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「令和」時代のいけばなって? いけばな作家・安達力インタビューvol.1

これも時代だろうか。私が「いけばなを習いたい」と思ったときにしたのは、まずインスタグラムをチェックすることだった。「いけばな」のハッシュタグを見ていく中で目に止まったのが、京都在住のいけばな作家、安達力(あだちつとむ)@hana_naraiのアカウント。バラやスイトピー、チューリップといった身近な花も取り入れた作品は、伝統的でありながら自由でモダン。私たちのライフスタイルの中にリアルに存在しそうな「いけばな」の形がそこにあった。

そのフラットな視点はどこから来るのだろう? 京都と東京で活動を続ける人気のいけばな作家に「今」のいけばなについて話を聞いた。

>1DKの部屋でも生けられる花

「いけばなって自宅でもできるんだな」っていうところはお見せしたいな、と思ってますね。いけばなのイメージってどうしても器があって、剣山を用意してきて…っていう格式ばったところがあると思うんですけども「いや、そんなことないよ。本来、日本にあるものなんだから、あるもので生けられるんですよ」と。

私が使っている器も、せいぜい20センチあるかないかの小さなもの。作品自体は高くても50センチあるかないかくらいの、比較的小さな作品なんですね。できるだけ心がけているのは「省略美」というか、いけばならしい「線」を見せること。柳だけをスッと立ち上げてみて、周りにバラがちょっとあるとか。

今は京都に移り住んだので、枝物とか花材にはとっても恵まれています。ただ東京となるとお花屋さんとかスーパーのお花コーナーとか、お花を買う場所もどうしても限られてしまう。そういった場所って残念ながら、なかなか枝物が手に入らないので。小原流に花だけで構成する「盛花」というスタイルがあるんですけど「都市部でどうやってお花を楽しむのか?」っていうのは一つの課題でもあったんです。

>花器は目をつぶって選んでいる

ちなみに花を買ってきて、器は目をつぶって選びます。まず自分の好きな花を買ってきて、器は手に取ったものに合わせて生ける。どんな形式の器でも生けられるための訓練です。小原流の試験でもそういうのがあるんですよ、当日行って「花材はこれ」「傾斜形で生けてください」というような。

お花屋さんに行って「そういえばあの器あったな、あれに合わせて買っていこう」ってやっても意外と合わなかったりするんですよ。「あれ?」と思って(笑)それだったらその季節の一番綺麗に咲いている花を買ってきて、器は偶然性に任せるという方が面白いかな、と。

>洋風なライフスタイルに合わせて

いけばなの歴史は、もともと四条の六角堂のお坊さんがお供花としてお花を生けてきたわけですけども、千利休さんが出てきてお茶席というものが設けられて「床の間」というお花を飾るための場所が作られたわけですよね。だんだんそれが江戸時代になってきて、いけばな自体が庶民の間にも広がり、その生活に合わせて進歩してきたところがあるんです。

今は小原流という流派でやっていますが、その流派は明治以降に生まれて、洋花、つまり花屋にあるような花を扱います。生活様式自体もどんどん洋風になり「床の間」自体がなくなってしまって、いけばな自体も時代に合わせてどんどん変化していった。伝統的なものを守らなければいけないというのもありますけれど、進化していくいけばなの形というのはアリなのかな、と。

>もう「いけばな=花嫁修行」じゃない

新宿のは、基本的には「小原流の型を勉強しましょう」というところに主眼を置いている教室です。(生徒さんは)器が好きな人が多いかな。あとITリテラシーめちゃくちゃ高い。私、インスタでしか基本は宣伝しないので。あと韓国からも来られてましたね。今、韓国がいけばなブームらしいんです。

体験教室で話すのは歴史なんですよ。いけばなの歴史なんて、絶対社会科では出てこないので。室町、安土桃山、江戸...といった政治的背景があって、それに影響されて展開していったんですよ、と言うとみんな「ああ!」と納得してもらえるんですね。あと民俗学的な視点というのも絶対必要。そこが抜けちゃうと「高尚なものでとっつきにくいな」と思われるので、そのギャップは埋めたいですね。
特にこの時代は、みんな花嫁修行として半強制的に来ているのではなく、自分の稼いだお金で「趣味としてやりたい」と来ているので。

〈インタビューVol.2に続く〉

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