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きゃらを逝く

音楽を流しながら
お読み頂けたら幸いです

2024年2月11日きゃらを逝く

昭和の後期に1つの命が生まれる
悪の組織、その平社員だった父と
どことなくジャイアンの母に
似ている母との間で誕生した

名前は「きゃらを」

幼少期のころのきゃらをは
目に入れても痛くないほど可愛いと
いわれていた(2歳まで)

両親の愛情をうけて優しい人間に
育っていった

きゃらをが成長するにあたって
色々と出費もかかる

きゃらをの父、きゃらぞうは
一家の家計をささえるために
戦闘員から怪人へと出世をした

ただ、怪人になるということは
ヒーローたちに目の敵にされる危険
それゆえに給料はいいのだが

そんな杞憂は現実のもとになる
きゃらぞう逝く

怪人遺族年金は降りるから
かろうじで高校までは卒業できた
だが、父のいない寂しさよ

彼の人恋しさは
心に空いた隙間をうめるためだったのかも

だが、そんな代替を求められているだけの
気持はすぐに見透かされるのかもしれない
まぁ、それ以前の問題ではあるのだが

怪人遺族年金はびびたるもので
やはり働かないといけない
だが、幸いにも親父の伝手で
きゃらをは、悪の組織で働くことができた

同僚にもめぐまれて
一瞬彼は幸せだった

彼とは、共に万年、平の戦闘員であろうと
誓いあった

怪人になることは「死」を意味すると
わかっていたからかもしれない
俺達は所詮ヒーローの引き立て役にすぎない

そんな約束を交わしたのものの
親友はどこかふさぎ込んでいて
飲みにさそったら
お子さんの写真をみせてくれたけど・・・

托卵されていた。
とんでもないビッチな奥さんだった
「それお前の子じゃないだろう」
「いや、私の子で・・たまにある」
「いや、皮膚の色すら違うじゃない」
「うるせーな!!俺の子なんだよ!!」

彼は完全に心が壊れていた

暫く疎遠になったある日

彼を公園でみかけた

怪人になっていた。
「どうして・・・」
そう尋ねるのが精いっぱいだった
「子育てには金がかかるんだよ・・・」

確かに怪人になれば給料はいい
だが、それは命の危険が高い

そして、彼の訃報が入る
父親の時もそうだけど
遺影は怪人の前のものでいいのではないか
そんな疑問がよぎらなかったと言えば
嘘になる

彼の母親と妹が式を執り行っているけど
奥さんはいなかった

父親の死、親友の死
くやしくてくやしくて
ヒーローが許せなかった

そして俺も本部に掛け合い
怪人にしてもらうことにした

一矢報いたい

怪人にはなったが
よりによって、彼と同じちくわ怪人にされた
基本、同じ怪人にはならないはずなのに

何故?と本部にかけあったら
「ただの手違いだよ」
ただの手違いだった

返りの電車を降りたところでヒーローと
遭遇した

「あれ?この間倒したけどな」
そんな言葉が耳に残ったのもつかの間

心残りはたくさんあるが
1番に思うのは、遺影は
それじゃない方がよかったな

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