「紙粘土」と「レゴ」で作り分けるダンス術 。 振付・演出家 菅沼伊万里インタビュー vol.2

女性アイドルグループ「ヤなことそっとミュート」のワンマンライブが、マイナビBLITZ赤坂で開催された。初披露された新曲では、メンバーたちがエモーショナルロックに合わせて次々とリフトや肩車を決めていく。そのアイドルらしくない前衛的な振付は、確かに衝撃的だ。

振付を手がけたのは、菅沼伊万里(Imari Suganuma)。「バンビ」の愛称で知られるThe Bambiest(ザ・バンビエスト)の主宰であり、これまで幅広いジャンルで舞台に関わってきた気鋭の振付・演出家だ。今回は第一弾に続き、彼女独自のクリエーションについて語ってもらった。

>アイドルの振付を手がけることになった経緯は?

「最初は、MVなどで以前からお世話になっているバンド、スパングル・コール・リリ・ライン(Spangle Call Lilli Line)の藤枝憲さんから『今度デビューするアイドルグループ『一瞬しかない』を育成してみませんか』とご紹介を受けて。(同バンドメンバーでフォトグラファーとしても活動する)笹原清明さんも関わっていたこともあり、何やらおしゃれな匂いがしたので。

レーベルの社長さんがもともと洋楽レーベルだった方だし、楽曲も80s清純派でとてもよかったので、お受けしたというのがきっかけですね」

>まずダンスの作り方について教えてください。

「コンテンポラリーダンスは先にコンセプトがあり、そこから方法論を作り、それに合わせて音楽を探します。その後、構成・構図を作って、振付に入る。だから振付を作るのは一番ラスト。ダンサーとコミュニケーションをとりながら作っていく部分もあるから、前もって作っても結局変わったりして、仕方がないところがあります。

でもミュージカルだったり、アイドルの振付だったりすると、日程が非常にタイトなこともあるし、まず音楽が決まっちゃってて。コンセプト自体はそれぞれにあったりするけど、振り一つ一つに対してはない。だから単純にそこを8カウントで割って作り込んで(演者に)移していく。

商業系(ダンス)はコンセプトを見せるのが目的ではなく、あくまで『演者』を見せることが目的なので、ビジュアルから入ります。なので振付は先に全部作り込んで、稽古場ではただ振り写しをしていくんです」

>それぞれ創作方法もずいぶん異なるんですね。

「ものすごく簡単にいうと、コンテンポラリーダンスは、紙粘土。白い四角い紙粘土の状態から形成していって『こうじゃないか?』『こうじゃないな』って徐々に削ったり、もしくは付け足したり、ゼロからやり直したり。何度も何度もディベロップ(=作り直し、再構築)させる。

それが商業ダンスになると、レゴブロックなんですよ。パーツがもうできてて、それをどう組み合わせるか。自分の(フレーズの)引き出しのパーツがいくつもあってそれを『ガチャガチャガチャ...違う、ガチャガチャガチャ...』みたいなそういう作り方。それを『そうじゃない』って上の人に言われたら、また組み直す。根本的に作り方が違うんですよね。

「基本コンテンポラリーダンスでは、特徴的な動きは他の作品に使わないようにするというか。コンセプトに沿って作っていれば、同じ動きは生まれないはずなんですよね、理論上は。まあ、細かい振りに関しては癖みたいなものがあるから、時折似たような動きが出ちゃいますけど。

でもエンタメは何度でも同じフレーズをこすってもいいから、もうどれだけのレゴブロック持ってるかっていうところで勝敗が決まるんですよ。だから最初の頃エンタメをやったときは、自分のフレーズの持ち合わせてない具合に泣きましたね。まあ、今もフレーズは全然ないんですけど(笑)やっぱりレゴより紙粘土が好きみたいです(笑)」

Sai/sai photograph

>ロンドンではグラフィックデザインを学んでいらっしゃったとか。

「ダンスは表現方法の一つでしかないから。セント・マーティン(Central Saint Martins、英国の芸術大学)のファウンデーション(Foundation Course、一般教養コース)は2週間ずつ、あらゆるアートジャンルを体験するじゃないですか。ファッションとかテキスタイルとか。やってみたら私はグラフィックのタイポグラフィーの授業が一番面白かった。四角の中にどう配分して『A』とか『B』を入れるか、っていう。

舞台も『全体をグラフィックデザインだと思ってデザインする』っていう考え方なんです。照明やダンサーの立ち位置も『上手(かみて)に、気持ちあと5センチ!』とか『V字から縦に入ってクロスして』とか言うし。SS(サイドスポット)も真横からバンって入れると、超コントラストが出せたりするので、それは全部『構図』だし『デザイン』なんですよね。

舞台では直線とカーブ(=身体のシェイプ)をデザインとして意識しているし、明暗のコントラストも白黒漫画のようにこだわりたくて。イッセイ ミヤケがグラフィックデザイン出身だったからこそ、あのプリーツスカートが生まれたのと一緒なんです」

>ご自身のカンパニー(=The Bambiest)は非常にファッション的ですね。

「ダンスの中枢にいる人たちは『身体』のことしか考えてないことが多くて。ファッションには疎いし、ライブやクラブも行かない。ただただ稽古場に週5通っているだけです。でもバンビはすごく稀有な差別化を図っているんです。『ファッション』っていう、日本のコンテポラリーダンサーが持っていないところに焦点を当てているので。日芸での卒業論文のテーマも『ファッションとコンテンポラリーダンスのコラボレーションについて』でした」

〈インタビューVol.3に続く〉

菅沼伊万里が振り付けを手がけるアイドルグループ「一瞬しかない」がワンマンライブを開催
7月15日(月・祝)11:00〜『第1弾シングルリリース記念日』ライブ@新宿SAMURAI

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切島カイリ

ライター、編集/フリーランス/東京在住/セントラル・セント・マーチンズ卒/ファッション業界をうろつく猫。twitter: @KirishimaKylie 安心は好きだけれど、退屈は嫌いなの。©Kylie Kirishima. All Rights Reserved.

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