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展示の意図に、まんまとはまる 美術館の楽しみ方②

「わかる/わからない」の視点で、アートに関わる話を、思いつくままつらつらと綴っています…。
 今回は、作品を通して作家の創作意図に思いをよせるだけではなく、展示の企画意図にどっぷりとはまると、美術館でさらに楽しい時間がすごせるよというお話です。

 美術館の展示には、大きく常設展企画展の二つがあります。常設展とは、その館が所蔵している作品を期間の設定なく展示するもの(勿論、作品保護の関係で入れ替えが行われるケースがほとんどです)。企画展は、自館の所蔵作品に限らず他館などの作品も借り受け、テーマや期間を定めて開催するものです。
 日本では一般的に企画展が「美術展覧会」として認識されていて、何万人もの来館者を集めて話題になるのは、規模の大きい企画展ということがほとんどです。この状況の良し悪しを語るのが目的ではないので、ここは軽く飛ばして…そう、企画展なので、企画の意図を探りながら展覧会を眺めてみるというのも、結構面白い美術館での時間の過ごし方という話です。

実際の展覧会を例にしてみましょう。

ピータードイグ展

 ピーター・ドイグという一人の作家を「日本初個展」として紹介する展覧会です。実は、これ、結構美術館としては集客の難しいテーマです。作家自体が、誰もが知るような巨匠(ミケランジェロとか、モネだとか、ピカソだとか…)の個展ならともかく、かなりのアート好きでないと知らない作家の個展を、しかも初めて大掛かりに開くとなると、どのように“魅せるか”の企画が、集客の上でもとても大事になります。
 例えば、パンフレットなどのメインビジュアルとしてどの作品を選ぶのか、そこに相当の意図(狙い)が詰め込まれるわけですね。鑑賞者としては、「あ、これ広告で観たやつだ」と確認するだけでなく、なぜこの作品がメインとして選ばれたのかを、ああでもないこうでもないと他の作品も見たうえで想像してみたり、「自分ならこちらでなくあちらかな」なんて企画者の目線で作品を選んでみたりすると、結構その気になれます。展示のどのタイミングでどのような形で見せるのか、入場前に予想するのもいいですね。初めにガツンと行くのか、最後にとっておきとして見せるのか…。

 台湾の故宮博物館に訪問した際に、水墨画の大作の横で、その作品のVR映像をつくって、作品の中を飛び回れるようにして見せていました。こちらの映像体験をして以降、水墨画の印象が劇的に変化しました。企画の意図は、「初心者の方にも水墨画の世界観を感じてもらおう…」ってことだと推察するのですが、まんまとはまりました。中には、「そう観て欲しいのね」と意図があからさま過ぎてちょっと引いてしまうこともありますが、それでも一旦はその意図に乗りまくるというのが、どうも良さそうです。展示の意図を読んで、そこに(勝手に)どっぷりはまる。美術館の楽しみ方のお勧めの一つです。

 ピーター・ドイグ展は会期が変更となり、東京国立近代美術館で10月11日まで開催されていますので、興味がわいた方はぜひ足を運んでみてください。





基本いつでも展示しているネズミが有名な魔法の国に行くといつも思うのですが、あの世界観に没入すればするほど楽しい時間が過ごせるなぁと。

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