日蓮大聖人の言葉『崇峻天皇御書』すしゅんてんのうごしょ 15


孔子と申せし賢人は九思一言とて、こゝのたび(九度)おもひて一度申す。周公旦と申せし人は、沐する時は三度握り、食する時は三度はき給ひき。たしかにきこしめせ。我ばし恨みさせ給ふな。仏法と申すは是にて候ぞ。  

建治3年(1277)9月11日執筆
                                         『昭和定本日蓮聖人遺文』1397頁

(訳)
孔子という賢人は「九思一言」といい、九回もよく考えてから一回発言すべきと言います(『論語』)。周公旦という人は、髪を洗っている時でも、食事の時であっても、人が尋ねてくると三回も立って行って、人を待たせるようなことはしなかったと言うのです(『史記』魯周公世家第三)。仏法を信ずる者は、このことをよく肝に命じておく必要がありましょう。

(解説)

本書は、身延に住まわれていた日蓮聖人が、信者である四条金吾(四条頼基)に宛てたもので、「崇峻天皇」に関する内容があることから、後年にこの名称が付されました。この著作の最終部分には、冒頭に挙げた一節が見られます。孔子と周公旦の言葉を引用していますので、以下その原典を挙げておきましょう。

孔子「君子に九思有り。視には明を思ひ、聴には聡を思ひ、色は温を思ひ、貎は恭を思ひ、言は忠を思ひ、事は敬を思ひ、疑には問を思ひ、忿には難を思ひ、得るを見ては義を思ふ」(『新釈漢文大系』一、三六八頁)

★①物事を見るに見誤らないように、②物事を聞くに聴き分けるように、③顔色は穏やかであるように、④容姿や態度は上品であるように、⑤言葉は言行一致するように、⑥仕事は慎重で間違いのないように、⑦疑問があれば人に問うように、⑧腹立たしくも後のことをよく考えるように、⑨利得に直面すれば道義にかなうか否かを思いめぐらすのである。

周公旦「我は一沐に三たび髪を捉り、一飯に三たび哺を吐き、起ちて以て士を待つ」(『新釈漢文大系』八五、一一八頁)
★一回髪を洗う間に三度もやめて髪を握り、一回食事をする間にも三度も中止して口の中のものを吐き出し、席を起って立派な人(天下の賢人)と応待している。

日蓮聖人は、仏法を信ずる者は、これらを肝に銘じておかなければならないと指南されています。

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