜で書いた思い出。そしたらFAX(!)で直しの原稿が永遠に送られてきて(マジで大袈裟ではなく、部屋がFAX用紙で埋め尽くされるかと思ったくらい)、気を失いそうになった記憶(笑)。けどあの特集のおかげで仕事依頼が増えたのでした。卒論は最早何を書いたか全く覚えてませんが、あの特集記事が私の卒論みたいなものですね。卒業じゃなく、ライターとしてのある意味始まりの原稿ですが。内定をもらっていた会社の集まり(新入社員の研修かなんか)が取材日にあって、取材にリクルートスーツでいったのも良き(否、全く良くない)思い出です(笑)。相手もこいつ大丈夫かと思っていたことでしょう…。

DJ HASEBE feat.Sugar Soul / いとしさの中で
『adore』といえば「今すぐ欲しい」かと思いますが、私はこの曲が一番好き。切ないねぇ〜。あの日あの時あのことを思い出して胸がキュンキュンしますYO!


<今日の1曲>
Kehlani / everything

カルフォルニア出身のシンガー・ソングライライター、ケラー二のニュー・アルバム『blue water road』がこれまた素晴らしい内容で、R&Bファンは狂喜乱舞といったところですが、中でもアコギ(?)のアルペジオとストリングスの美しい音色に惹き込まれるこのスロウ・チューンが突出した出来。無条件に浸ってしまいます…。美しい曲調とは裏腹にMVはちょっぴりハード(?)ですけどね。アルバムにはジャスティン・ビーバーにブラスト(Blxst)、シド(Syd)にサンダー・キャット(!)まで、色んな人が参加しております。アルバムのジャケも素敵ですね。

ニュー・アルバム『blue water road』のジャケ。
ジャケからして素敵な予感がプンプンしますね。

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