日蓮大聖人の言葉2『事理供養御書』じりくようごしょ いのちと申す物は一切の財の中に第一の財なり


人にも二つの財あり。一には衣、二には食なり。経に云 く「有情は食に依りて住す」と云云。文の心は、生ある者は衣と食とによつて世にすむと申す心なり。魚は水にすむ、水を 宝とす。木は地の上に生いて候、地を財とす。人は食によて生あり。食を財とす。
いのちと申す物は一切の財の中に第一の財なり。遍満三千界無有直身命ととかれて、三千大千世界にみてゝ候。財をいのちにはかへぬ事に候なり。さればいのちはともしび(燈)のごとし。食はあぶらのごとし。あぶらつくればともしびきへぬ。食なければいのちたへぬ。

建治2年(1276)執筆

『昭和定本日蓮聖人遺文』1261頁

(訳)

人間には、二つの財物が必要です。一つは衣類、二つには食物です。経文には「生きている者は食により住む」とあり(出典未詳)、この経文は、すべての生ある者は衣類と食物によって住むことができるという意味です。たとえば、魚は水中に住み、水を宝とします。木は地上に生え、土地を財とします。人間は食物によって生きているのであり、食物を第一の財とします。
 命は、すべての財宝の中でも第一に大切な財物です。三千世界(一人の仏の教化範囲)で、身命に値するものは無いと説かれ、三千大千世界のすべての財物も命に代えることはできないのです。したがって命は燈火のようなものであり、食物は油のようなものです。油が尽きると燈火が消えてしまうように、食物がなければ命は断たれてしまうのです。

(解説)

建治2年(1276)に、白米・芋・海苔などを供養してくださった檀越(信者)へ宛てた御礼のお手紙です。その冒頭には、米などを送ってくれたことへの感謝が述べられ、次いで紹介しました一節が記されているのです。
 その主旨は、生きている者にとって、衣・食は大切なものであるが、すべての物の中で第一に大切なものは「いのち」であります。「いのち」は第一の宝であるからこそ、無駄にすることなく、感謝をして日々の生活を営んでいかなくてはなりません。その「いのち」をつなぐためには、「食」がとても重要であります。私たち人間は、米・野菜・肉・魚と、他のたくさんの「いのち」をいただいて、自らの「いのち」をつなぎ、生き抜いているのです。
 

(思うところ)

食事前の大切な一言「いただきます」は、いのちをいただくと同時に、食材を育ててくれた方、料理を作ってくれた方への感謝です。家族そろって大きな声で「いただきます!」。

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